ウリ信用組合——朝銀系の信組が受けた、一部業務停止命令
預貸率85.8%、自己資本比率9.56%、不良債権比率8.58%。札幌市に本店を置くウリ信用組合。朝銀系の信用組合の歩みと、2026年の一部業務停止命令を、出典を示して事実として読みます。
- 2026.06.19【保証協会】26年度補正予算成立、セーフティネット保証5号の事前相談を開始。指定業種で、直近月の売上高が前年同月比で5%以上減少等の要件(経産省PDF)を満たす中小事業者が対象。
北海道札幌市に本店を置くウリ信用組合は、預金1,001億円、貸出金859億円、店舗5。札幌を中心に北海道を地盤とする信用組合で、在日朝鮮人系の信用組合である「朝銀(ちょうぎん)」系の系譜に連なります。「ウリ」は朝鮮語で「私たち」を意味します。
「朝銀」は、戦後、在日朝鮮人系の事業者の相互扶助のために各地で設立された信用組合の系譜です。なお、ここでいう朝銀(朝鮮総連系)は、在日韓国人系(民団系)の「商銀(しょうぎん)」とは別系統です。ウリ信用組合の起こりは、1965年に設立された朝銀北海道信用組合にさかのぼります。1999年に朝銀岩手・朝銀秋田・朝銀福島と合併して朝銀北東信用組合となり、経営破綻した朝銀青森・朝銀宮城の事業も引き継ぎ、2004年にウリ信用組合へ改称しました。
まず、数字を並べる
ウリ信用組合の預金は1,001億円、貸出金は859億円、預貸率85.8%。自己資本比率は9.56%、不良債権比率は8.58%。中小企業等向けの貸出先は561件です。
| 預金 | 1,001億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 859億円 |
| 預貸率 | 85.8% |
| 自己資本比率 | 9.56% |
| 不良債権比率 | 8.58% |
| 中小企業等向け貸出先 | 561件 |
| 店舗 | 5店 |
預貸率85.8%・不良債権8.58%。朝銀系の信用組合の数字を読む。
85.8%と8.58%を、数字として読む
預貸率85.8%は、本紀行で見てきた信用組合のなかでも高い部類で、集めた預金の八割超を貸出に回しています。組合員という明確な基盤のもと、その資金需要に貸してきたことの表れと読めます。一方、不良債権比率8.58%は高めの水準です。朝銀系の信用組合は、バブル経済期の不動産関連の融資が不良債権化し、2000年前後に各地で破綻・再編が相次いだ経緯があり、こうした歴史が貸出の質に影を残してきたと読めます。自己資本比率9.56%は信用組合として国内基準を上回る水準です。
2026年の一部業務停止命令——事実として記す
ウリ信用組合については、2026年6月12日、金融庁から一部業務停止命令が出されています。読み物としての価値を持つ事実として、出典を示して記しておきます。
金融庁の公表によれば、ウリ信用組合では、元常務理事が約20年以上前から架空名義・借名の口座を通じて顧客の預金等を累計約14億円着服し、私的流用などに充てていたとされます。さらに、当時の理事長がこの不正を公表しないことを決め、後任の経営陣もこれを引き継ぐなど、経営陣の主導による組織的な隠蔽や、検査の妨害があったとされています。これらを受け、金融庁は2026年7月14日から8月13日までの1か月間、新規顧客への融資および新規顧客からの預金等の受け入れを停止する一部業務停止命令を発出しました。同信用組合の理事長は同日付で引責辞任し、金融庁は刑事告発も検討しているとされています。
以上は、金融庁の行政処分の公表および各報道にもとづく事実の記載です。評価や論評は加えません。
なぜ、こうなったのか——制度と地域
信用組合が融資できる相手は原則として「組合員」に限られます。組合員になれるのは、中小企業等協同組合法などにより、その信用組合の地区内に住所や事業所がある中小事業者・勤労者などで、員外への貸出には制限があります。事業者には規模の制限もあり、大企業は組合員になれません。
この制度のもとでは、貸す相手はおのずと組合員に絞られます。ウリ信用組合にとって、その組合員基盤は、在日朝鮮人系のコミュニティを中心とする事業者や住民です。朝銀系の信用組合は、既存の金融制度のなかで融資を受けにくかった人々の相互金融として始まった経緯を持ち、その明確な組合員基盤が、高い預貸率の背景にあると読めます。
同じ道の、金融機関と並べてみる
同じ北海道を代表する地銀として、北海道銀行(預貸率75.1%)も本紀行に登場しています。道全体を相手にする道銀(預貸率75.1%)と、コミュニティの相互金融として高い預貸率を示すウリ信用組合(預貸率85.8%)とでは、組合員基盤の性格が異なります。道全体を支える地銀の姿は、北海道銀行の記事もあわせてどうぞ。
数字は、組合の成り立ちと歴史を映す
預貸率85.8%という高さと、不良債権比率8.58%という水準、そして2026年の一部業務停止命令は、朝銀系の信用組合の歩みと、いまのウリ信用組合の置かれた状況を、事実として映しています。預貸率の読み方は預貸率の読み方を、北海道の他の金融機関は北海道の地域金融機関のページもどうぞ。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
ウリ信用組合の沿革(1965年に朝銀北海道信用組合として設立、1999年に朝銀岩手・秋田・福島と合併して朝銀北東信用組合となり朝銀青森・宮城の事業を引き継ぎ、2004年にウリ信用組合へ改称、朝銀系の信用組合であること)に関する記述=ウリ信用組合公開情報・各種公開情報にもとづく。
2026年6月12日の一部業務停止命令(元常務理事による累計約14億円の着服、経営陣主導の組織的隠蔽・検査妨害、2026年7月14日〜8月13日の新規融資・新規預金受入の停止、理事長の引責辞任、刑事告発の検討)に関する記述=金融庁「ウリ信用組合に対する行政処分について」(2026年6月12日公表)および各報道(日本経済新聞・NHK等)にもとづく。
朝銀系・商銀系の系譜、バブル期の不良債権化と2000年前後の再編に関する記述=各種公開情報。
北海道銀行の数値=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
信用組合の組合員・員外貸出に関する記述=中小企業等協同組合法ほか関係法令にもとづく一般的な整理。
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