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福井県の銀行図鑑——同じ県に、預貸率96.8%から14.5%まで

一つの県のなかに、預金のほとんどを貸す銀行から、ほとんど貸さない金融機関まで。福井県は、貸す姿勢のグラデーションがそっくり並ぶ稀有な県だ。種別と規模が、貸す動機をどう決めているのかを一望する。

ニホン銀行紀行 特集 ・ 福井県

福井県は、北陸のなかでは小さな県だ。だが、地域金融という視点で眺めると、これがなかなか面白い。県内の金融機関を預貸率の順に並べると、96.8%から14.5%まで、貸す姿勢のほぼフルレンジがそろってしまう。同じ県、似た経済圏のなかで、なぜここまで貸す姿勢が分かれるのか。一県の銀行を、図鑑のように並べて読んでみたい。

福井県内の主な金融機関(2025年3月期・預貸率順)
金融機関種別預貸率預金自己資本
福邦銀行第二地銀96.8%4,187億5.58%
福井銀行地方銀行70.4%29,012億8.10%
福井信用金庫信用金庫46.5%8,358億16.34%
小浜信用金庫信用金庫35.1%1,072億23.98%
敦賀信用金庫信用金庫30.7%1,547億13.03%
越前信用金庫信用金庫22.6%1,828億17.03%
福井県医師信用組合信用組合14.5%215億36.38%

種別の「階段」を下りていく

表を上から下へ眺めると、ゆるやかな階段が見えてくる。第二地方銀行(福邦)が96.8%、地方銀行(福井銀行)が70.4%、信用金庫が46.5%〜22.6%、そして信用組合(医師信組)が14.5%。銀行 → 信用金庫 → 信用組合と種別が下りるほど、預貸率も下りていく傾向が読み取れる。

これは偶然ではない。種別ごとに、制度が定める「貸せる相手の枠」が違うからだ。地方銀行や第二地方銀行には、貸す相手を地域内に絞る会員資格のような制約がない。だから広く貸しに行ける。一方、信用金庫は信用金庫法10条1項により、融資先が原則として地区内の中小事業者や住民である会員に限られる。信用組合はさらに枠が狭く、原則として組合員に対してのみ貸し、組合員以外への貸出(員外貸出)は厳しく制限されている。貸せる相手の枠が狭くなるほど、預金を貸出に変えられる範囲も狭まり、預貸率は下がりやすい。種別の階段は、制度の階段でもある。

だが、一直線ではない

もっとも、種別だけですべてが決まるわけではない。同じ信用金庫でも、福井信用金庫は46.5%、越前信用金庫は22.6%と、倍以上の開きがある。同じ制度の枠のなかにいても、本店を置く地域の経済規模や産業、これまでの経営方針によって、貸す姿勢は変わってくる。福井信用金庫は預金8,358億円と県内信金で最大規模で、より広い地域の資金需要に応えている。越前信用金庫は預金1,828億円とより小規模で、預貸率も低い。種別という大きな枠のなかに、規模や地域による個性の幅がある——表の中段は、それを示している。

地場産業が、信金の預貸率を支えている

信用金庫たちの預貸率を読むとき、福井の地場産業を見逃せない。福井県の丹南エリア(鯖江・越前市周辺)は、眼鏡・繊維をはじめとする地場産業が集積する、国内でも珍しいモノづくりの地帯だ。とりわけ鯖江市は、国産眼鏡フレームの9割超を生産する、世界的な眼鏡産地として知られる。

この眼鏡産業の特徴は、小さな事業者の分業で成り立っていることだ。眼鏡フレームは何百もの工程に分かれ、部品・中間加工・組立を、それぞれ小規模な業者が担う。鯖江にはそうした事業者が数百と集まる。このような小規模の製造業や地場事業者こそ、地区内の中小事業者に貸す信用金庫の、本来の貸し先だ。福井の信金が一定の預貸率を保てる背景には、こうした貸す相手となる地場産業の厚みがあると読める。ただし、こうした分業型の小規模事業者は、景気や為替の振れに経営が左右されやすい面もあると思われる。

両端の正体——96.8%と14.5%

この図鑑の両端は、とくに面白い。まず最上段の福邦銀行、預貸率96.8%。集めた預金のほぼ全額を貸しに回している計算で、これは攻めの数字に見える。ただ、ここには事情がある。福邦銀行は、福井銀行の連結子会社であり、両行は「Fプロジェクト」という一つの金融グループを構成している。県内に地方銀行(福井銀行)と第二地銀(福邦銀行)が並び立つのではなく、同じグループのなかで役割を分け合う関係にある。福邦銀行の96.8%という数字は、グループのなかでの位置づけとあわせて読むのが正確だ。

そして最下段の福井県医師信用組合、預貸率14.5%。これは「貸す気がない」のでも「借りやすい」のでもない。同信用組合は、福井県医師会の会員である医師や医療機関を対象とした、業域(職域)の信用組合だ。店舗は1つ、預金215億円。組合員は医師等に限られるため、そもそも一般の事業者や個人が借りられる先ではない。預貸率の低さは、対象がごく限られた職域に絞られていることの表れであって、「お金が余っていて借りやすい」を意味しない。自己資本比率36.38%という厚みも、限られた組合員のための堅実な運営を物語る。

この両端こそ、「預貸率が低い=借りやすい」「高い=貸してくれる」という単純な読み方が通用しないことの、格好の見本だ。数字の裏にある事情——グループ内の役割、職域の限定——を知って初めて、その数字の意味がわかる。預貸率という指標の読み方は、預貸率の読み方で整理している。

あなたなら、この地層のどこを訪ねるか

福井県という一つの器のなかに、貸す姿勢のグラデーションがこれだけきれいに並ぶのは、種別と規模、そして個々の事情が地層のように積み重なっているからだ。地方銀行は広く貸し、信用金庫は地区の中小事業者に貸し、信用組合はさらに狭い組合員に貸す。それぞれの層に、それぞれの役割がある。

もしあなたが福井で事業の資金を借りる相手を探すなら、この地層のどこを訪ねるだろうか。広く貸す銀行か、地区に根ざした信用金庫か。答えは借り手の立場や事業の性質によって変わる。優劣ではなく、役割の違いだ。同じように二つの金融機関を対比して読んだ特集として、愛媛銀行 × 高知信用金庫もあわせてどうぞ。福井県の各金融機関の詳細は、福井県の地域金融機関のページで見られる。

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
福邦銀行が福井銀行の連結子会社であること・グループ「Fプロジェクト」=福井銀行グループ公開情報(THE FUKUI BANK Report 2025.3 ほか)。
福井県医師信用組合が福井県医師会会員を対象とする業域信用組合であること=同組合公開情報。
鯖江の眼鏡・繊維など丹南エリアの地場産業に関する記述=福井県眼鏡工業組合・日本政策投資銀行・福井銀行共同レポート等の公開情報。
信用金庫・信用組合の会員資格および員外貸出の制限に関する記述=信用金庫法、中小企業等協同組合法・協同組合による金融事業に関する法律、および金融庁等の公開資料にもとづく一般的な制度の説明。

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