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興能信用金庫——能登に根ざす信金は、復興のただ中で何を支えるか

預貸率50.5%、自己資本比率12.25%。鳳珠郡能登町に本店を置く興能信用金庫。能登半島地震の被災地に根ざす信金が、復旧支援に取り組みながら地域を支える姿を、確かな事実にもとづいて読みます。

ニホン銀行紀行 ・ 石川県

石川県鳳珠(ほうす)郡能登町に本店を置く興能信用金庫は、地元で「こうのう」と呼ばれる信用金庫です。預金2,783億円、貸出金1,406億円、店舗21。能登半島の北部・奥能登を中心に、能登町・穴水町・輪島市・珠洲市・七尾市から、金沢市にまで営業地区を広げる信用金庫で、本店のある能登町の指定金融機関も受託しています。

本拠地の奥能登は、日本海に突き出した能登半島の先端部にあたります。豊かな里山里海の文化、輪島塗をはじめとする伝統工芸、農業・水産業、そして観光に支えられた地域です。一方で、半島という地理と人口減少の進行という、地方が抱える課題を色濃く持つ土地でもあります。そして近年、この地域は令和6年(2024年)の能登半島地震という大きな災害に見舞われました。被災地の金融機関として、復興のただ中で地域を支えるという役割が、いまの興能信用金庫には重なっています。この土地の事情が、数字を読む鍵になります。

興能信用金庫は、1933年に宇出津(うしつ)信用組合として設立され、能登とともに長く歩んできました。数字の面で見ておきたいのは、預貸率50.5%という中庸の水準と、自己資本比率12.25%という相応の厚みです。

まず、数字を並べる

興能信用金庫の預金は2,783億円、貸出金は1,406億円、預貸率50.5%。自己資本比率は12.25%、不良債権比率は4.82%。中小企業等向けの貸出先は9千件を超えます。

興能信用金庫(令和7年3月末)
預金2,783億円
貸出金1,406億円
預貸率50.5%
自己資本比率12.25%
不良債権比率4.82%
中小企業等向け貸出先9,283件
店舗21店

預貸50.5%・自己資本12.25%。能登に根ざす信金の、いまの数字。

数字を、能登という土地から読む

預貸率50.5%は、信用金庫として中庸の水準です。集めた預金の半分ほどを地域に貸しています。本紀行で見てきた、預貸率が3割前後にとどまる地方の信金と比べれば、地域に相応に貸している方です。

興能信用金庫が貸す相手は、能登の中小事業者と個人です。農業・水産業の関連事業者、輪島塗などの伝統工芸、観光関連、地域の商業、そして個人の住宅資金が、その融資先に含まれると考えられます。不良債権比率4.82%というやや高めの水準は、人口減少が進み、一次産業や伝統工芸といった変動を抱える業種に長く貸し続けてきた、奥能登という土地の事情を映していると読めます。地震の影響がこの比率にどう及ぶかは、今後の推移を見なければ分かりませんが、被災地の地域経済が困難に直面していること自体は、確かな背景です。

自己資本比率12.25%という相応の厚みは、こうした土地で地域を支え続けるための基盤です。地域が困難に直面したとき、金融機関に求められるのは、揺らがずに資金を回し続けることです。興能信用金庫は、能登半島地震を受けて災害復旧のための融資の取り扱いを始めるなど、被災した地域の事業者や住民の再建を支える取り組みを進めています。数字だけからは見えにくいことですが、被災地の信用金庫にとって、いま最も重い役割は、地域とともに復興の道を歩むことにあります。もちろん、これらの比率には個別の事情や経営方針も絡むため、断定的な評価は避けますが、能登という土地の歩みと、いまの局面を抜きに、この信金の数字は読めません。

興能信用金庫が示すのは、困難に直面した地域に根ざし、復興のただ中で資金を支える信金の姿です。能登に長く根を張り、災害復旧の融資に取り組む。中庸の預貸率と相応の自己資本は、被災地の地域金融機関として、揺らがず地域を支えようとする立場の表れと読めます。

なぜ、こうなったのか——制度と地域

興能信用金庫が地元の中小事業者に貸す信金であることの背景には、信用金庫という制度があります。信用金庫が融資できる相手は原則として「会員」に限られ、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の定める「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人、と定められています。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれません。

この枠のもとでは、貸す相手はおのずと地元の中小事業者や住民に絞られます。興能信用金庫にとって、その「地元」とは、奥能登を中心とする能登の地域経済そのものです。地区が定められ、地域とともにあるという信用金庫の制度が、困難な局面においても「地域を支え続ける」という役割を、この信金に課しているとも言えます。

同じ石川の、都市部の信金と並べてみる

本紀行には、同じ石川県の金沢信用金庫も登場しています。金沢信金は、加賀百万石の城下町・金沢に根ざす信金でした。奥能登に根ざす興能信用金庫(預貸率50.5%)と、県都・金沢に根ざす金沢信用金庫とを並べると、同じ石川県でも、人口減少と災害という課題を抱える能登と、商業の集まる都市・金沢とで、信金の置かれた状況が大きく異なることが見えてきます。能登と金沢——一つの県のなかの二つの土地に根ざす信金を並べると、石川という県の幅が見えてきます。県都の信金の姿は、金沢信用金庫の記事もあわせてどうぞ。

借り手にとっての意味

困難に直面した地域に根ざす信用金庫は、地元の事業者や住民にとって、再建のための身近な相談相手です。とりわけ災害からの復旧期には、土地の事情を知り、地域とともにある金融機関の存在は重みを持ちます。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、地域とともにある姿を映す

預貸率50.5%という中庸さと、自己資本比率12.25%という相応の厚みは、奥能登に長く根ざし、人口減少や災害という困難を抱えながらも、地域とともに歩んできた信金の姿を映しています。順風の土地で貸す信金もあれば、興能信用金庫のように困難に直面した地域を支える信金もある。数字は、その金融機関がどんな土地に立ち、どんな役割を担っているかを語ります。興能信用金庫の数字は、復興の道を歩む能登に根ざす信金「こうのう」の、いまの記録です。

各地の金融機関には、それぞれの土地と歩みの事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。石川県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、石川県の地域金融機関のページもどうぞ。

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
興能信用金庫の沿革・地盤(1933年に宇出津信用組合として設立、鳳珠郡能登町本店、奥能登から金沢に及ぶ営業地区、能登町の指定金融機関であること、能登半島地震を受けた災害復旧融資等の取り組み)に関する記述=興能信用金庫および各種公開情報にもとづく。
奥能登の地理と産業(能登半島北部、里山里海、輪島塗等の伝統工芸、農業・水産業、観光、人口減少)、令和6年能登半島地震が被災地となったことに関する記述=各種公開情報。個別の被害状況の詳細には立ち入らず、確認できる事実にもとづいて記述しています。
金沢信用金庫の位置づけ=各種公開情報および本紀行既出記事。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=金融庁 金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」資料『協同組織金融機関の「地区」のあり方』(2008年6月20日・神吉正三)。

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