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八幡信用金庫——水とおどりの城下町で、信金は何を守っているのか

自己資本比率25.24%、預貸率25.0%。郡上おどりと名水の城下町・郡上八幡に根ざす八幡信用金庫。極端に厚い自己資本と低い預貸率を、山間の観光地と過疎という土地から読む。

ニホン銀行紀行 ・ 岐阜県

岐阜県郡上市に本店を置く八幡信用金庫は、県のほぼ中央、山あいの城下町・郡上八幡に根ざす信用金庫だ。預金1,280億円、店舗9。長良川の上流、清らかな水の流れる町に立っている。

郡上八幡は、水とおどりの町である。夏の夜を朝まで踊り明かす「郡上おどり」は400年以上の歴史を持つ日本三大盆踊りのひとつで、全国名水百選に選ばれた宗祇水をはじめ、町のあちこちを用水が流れる。重要伝統的建造物保存地区の古い町並みとあわせて、山間の観光地として親しまれてきた。食品サンプルの生産でも知られ、その全国シェアは群を抜く。一方、山間部ゆえに平地は乏しく、人口減少も進む。この「山あいの観光地で、過疎が進む」という土地柄が、八幡信用金庫の数字を読む鍵になる。

この信用金庫の数字で目を引くのは、自己資本比率25.24%という極端な厚みと、預貸率25.0%という低さだ。集めた預金の4分の1しか貸出に回していない。なぜ、これほど貸さず、これほど資本を厚く積むのか。その答えは、山あいの町という土地にある。

まず、数字を並べる

八幡信用金庫の預金は1,280億円、貸出金は320億円、預貸率25.0%。自己資本比率は25.24%と極めて厚い。不良債権比率は2.29%と低め。

八幡信用金庫(2025年3月期)
預金1,280億円
貸出金320億円
預貸率25.0%
自己資本比率25.24%
不良債権比率2.29%
中小企業等向け貸出先2,929件
店舗9店

預金の4分の1しか貸さず、自己資本は4分の1超。守りの設計を、山あいの町から読む。

25.0%と25.24%を、山あいの町から読む

預貸率25.0%という低さと、自己資本比率25.24%という厚み。この二つは、合わせて読むと一つの経営の姿を描く。集めた預金をほとんど貸出に回さず、手厚い資本として積み上げている。本紀行でこれまで見てきた、過疎と一次産業の土地で守りを固める信金と、同じ系譜の「守りの設計」だ。この選択の背景には、郡上という山あいの土地が抱える事情がある。

八幡信用金庫が貸す相手は、地元の中小事業者だ。そのなかには、観光に支えられた宿泊・飲食・小売の事業者、食品サンプルなどの地場の事業者、そして山間部で商いを続ける商店が含まれると考えられる。観光関連の事業は、景気や天候、そして感染症の流行に左右されやすい。山間部で平地が乏しく、人口減少も進むこの土地では、大きな設備投資や旺盛な資金需要が継続的に生まれるわけではない。借り手が構造的に限られる土地では、集めた預金を貸出に変えられる範囲がおのずと狭まる。預貸率25.0%という低さは、貸す気がないからではなく、山あいの過疎という土地の条件が映ったものと読める。あふれた預金は、有価証券などの運用に向かう。

そして、不良債権比率が2.29%と低く保たれているのは、慎重に貸してきたことの表れだろう。限られた借り手に堅実に貸し、あふれた預金は運用に回し、いざというときに備えて自己資本比率25.24%という際立つ厚みを積む——観光と過疎という、振れの大きい土地で長く生き残るための、守りの経営と読める。もちろん、これらの比率には個別の事情も絡むため断定はできないが、山あいの観光地という土地を抜きに、この数字は読めない。

なぜ、こうなったのか——制度と地域

八幡信用金庫が地元に貸す信金であることの背景には、信用金庫という制度がある。信用金庫が融資できる相手は原則として「会員」に限られ、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人、と定められている。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれない。

この制度のもとでは、貸す相手はおのずと地元の中小事業者や住民に絞られる。八幡信用金庫にとって、その「地元」とは、観光と地場産業に支えられ、人口減少が進む郡上の山あいの地域経済そのものだ。振れの大きい土地に根ざす信金が、厚い資本で守りを固めるのは、理にかなった選択といえる。

借り手にとっての意味

厚い自己資本を持つ信用金庫は、経営の安定という点では安心感がある。一方、預貸率が低めであることは、貸出に慎重な面があるとも読める。ただし、これは「借りにくい」と単純に結びつくものではなく、観光と過疎の地域では、いざというときにも揺らがない金融機関であることの裏返しでもある。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理している。

数字は、土地の条件を映す

自己資本比率25.24%という際立つ厚みと、預貸率25.0%という低さは、郡上おどりと名水の城下町で、観光と過疎という条件を抱えながら、堅実に地元に貸し、守りを固めてきた信金の姿を映している。同じ「守りの信金」でも、最北の地、一次産業の海辺、そして山あいの観光地——それぞれの土地が、それぞれの守りの形を決めている。数字は、その金融機関が立つ土地が何を抱えているかを語る。

本紀行には、同じ岐阜県の高山信用金庫も登場している。高山信金は、古い町並みと木工・家具で知られる飛騨高山に根ざす信金だ。郡上八幡の山あいに根ざすこの八幡信用金庫(預貸率25.0%)と、同じ飛騨の観光と木工のまちに根ざす高山信用金庫(預貸率54.4%)とを並べると、同じ岐阜の山間部でも、それぞれの土地の観光と産業を背負って信金が地域を支えていることが見えてくる。飛騨高山の信金の姿は、高山信用金庫の記事もあわせてどうぞ。

各地の金融機関には、それぞれの土地の事情が刻まれた、それぞれの生き方がある。同じく山あいの土地で守りを固める紀北信用金庫とあわせて読むと、土地ごとの守りの違いが見えてくる。岐阜県の他の金融機関は、岐阜県の地域金融機関のページからどうぞ。

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
郡上八幡の郡上おどり・名水(宗祇水)・重要伝統的建造物保存地区・食品サンプルの地場産業・山間部の人口減少に関する記述=郡上市・各種公開情報。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=金融庁 金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」資料『協同組織金融機関の「地区」のあり方』(2008年6月20日・神吉正三)。

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