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但馬銀行——戦時の統合を拒んで独り残った銀行は、兵庫北部で何に貸すか

預貸率85.4%、預金1.2兆円、店舗69。兵庫県豊岡市に本店を置く但馬銀行。第二地方銀行でない地方銀行としては、兵庫県で唯一。戦時の銀行統合に、水産金融の特殊性を理由に加わらず単独で存続した、独立の血を引く銀行の数字と歴史を読む。

ニホン銀行紀行 ・ 兵庫県

兵庫県豊岡市。城崎温泉や出石の城下町、そして鞄づくりで知られる但馬地方の中心に、但馬銀行の本店はある。兵庫県北部、日本海に面したこの地域を地盤とする地方銀行だ。預金は1兆1,521億円、貸出金は9,843億円。預貸率は85.4%で、預金の8割超を貸出に回している。よく貸す銀行だ。

但馬銀行には、一つ特筆すべき肩書きがある。第二地方銀行ではない地方銀行としては、兵庫県で唯一の存在だということだ。兵庫県には神戸を地盤とする大きな銀行があるが、いわゆる第一地銀の系譜で県内に本店を置くのは、但馬銀行だけである。日本海に面した兵庫北部という、けっして大きくない地域を地盤としながら、地方銀行であり続けている。その背景には、戦時に統合を拒んで単独で生き残ったという、独立の歴史があった。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。但馬銀行の預金は1兆1,521億円、貸出金は9,843億円。預貸率は85.4%で、預金の8割超を貸出に回している。自己資本比率は8.53%、不良債権比率は1.31%と低い。店舗数は69、中小企業等への貸出残高は7,543億円にのぼる。

但馬銀行(令和7年3月末)
預金11,521億円
貸出金9,843億円
預貸率85.4%
自己資本比率8.53%
不良債権比率1.31%
中小企業等向け貸出残高7,543億円
店舗69店

預貸率85.4%・不良債権1.31%。兵庫北部の地域に密着し、低い焦げ付きでよく貸す。

戦時の統合を拒んだ、独立の血

但馬銀行の源流は、1897年(明治30年)、兵庫県城崎郡香住町に設立された美含(みくみ)銀行にさかのぼる。日本海に面した漁港の町に生まれた銀行だった。1932年(昭和7年)には香住銀行と名を改める。

この銀行の運命を決めたのが、戦時の銀行統合だった。第二次世界大戦下、国は金融を効率化するため、各地で銀行の統合を強力に進めた。但馬地方でも、8つの銀行が合併して全但銀行が設立された。ふつうなら、地元の小さな銀行はこの統合に飲み込まれる。ところが香住銀行は、水産金融の特殊性を理由に、頑強に単独存続の必要性を訴え、この合併に加わらなかったとされる。漁業への融資には、農業や商工業とは違う独特の事情がある。漁の浮き沈み、船や漁具への投資、水揚げの季節変動——その機微を分かる銀行でなければ、漁師には貸せない。香住銀行は、その理屈で統合を拒み、独り残った。

結果として、香住銀行は戦時の損失も少なく、資本金の減資や預金の封鎖をすることなく、戦後の混乱期を無事に乗り越えたとされる。やがて、統合で生まれた全但銀行は神戸の大銀行に合併され、その但馬地方の店舗は香住銀行へと譲渡されていった。統合を拒んで残った小さな銀行が、統合で生まれた銀行の地盤を、戦後になって引き継いだのである。1956年、香住銀行は但馬銀行と行名を改め、但馬地方全体を地盤とする銀行であることを鮮明にした。独立を貫いた血が、兵庫北部の地方銀行を作った。

85.4%を、地域と独立から読む

預貸率85.4%は、地方銀行としてよく貸す部類に入る。集めた預金の8割超を貸出に回し、しかも不良債権比率は1.31%と低い。よく貸しながら、焦げ付きが少ない。小さな地域を地盤とする銀行としては、堅実な数字だ。

この数字の背景には、但馬地方への深い密着がある。城崎温泉などの観光、豊岡の鞄づくり、日本海の水産、出石をはじめとする農と商い。けっして大きくはないが、多様な地場産業を持つこの地域で、但馬銀行は唯一の地方銀行として、地元の事業者に深く貸してきた。戦時に「漁師に貸せるのは自分たちだ」と統合を拒んだ独立の精神は、いまも地域への密着という形で生きている。低い不良債権比率は、地元を知り尽くした銀行ならではの、取引先との近さと与信の確かさを映していると読める。

独り残った銀行が、いまも地域を支える

但馬銀行の預貸率85.4%は、観光と鞄と水産の地・但馬という土地と、戦時の統合を拒んで単独で生き残った独立の歴史の、両方を映している。明治の漁港の銀行に源を持ち、水産金融の特殊性を盾に統合を拒み、戦後はその地盤を広げて兵庫北部唯一の地方銀行になった。数字は、その金融機関がどこから来て、何を守って貸してきたかを語る。但馬銀行の数字は、独立を貫いた小さな地方銀行の、いまの記録である。

各地の金融機関には、それぞれの成り立ちと土地の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。兵庫県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、兵庫県の地域金融機関のページもどうぞ。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、相対的に融資先を求めている可能性をうかがう一つの目安になる。ただし、有価証券運用を主体とする金融機関は、預貸率が低くても融資に積極的とは限らない。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
沿革(1897年に美含銀行として設立、1932年に香住銀行へ改称、戦時の銀行統合の際に水産金融の特殊性を理由に全但銀行への合併に加わらず単独存続したとされること、戦後に全但銀行から但馬地方の店舗の譲渡を受けたこと、1956年に但馬銀行へ改称、第二地方銀行でない地方銀行として兵庫県唯一であること)に関する記述=各種公開情報。
但馬地方の産業(城崎温泉などの観光、豊岡の鞄づくり、日本海の水産、出石の城下町)に関する記述=各種公開情報。

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