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青森みちのく銀行——ライバル二行を一つにした「特例法」第一号の地銀

預貸率70.5%、自己資本比率8.68%、不良債権比率1.78%。2025年、長年競い合った青森銀行とみちのく銀行が合併して誕生した青森県唯一の地銀。独占禁止法の特例法が適用された全国初の事例という背景を読む。

ニホン銀行紀行 ・ 青森県

青森県は、本州の最北に位置する県だ。津軽のリンゴ、八戸の水産、十和田・奥入瀬の観光、そして津軽海峡を越えて北海道とつながる交通の要衝。県内は、津軽と南部という二つの異なる文化圏に分かれている。その青森県の金融を、いま一つの銀行が束ねている。青森みちのく銀行——2025年に生まれたばかりの、新しい名前の地銀である。

この銀行の名は、二つの銀行の名を足したものだ。青森銀行とみちのく銀行。青森県内でシェア1位と2位を占め、長年激しく競い合ってきた二行が、一つになった。しかもその合併は、日本の金融史において特別な意味を持っている。その背景と数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。青森みちのく銀行の預金は5兆382億円、貸出金は3兆5,497億円。預貸率は70.5%で、預金の7割を貸出に回している。自己資本比率は8.68%、不良債権比率は1.78%。店舗数は178と多く、中小企業等への貸出先は約20万件にのぼる。青森県内のシェアは約8割に達し、県の金融を文字どおり一手に担う存在だ。東北では、宮城の七十七銀行に次ぐ規模を持つ。

「特例法」第一号という合併

青森みちのく銀行の母体となった二行は、いずれも古い歴史を持つ。青森銀行は1943年、第五十九銀行など県内の五行が合併して生まれた、青森県のトップバンクだった。一方のみちのく銀行は1976年、青和銀行と弘前相互銀行が合併して発足した。これは全国で初めて、地方銀行と相互銀行(のちの第二地銀)が合併して誕生した銀行であり、また初めてひらがなを行名に用いた銀行でもあった。この二行が、青森県内でシェアを分け合い、長くしのぎを削ってきた。

人口減少と低金利が地方銀行の経営を圧迫するなか、二行は競い合うより手を組むことを選んだ。だが、ここで一つの壁が立ちはだかった。同じ県内のシェア上位二行が合併すると、独占禁止法に抵触するおそれがあるのだ。寡占を生むからである。この問題を解くため、2020年に特別な法律が施行された。地方の人口減少という事情のもとでは、銀行やバス会社の統合による寡占を例外的に認める——いわゆる「地域特例法」である。青森銀行とみちのく銀行の統合は、この特例法が適用された全国初の事例となった。2022年に持株会社プロクレアホールディングスを設立し、2025年1月1日、両行は合併して青森みちのく銀行となった。地方銀行再編の歴史に刻まれる、象徴的な合併だった。

二つの文化圏に、広く貸す

青森みちのく銀行の預貸率70.5%は、地方銀行として標準的な水準だ。この数字の背景には、青森県という土地の事情がある。青森は、津軽と南部という二つの文化圏に分かれ、人口は減少傾向にある。県全体の資金需要が大きく伸びる土地ではない。

だが、合併によって店舗数は178と多く、中小企業との取引先は約20万件にのぼる。津軽から南部まで、県内のすみずみに貸し先を持つ——県内シェア8割という圧倒的な地盤が、この銀行の貸出を支えている。リンゴ農家、水産加工業者、観光関連の事業者。青森の経済を構成する一つひとつの担い手に、この銀行は資金を供給している。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

青森の経済とともに

青森みちのく銀行の数字は、津軽と南部という二つの顔を持つ青森県を、一つの銀行で支える姿を映している。長年のライバルが、特例法という新しい仕組みのもとで一つになり、県内シェア8割を握る唯一の地銀となった。人口減と向き合う地方で、地域金融をどう守るか——その一つの答えが、この合併に込められている。

銀行の数字は、その土地の経済と再編の動きを映す鏡だ。青森みちのく銀行を見れば、本州最北の県の姿と、地方銀行が生き残りをかけて進める再編の最前線が浮かぶ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。青森県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、青森県の地域金融機関のページへ。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、相対的に融資先を求めている可能性をうかがう一つの目安になる。ただし、有価証券運用を主体とする金融機関は、預貸率が低くても融資に積極的とは限らない。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
沿革(青森銀行・みちのく銀行・2022年プロクレアHD設立・2025年1月合併・独占禁止法特例法第一号・県内シェア約8割)=青森みちのく銀行・プロクレアホールディングス公開情報、各種報道、各種公開情報。
青森県の産業(リンゴ・水産・観光)に関する記述=各種公開情報。

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