北門信用金庫——屯田兵の拓いた米どころで、信金は何に貸すか
預貸率41.3%、不良債権比率1.27%。北海道滝川市に本店を置く北門信用金庫。屯田兵が拓いた中空知の稲作地帯を地盤に、低い焦げ付きを保ちながら地元に貸す信金の数字を、土地の歴史と農業から読みます。
北海道滝川市に本店を置く北門信用金庫は、地元で「ほくもん」と呼ばれる、中空知地区の信用金庫です。預金2,919億円、貸出金1,205億円、店舗23。滝川市・赤平市・芦別市・歌志内市・砂川市などの中空知の市町を地盤に、南空知の岩見沢や、札幌周辺にも店舗を広げています。滝川市など複数の市町で指定金融機関を務める、この地域の中心的な金融機関です。
この信金の名「北門」には、土地の歴史が刻まれています。明治時代、空知地方には屯田兵村が数多く配置されました。石狩川の水運と鉄道網の拠点であったこの地は、北の守りの要として「北門の地」と呼ばれた——その由来が、金庫名になっています。屯田兵が原野を拓き、石狩川の流域に広大な水田を開いた。中空知は、そうして生まれた北海道有数の稲作地帯です。この土地の成り立ちが、北門信用金庫の数字を読む鍵になります。
この信用金庫の数字で目を引くのは、預貸率41.3%という控えめさと、不良債権比率1.27%という低さの組み合わせです。集めた預金の4割ほどを貸出に回しながら、焦げ付きは低く抑えられている。この二つを、中空知という土地から読むと、米どころの信金の堅実な姿が見えてきます。
まず、数字を並べる
北門信用金庫の預金は2,919億円、貸出金は1,205億円、預貸率41.3%。自己資本比率は16.59%、不良債権比率は1.27%。中小企業等向けの貸出先は5,917件です。
| 預金 | 2,919億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 1,205億円 |
| 預貸率 | 41.3% |
| 自己資本比率 | 16.59% |
| 不良債権比率 | 1.27% |
| 中小企業等向け貸出先 | 5,917件 |
| 店舗 | 23店 |
預貸率は控えめ、自己資本は厚め、焦げ付きは低い。米どころの信金の堅実さを数字から読む。
41.3%と1.27%を、米どころから読む
預貸率41.3%という控えめさと、不良債権比率1.27%という低さ。この組み合わせは、堅実な経営の姿を描きます。本紀行で見てきた、不良債権比率が一割を超える米どころの信金(秋田の羽後信用金庫など)とは、対照的な数字です。同じ農業地帯でも、なぜこれほど違うのか。
北門信用金庫が貸す相手は、地元の中小事業者です。そのなかには、中空知の稲作を中心とする農業の関係者、それを支える農協関連や農機・資材の事業者、そして滝川・砂川といった地方都市の商業・サービス業が含まれると考えられます。中空知は石狩川流域の平地に広がる、北海道でも有数の米どころ。屯田兵が拓いた以来の歴史を持つ、安定した稲作地帯です。大規模で基盤の固い水田農業は、零細な兼業農家が多い本州の米どころとは、経営の安定度が異なる面があると考えられます。低い不良債権比率1.27%には、こうした土地の農業の性格が、ある程度は影響していると読めます。
一方、預貸率が41.3%と控えめなのは、人口減少が進む地方の信金に共通する事情です。中空知は、かつて炭鉱で栄えた歌志内市・赤平市・芦別市を含み、炭鉱の閉山後は人口減少が著しい地域でもあります。歌志内市は日本でもっとも人口の少ない市として知られます。借り手となる地元の事業者が構造的に細るなかでは、集めた預金を貸出に変えられる範囲がおのずと限られる。あふれた預金は有価証券などの運用に向かい、自己資本比率16.59%という厚みを保つことにもつながっています。もちろん、これらの比率には個別の事情も絡むため断定はできませんが、米どころと旧炭鉱地という中空知の二つの顔を抜きに、この数字は読めません。
なぜ、こうなったのか——制度と地域
北門信用金庫が地元に貸す信金であることの背景には、信用金庫という制度があります。信用金庫が融資できる相手は原則として「会員」に限られ、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人、と定められています。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれません。
この制度のもとでは、貸す相手はおのずと地元の中小事業者や住民に絞られます。北門信用金庫にとって、その「地元」とは、屯田兵が拓いた稲作地帯であり、炭鉱の記憶を残す中空知の地域経済そのものです。1949年に滝川信用組合として創業し、札幌地区への店舗拡大にあわせて「北門」へと改称してきた歩みは、地元に根ざしながら活路を広げてきた信金の姿でもあります。
借り手にとっての意味
地元に根ざす信用金庫は、地域の事業者にとって身近な相談相手です。とりわけ、米どころの農業関係者や、人口減少地域で商いを続ける小さな事業者にとって、地元の事情を知る信金の存在は心強いものです。低い不良債権比率は、堅実な貸出と土地の安定の表れですが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。
数字は、土地の歴史を映す
預貸率41.3%という控えめさと、不良債権比率1.27%という低さは、屯田兵が拓いた稲作地帯と、炭鉱の記憶を残す土地に根ざし、堅実に地元を支えてきた信金の姿を映しています。同じ米どころの信金でも、土地の農業の基盤や歴史が違えば、数字はこれだけ異なる。数字は、その金融機関がどんな土地で、誰に向き合ってきたかを語ります。北門信用金庫の数字は、北の守りの地・中空知の今そのものです。
各地の金融機関には、それぞれの土地の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。北海道の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、北海道の地域金融機関のページもどうぞ。
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
北門信用金庫の沿革(1949年の滝川信用組合としての創業、中空知信用金庫を経て北門信用金庫へ改称)・営業地区・指定金融機関に関する記述=北門信用金庫・北海道信用金庫協会等の公開情報。
中空知の屯田兵による開拓・稲作・旧炭鉱地(歌志内・赤平・芦別等)の人口減少に関する記述=各種公開情報。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=金融庁 金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」資料『協同組織金融機関の「地区」のあり方』(2008年6月20日・神吉正三)。