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銚子信用金庫——水揚げ日本有数の漁港で、信金はなぜ貸さずに守るのか

預貸率32.3%、預金5,175億円、店舗28。銚子市に本店を置く銚子信用金庫。水揚げ量日本有数の漁港と醤油醸造の町に根ざし、預金の3割ほどしか貸さない信用金庫。その数字と歴史を読む。

ニホン銀行紀行 ・ 千葉県

千葉県の最東端、太平洋に突き出した銚子市に本店を置く銚子信用金庫は、地元で「ちょうしん」と呼ばれる信用金庫だ。預金5,175億円、店舗28。銚子市を中心に、千葉県北東部の旭・匝瑳・東総一帯を地盤としている。預金5,000億円超は、地域の信金としては相応の規模だ。

本拠の銚子は、二つの産業で知られる町だ。一つは漁業。銚子漁港は、長年にわたり全国でも有数の水揚げ量を誇り、イワシ・サバ・サンマなどが大量に水揚げされる。もう一つは醤油醸造。利根川の水運と温暖な気候を生かし、銚子は古くから全国有数の醤油の産地として栄えてきた。漁港と醤油——この二つが、銚子の経済を長く支えてきた。周辺には、温暖な気候を生かしたキャベツなどの露地野菜の産地も広がる。

この信金の数字で目を引くのは、預貸率32.3%という低さだ。預金5,175億円に対し、貸出はわずか1,673億円。預金の3分の1ほどしか貸していない。水揚げ日本有数の漁港を抱えながら、なぜこれほど貸さないのか。同じ千葉県北東部の信金とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。銚子信用金庫の預金は5,175億円、貸出金は1,673億円。預貸率は32.3%で、預金の3分の1ほどしか貸出に回していない。自己資本比率は12.57%、不良債権比率は5.89%とやや高めだ。店舗数は28、中小企業等への貸出残高は1,289億円。

目を引くのは、預貸率32.3%という低さだ。同じ千葉県北東部の水郷の商都・佐原を地盤とする佐原信用金庫(預貸率43.0%)と比べても、銚子信用金庫の預貸率はさらに低い。預金は佐原信用金庫(2,360億円)の倍以上あるのに、貸出は伸びていない。不良債権比率5.89%という高さは、地盤の産業の変動や、地域経済の厳しさを映しているとも読める。多くの預金が集まる一方で、貸出先が限られている——その構図が、低い預貸率に表れていると読める。

千葉県北東部の二つの信用金庫(令和7年3月末)
 銚子信用金庫佐原信用金庫
本店銚子市香取市(佐原)
預金5,175億円2,360億円
預貸率32.3%43.0%
自己資本比率12.57%12.08%
不良債権比率5.89%3.09%

同じ千葉県北東部に立つ二つの信金。銚子信用金庫は預金規模では倍以上だが、預貸率は佐原信用金庫より低く、焦げ付きはやや高い。漁港の町に多くの預金が集まりながら、貸出先が限られている構図がうかがえる。

漁港と醤油の町で——銚子信用金庫の歩み

銚子信用金庫は、漁業と醤油醸造で栄えた銚子の事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。漁港に集まる漁業者、水産加工業者、醤油や食品の関連事業者、そして地域の商店や個人——こうした人々が預金を預け、必要なときに資金を借りる。漁業や水産加工は現金商売の側面もあり、預金は集まりやすい。銚子信用金庫は、そうした地域の資金を預かりながら、千葉県北東部の経済とともに歩んできた。

ただ、銚子を含む千葉県北東部は、人口減少と高齢化が進む地域でもある。水揚げ量こそ全国有数を保つが、漁業を取り巻く環境は厳しく、水産加工業も後継者不足などの課題を抱える。大きな設備投資を必要とする新しい産業が次々と生まれるわけではない。預金は集まるが、それを貸す先が地域に多くない——この構図が、銚子信用金庫の経営の背景にあると読める。

32.3%を、漁港の町から読む

銚子信用金庫の預貸率32.3%という低さは、預金は豊富に集まるが、地域に貸出先が限られていることの表れだと読める。漁業や水産加工、醤油といった地場産業は、すでに成熟しており、大きな新規投資の需要が生まれにくい。人口減少で、住宅ローンや個人向けの貸出も伸びにくい。その結果、集めた預金の多くは貸出に回りきらず、有価証券の運用などに向かい、預貸率は3割台にとどまる。

不良債権比率5.89%というやや高めの数字は、地場産業の変動や、地域経済の厳しさを映していると読める。貸した相手の経営が苦しくなれば、焦げ付きは増える。だからこそ、無理に貸し込まず、慎重に貸す姿勢にもつながる。水揚げ日本有数という華やかな看板の裏で、貸す先の限られた地域経済の現実を、銚子信用金庫の数字は静かに映している。預金を集める力はあっても、それを地域の成長に変える機会が乏しい——地方の信用金庫が共通して抱える課題が、ここにも見える。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

銚子の経済とともに

銚子信用金庫の数字は、漁業と醤油で栄えた銚子という土地と、預金は集まるが貸出先の限られた地域で慎重に貸す信金の歩みの、両方を映している。水揚げ日本有数の漁港を抱えながら、成熟した地場産業と人口減少のなかで、預金の3割ほどしか貸さずにきた。豊富な預金と限られた貸出先という地方の現実が、32.3%という低い預貸率に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。銚子信用金庫を見れば、漁港と醤油の町・銚子の経済と、そこで慎重に貸す信金の姿が浮かぶ。同じ千葉県北東部の、水郷の商都の信金は、佐原信用金庫の記事もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。千葉県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、千葉県の地域金融機関のページへ。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、相対的に融資先を求めている可能性をうかがう一つの目安になる。ただし、地域に貸出先が限られている土地では、預金が集まっても預貸率が低くとどまることがある。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。佐原信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(銚子市に本店を置き、千葉県北東部を地盤とする信用金庫であること、銚子漁港が全国有数の水揚げ量を誇ること、銚子が醤油醸造の産地として栄えてきたこと、周辺で露地野菜が産すること、人口減少・高齢化が進むこと)に関する記述=銚子信用金庫および各種公開情報にもとづく。
銚子の地理・産業(千葉県最東端、銚子漁港、醤油醸造、利根川水運)に関する記述=各種公開情報。

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