¥Today ニホン銀行紀行

スルガ銀行——個性で知られた地銀の、いまの数字をどう読むか

不良債権比率8.56%、預貸率69.2%。かつて個人向け融資の独自路線で知られ、不正融資問題を経た静岡・沼津のスルガ銀行。地銀としては高い不良債権比率の背景を、過去の経緯から中立に読む。

銀行・金融ニュース
ニホン銀行紀行 ・ 静岡県

静岡県沼津市に本店を置くスルガ銀行は、静岡県東部を地盤とする地方銀行だ。預金3兆1,540億円、店舗100。県の主要な地銀のひとつだが、その名前は、地元の枠を越えて広く知られている。かつては個人向け融資に独自の強みを持つ銀行として注目され、その後、ある問題を通じて全国的に知られることになった。

スルガ銀行は長く、住宅ローンや個人向けの融資に力を入れ、他の地銀とは一線を画す高い収益性で知られ、金融庁から「地銀の優等生」と評された時期もあった。だが2018年、投資用不動産をめぐる不正融資の問題が明らかになる。シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営していたスマートデイズ社の破綻を発端に、シェアハウスやアパート・マンションへの融資にあたり、書類の改ざん・偽造を伴う不適切な融資が組織的に多数行われていたことが判明した。同年9月7日には第三者委員会が組織的不正を認定し、10月5日には金融庁が業務の一部停止命令を含む行政処分を発出した。この経緯が、いまのスルガ銀行の数字を読む鍵になる。

この銀行の数字で目を引くのは、不良債権比率8.56%という、地方銀行としては際立って高い水準だ。地銀の不良債権比率はおおむね数パーセント以下にとどまることが多いなかで、この数字は突出している。なぜここまで高いのか。その背景は、過去の経緯と切り離して読むことはできない。

まず、数字を並べる

スルガ銀行の預金は3兆1,540億円、貸出金は2兆1,838億円、預貸率69.2%。自己資本比率は11.27%、不良債権比率は8.56%。中小企業等向けの貸出先は18万件を超える。

スルガ銀行(2025年3月期)
預金31,540億円
貸出金21,838億円
預貸率69.2%
自己資本比率11.27%
不良債権比率8.56%
中小企業等向け貸出先188,430件
店舗100店

地方銀行として際立って高い不良債権比率8.56%。その背景を、過去の経緯から読む。

金融庁が認定した不正の中身

不良債権比率8.56%は、地方銀行としては極めて高い。この数字を読むには、2018年に明らかになった不正融資問題の中身を、具体的に押さえておく必要がある。以下は、2018年10月5日付の金融庁の行政処分発表(業務の一部停止命令ならびに業務改善命令)と、同年9月7日付の第三者委員会調査報告書にもとづく、認定された事実の整理である。

金融庁は、シェアハウス向け融資およびその他の投資用不動産融資に関して、複数の不正行為を認定した。発表によれば、不動産関連業者(「チャネル」と呼ばれる)が、賃料や入居率を実勢より高く想定し、あるいは実績値より高い数値に改ざんして、収益還元法で物件を評価した。その結果、割り増された不動産価格にもとづいて、スルガ銀行から多額の融資が実行された。金融庁は、投資用不動産融資を扱う相当数の営業職員が、こうした不正を明確に認識し、もしくは少なくとも相当の疑いを持ちながら業務を行っていたとし、なかには営業職員がチャネルに改ざんを能動的に働きかけた事例や、自ら改ざんを行った事例も認められたと指摘している。

さらに、チャネルが融資審査を通すために、自己資金のない債務者の預金通帳残高の改ざん、債務者の口座への所要自己資金の振り込み(いわゆる「見せ金」)、年収基準を満たすための所得確認資料の改ざん、売買契約書の二重作成などを行っていたことも認定された。加えて、審査部が不芳情報のあったチャネルを取扱い停止にしたにもかかわらず、営業店が取引継続を企図し、当該チャネルに新たなチャネルの設立を持ちかけるなど、迂回取引によって不正を継続・助長させていたとされる。

金融庁はまた、シェアハウス向け融資を含む投資用不動産融資の実行に際し、カードローン・定期預金・保険商品などを抱き合わせて販売していたことを認定し、その一部には銀行法第13条の3第3号(抱き合わせ販売の禁止)に違反する行為があったとした。これらの取引は、顧客にとって経済合理性が認められない、顧客保護上不適切な業務運営とされた。

審査の形骸化と、創業家をめぐる問題

不正がこれほど広がった背景として、金融庁は信用リスク管理と牽制機能の欠如を認定している。発表によれば、経営陣や審査部は、特定のチャネルの財務状態やビジネスモデルの持続可能性に関するリスクを把握していたにもかかわらず、十分な検討を行わないまま融資を継続し、不良債権の増加を招いた。とりわけ、営業部門の本部長ミーティングで妥当とされたシェアハウス向け融資をほぼ全件(99%)承認するなど、審査が実質的に形骸化していたと指摘された。内部監査を担う監査部も、事務不備の点検に重きを置くにとどまり、不正の兆候を発見できていなかったとされる。

もう一つの柱が、創業家(岡野家)の関連企業群、いわゆる「ファミリー企業」への不適切な融資である。金融庁は、ファミリー企業に対する融資で、保有資産の実態把握や具体的な返済計画の検証が行われていなかったと認定した。発表によれば、あるファミリー企業から融資を回収するために、当初は寄付名目で拠出した資金を別のファミリー企業を通じて還流させ、返済を受けるといった取引も行われていた。報道によれば、ファミリー企業向けの融資は488億円、創業家個人に流れた資金は69億円に上るとされる。スルガ銀行は1895年の創業以来、100年以上にわたり岡野家出身者がトップを務めてきた。

金融庁は、反社会的勢力との取引の管理態勢やマネー・ローンダリング対策の不備、当局への実態と異なる報告も認定した。そして問題発生の根本要因として、創業家が実質的に銀行を支配するなか、創業家の後ろ盾を得た特定の執行役員が、厳しい業績プレッシャー・ノルマ・叱責で営業職員を圧迫し、法令等遵守を軽んじ不正を蔓延させる企業文化が醸成されたこと、そして取締役会が貸出ポートフォリオの構造すら把握せず監督機能を果たさなかったガバナンスの問題を挙げている。

処分とその後——8.56%の意味

金融庁は2018年10月5日、スルガ銀行に対し、2018年10月12日から2019年4月12日までの約半年間、新規の投資用不動産融資を停止する業務の一部停止命令を発出した(自らの居住部分が建物全体の50%を下回る新規住宅ローンも同様に停止)。あわせて、経営責任の明確化、法令等遵守態勢の確立、信用リスク管理態勢の再構築などを求める業務改善命令が出された。第三者委員会が組織的不正を認定した9月には、岡野光喜会長ら取締役5人が退任している。スルガ銀行は2018年9月中間決算で、従来予想の黒字から986億円の赤字へと転落した。

その後、スルガ銀行は2019年5月に投資用不動産融資の全件調査の結果を公表し、審査書類の改ざん・偽造などの不正が発見された事実を債務者に通知した。返済が困難な債務者に対しては、元本の一部カットやレートダウン(金利引き下げ)などの返済支援を行う方針を決定・公表している。シェアハウス向け融資の問題に続き、アパート・マンション向け融資(アパマン問題)についても、債務者との和解が進められてきた。報道によれば、2025年から2026年初めにかけて、投資用不動産向けの案件について、銀行が解決金を支払う形での和解が大筋でまとまりつつあるとされる。

こうした経緯を踏まえると、不良債権比率8.56%は、この一連の不正融資の後始末が、いまなお数字に色濃く表れているものと読める。返済が困難になった融資の多くが、回収の難しい債権として銀行のバランスシートに残った。地銀の不良債権比率がおおむね数パーセント以下にとどまるなかでの8.56%は、過去の融資の規模と、その後処理の重さを映している。一方、預貸率69.2%、自己資本比率11.27%という数字自体は、地銀として大きく外れた水準ではない。預金3兆円超という規模とあわせて見れば、いまの数字は「問題のさなか」のものではなく、長い後処理の途上にある銀行のものと見るのが妥当だろう。もちろん、不良債権比率には個別の事情や引当の方針も絡むため、すべてを過去の問題に帰すことはできないが、この数字を語るうえで、その経緯は避けて通れない。

独自路線という個性の、光と影

スルガ銀行が、もともと個人向け融資に独自の強みを持つ銀行だったことも、この経緯と無縁ではない。多くの地銀が法人融資を主軸とするなかで、個人や個人事業主への融資に踏み込み、高い金利と収益性を追求する路線は、長らくこの銀行の「個性」とされ、金融庁から「地銀の優等生」と評された時期もあった。その個性が高い収益を生んだ時期もあれば、行きすぎが組織的な不正を生んだ面もある。個人向け融資への傾斜と、それを支えるはずの審査・牽制機能の欠如が、同じ一つの銀行のなかに同居していた。一つの銀行の数字には、その経営が選んできた路線の、光と影の両方が刻まれている。

借り手にとっての意味

不良債権比率の高さは、過去の特定の問題に由来するものであり、いま新たに取引する個人や事業者の借りやすさを直接に示すものではない。銀行の健全性や方針は時とともに変わる。預貸率や不良債権比率といった数字をどう読むかは、預貸率の読み方であらためて整理している。具体的な取引にあたっては、最新の情報を自身で確認し、必要に応じて専門家に相談するのがよい。

数字は、選んだ路線の足跡を映す

地方銀行として突出した不良債権比率8.56%は、独自の個人向け融資路線を歩み、不正融資問題を経て、いまその後処理の途上にあるという、この銀行の歩みそのものを映している。数字は、その金融機関がどんな路線を選び、何を経てきたかを語る。スルガ銀行の数字は、一つの地銀がたどった道のりの記録だ。

同じ静岡県には、長く全国屈指の優良地銀と評されてきた静岡銀行(預貸率89.6%・不良債権0.85%)がある。よく貸しながら焦げ付きを極めて低く抑える静岡銀行と、独自路線を歩み不正融資問題を経て不良債権8.56%を抱えるスルガ銀行とを並べると、同じ静岡県を地盤とする地銀でも、貸し方と与信管理の違いがこれほど数字に出る。堅実を貫いた地銀の姿は、静岡銀行の記事もあわせてどうぞ。

各地の金融機関には、それぞれの土地や歩みの事情が刻まれた、それぞれの姿がある。静岡県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、静岡県の地域金融機関のページもどうぞ。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、相対的に融資先を求めている可能性をうかがう一つの目安になる。ただし、有価証券運用を主体とする金融機関は、預貸率が低くても融資に積極的とは限らない。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。静岡銀行の数値も同出典。
不正行為の認定内容(チャネルによる賃料・入居率の改ざんと収益還元法による物件価格の割増、営業職員による認識・改ざんへの関与、預金通帳残高の改ざん・見せ金・所得確認資料の改ざん・売買契約書の二重作成、迂回取引による不正の継続、抱き合わせ販売と銀行法第13条の3第3号違反、シェアハウス向け融資のほぼ全件承認による審査の形骸化、ファミリー企業への不適切な融資と寄付名目の資金還流、反社会的勢力・マネー・ローンダリング対策の不備、当局への実態と異なる報告、問題発生の要因等)、業務の一部停止命令の内容と期間(2018年10月12日〜2019年4月12日)・業務改善命令、命令の根拠条文(銀行法第26条第1項)=金融庁「スルガ銀行株式会社に対する行政処分について」(平成30年10月5日)。
組織的不正の認定・第三者委員会調査報告書の公表(平成30年9月7日)=スルガ銀行第三者委員会調査報告書および金融庁発表にもとづく。
シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営したスマートデイズ社の破綻、ファミリー企業向け融資488億円・創業家個人に流れた69億円、岡野光喜会長ら取締役5人の退任、2018年9月中間決算の986億円の赤字転落、同行が1895年創業で岡野家出身者が長くトップを務めてきたこと=各種報道(日本経済新聞等)にもとづく。
全件調査の結果公表(2019年5月)と審査書類の改ざん・偽造の発見、元本一部カット・レートダウン等の返済支援、アパマン問題を含む和解の進捗=スルガ銀行の開示資料および各種報道にもとづく。
本記事は公開された一次資料および報道にもとづく事実の整理であり、特定の個人・団体について評価を下すものではありません。係属中の手続きやその後の事実関係の変動を確定的に示すものではありません。個別の数値の評価・解釈は本記事の見解であり、特定の判断を保証するものではありません。

本サイトは、資金繰り支援サービス「¥Today」が運営しています。

← ニホン銀行紀行へ | ¥Today トップへ