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大地みらい信用金庫——道東の果ての信金は、なぜ自己資本を厚く積むのか

預貸率30.2%、自己資本比率22.41%、店舗24。根室市に本店を置く大地みらい信用金庫。水産と酪農の道東に根ざし、厚い自己資本と低い預貸率で守ることを選んだ信用金庫。その数字と歴史を読む。

ニホン銀行紀行 ・ 北海道

北海道の東の果て、根室市に本店を置く大地みらい信用金庫は、地元で「だいち」と呼ばれる信用金庫だ。預金4,239億円、店舗24。根室から釧路、十勝の東部まで、道東の広い地域を地盤としている。本州とは比べものにならない広さの土地に、店舗が点々と散らばる。

根室をはじめとする道東は、日本有数の一次産業の地だ。根室半島の沖はサンマ・サケ・タラなどの好漁場で、根室港・花咲港は全国でも屈指の水揚げを誇る。内陸に入れば、別海町をはじめとする酪農地帯が広がり、生乳の生産量は日本でも最大級だ。水産と酪農——この二つの一次産業が、道東の経済を支えている。同時にこの地域は、北方領土という、戦後ずっと未解決の問題を抱える土地でもある。漁業権をめぐる制約は、根室の漁業に長く影を落としてきた。

この信金の数字には、二つの際立った特徴がある。自己資本比率22.41%という厚さと、預貸率30.2%という低さだ。預金の3割ほどしか貸さず、資本を厚く積む。なぜ、道東の果ての信金はこの選択をするのか。数字とともに読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。大地みらい信用金庫の預金は4,239億円、貸出金は1,282億円。預貸率は30.2%で、預金の3割ほどしか貸出に回していない。自己資本比率は22.41%と厚く、不良債権比率は9.84%と高めだ。店舗数は24、中小企業等への貸出残高は1,128億円。

目を引くのは、預貸率30.2%という低さと、自己資本比率22.41%という厚さの組み合わせだ。同じ道東の中心都市・釧路市を地盤とする釧路信用金庫(預貸率47.9%・自己資本比率11.28%)と比べると、大地みらい信用金庫は預貸率がさらに低く、自己資本は倍近く厚い。不良債権比率9.84%という高さは、水産・酪農という変動の大きい一次産業を地盤とすることを映している。焦げ付きのリスクが高い土地だからこそ、貸出を抑え、資本を厚く積んで備える——その姿勢が、数字にはっきりと表れている。

道東の二つの信用金庫(令和7年3月末)
 大地みらい信用金庫釧路信用金庫
本店根室市釧路市
預金4,239億円2,623億円
預貸率30.2%47.9%
自己資本比率22.41%11.28%
不良債権比率9.84%7.75%

同じ道東に立つ二つの信金。いずれも一次産業を地盤に焦げ付きは高めだが、根室の大地みらい信用金庫は預貸率がより低く、自己資本は倍近く厚い。地の果ての厳しさが、守りの数字に出ている。

水産と酪農の地で——大地みらい信用金庫の歩み

大地みらい信用金庫は、根室を中心とする道東の信用金庫が合併を重ねて生まれた。行名の「大地」は、広大な道東の土地を、「みらい」は地域の未来への願いを込めたものだ。水産と酪農という一次産業を担う事業者に資金を供給し、地の果ての経済とともに歩んできた。

道東の経済は、本州の都市部とは大きく異なる。水産は、漁獲量が年によって大きく変動し、不漁が続けば漁業者の経営は一気に苦しくなる。酪農も、生乳価格や飼料コストの変動、後継者不足といった課題を抱える。そのうえ、人口減少が著しく、地域の経済規模は年々小さくなっている。貸す相手の経営が変動の波に揺れ、貸す土地そのものが縮んでいく——そうした厳しい環境のなかで、大地みらい信用金庫は地域とともにあり続けてきた。

22.41%の資本を、地の果てから読む

大地みらい信用金庫の自己資本比率22.41%という厚さは、変動の大きい一次産業と、縮んでいく地域を地盤とすることへの備えとして読める。水産の不漁、酪農の苦境、人口減少——こうしたリスクが現実になったとき、厚い自己資本は、地域が落ち込んでも貸し続けられる体力になる。不良債権比率9.84%という高さは、すでにそのリスクの一部が表面化していることを示しているとも読め、だからこそ資本の厚さが守りとして効いてくる。

預貸率30.2%という低さも、同じ事情の裏返しだ。貸したくても、変動の大きい一次産業に過度に貸し込むことはリスクが高い。人口減少で資金需要そのものも細る。その結果、集めた預金の多くは貸出でなく有価証券の運用などに回り、預貸率は低くとどまる。無理に貸して焦げ付きを増やすより、貸出を抑え、資本を厚く積んで地域とともに生き延びる——それが、道東の果ての信金が選んだ生存戦略だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

道東の経済とともに

大地みらい信用金庫の数字は、水産と酪農に生きる道東という土地と、その厳しさのなかで守りを固める信金の歩みの、両方を映している。広大だが人口の少ない地の果てで、変動の大きい一次産業を支えながら、厚い自己資本と低い預貸率で備えてきた。地域が縮んでも貸し続けるための備えが、22.41%という厚い自己資本に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。大地みらい信用金庫を見れば、水産と酪農の道東の厳しさと、そこで守りを選んだ信金の姿が浮かぶ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。北海道の他の金融機関と並べて眺めたい方は、北海道の地域金融機関のページへ。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、相対的に融資先を求めている可能性をうかがう一つの目安になる。ただし、有価証券運用や厚い自己資本で備えることを選ぶ金融機関は、預貸率が低くても融資に消極的とは限らない。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。釧路信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(根室市に本店を置き、道東を地盤とする信用金庫であること、合併を重ねて生まれたこと、根室・花咲などの漁港、別海などの酪農地帯、北方領土問題が地域に影を落としてきたこと)に関する記述=大地みらい信用金庫および各種公開情報にもとづく。
道東の地理・産業(根室半島、水産業、酪農、人口減少)に関する記述=各種公開情報。

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