¥Today ニホン銀行紀行

高松信用金庫——県都の商業地で、合併を重ねた信金は何に貸すか

預貸率46.5%、不良債権比率5.5%。高松市に本店を置く高松信用金庫。坂出・さぬきの信金と合併を重ねて香川全域に広がった県都の信金の数字を、四国の玄関口・高松の商業から読みます。

ニホン銀行紀行 ・ 香川県

香川県高松市に本店を置く高松信用金庫は、地元で「たかしん」と呼ばれる信用金庫です。預金5,092億円、貸出金2,367億円、店舗31。1949年の創業以来、坂出信用金庫(1981年)、さぬき信用金庫(2004年)と合併を重ね、いまでは営業区域を香川県全域に広げています。県都・高松に本店を構える、香川を代表する信用金庫のひとつです。

本店のある高松市は、香川県の県都であり、四国の玄関口でもあります。瀬戸大橋やフェリーで本州とつながり、四国各県を結ぶ交通の要衝として、古くから商業・サービス業が集まってきました。国の出先機関や企業の四国支店も多く置かれる、四国きっての商業都市です。農業や製造業よりも、商業・サービス業の比重が大きい県都——この土地の性格が、高松信用金庫の数字を読む鍵になります。

この信用金庫の数字で目を引くのは、預貸率46.5%という水準と、不良債権比率5.5%というやや高めの数字の組み合わせです。集めた預金の半分弱を貸しながら、焦げ付きはやや高い。この二つを、県都・高松という土地から読むと、商業都市の信金の姿が見えてきます。

まず、数字を並べる

高松信用金庫の預金は5,092億円、貸出金は2,367億円、預貸率46.5%。自己資本比率は12.04%、不良債権比率は5.5%。中小企業等向けの貸出先は1万7,815件にのぼります。

高松信用金庫(令和7年3月末)
預金5,092億円
貸出金2,367億円
預貸率46.5%
自己資本比率12.04%
不良債権比率5.5%
中小企業等向け貸出先17,815件
店舗31店

合併を重ね香川全域へ。県都の商業地に根ざす信金の数字を読む。

46.5%と5.5%を、県都の商業から読む

預貸率46.5%という中庸の数字と、不良債権比率5.5%というやや高めの数字。この組み合わせは、県都の商業地に根ざす信金の姿を描きます。

高松信用金庫が貸す相手の多くは、高松をはじめとする香川県内の中小事業者です。そのなかには、県都・高松の商業・サービス業、小売や飲食、卸売、そして県内各地の中小の製造業や建設業が含まれると考えられます。県都の商業は、人の往来と消費に支えられる一方で、景気の波や消費の動向に左右されやすい面があります。地方都市の商店街や小売業が全国的に厳しさを抱えるなか、そうした事業者に貸し続けてきたことが、不良債権比率5.5%というやや高めの水準の背景にあると読めます。本紀行で見てきた、地場産業の構造変化を抱える信金と同じく、地域経済の体温が、この比率には映ります。

預貸率が46.5%と、預金の半分弱にとどまるのは、県都の商業地でも、信金が貸せる中小向けの資金需要には限りがあるためと考えられます。高松には、地方銀行やメガバンクの支店もあり、優良な貸出先をめぐる競争もある。集めた預金のうち貸出に回しきれない分は、有価証券などの運用に向かいます。もちろん、これらの比率には個別の事情や経営方針も絡むため断定はできませんが、合併を重ねて県都から香川全域に広がってきた信金であることを抜きに、この数字は読めません。

高松信用金庫が示すのは、県都の商業地に根ざす信金の現実です。合併を重ねて香川全域に広がりながら、県都・高松の商業・サービス業に貸してきた。中庸の預貸率とやや高めの焦げ付きは、地方都市の商業が抱える事情を映していると読めます。

同じ香川の、信金と並べてみる

同じ香川県には、瀬戸内の西側・観音寺市を地盤とする観音寺信用金庫があります。観音寺信用金庫は、製紙と食品加工の地に根ざし、自己資本比率22.45%・預貸率48.7%という、守りを固めた数字を持っていました。県都・高松の商業地に根ざす高松信用金庫(46.5%・不良債権5.5%)とは、同じ香川でも地盤の性格が異なります。県都の商業地に立つ信金と、瀬戸内の産業のまちに立つ信金。同じ県でも、土地の産業が違えば数字は違う。両者を並べると、香川という小さな県のなかの多様さが見えてきます。瀬戸内の信金の姿は、観音寺信用金庫の記事もあわせてどうぞ。

なぜ、こうなったのか——制度と地域

高松信用金庫が地元に貸す信金であることの背景には、信用金庫という制度があります。信用金庫が融資できる相手は原則として「会員」に限られ、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人、と定められています。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれません。

この制度のもとでは、貸す相手はおのずと地元の中小事業者や住民に絞られます。高松信用金庫にとって、その「地元」とは、県都・高松を中心とする香川県の地域経済です。坂出・さぬきの信金と合併を重ねて営業区域を広げてきた歩みは、人口減少や金融再編の波のなかで、地域に根ざす信金が規模を保ち、地元を支え続けるための選択でもありました。

借り手にとっての意味

地元に根ざす信用金庫は、地域の事業者にとって身近な相談相手です。とりわけ、県都の商業・サービス業を営む中小事業者にとって、土地の事情を知る信金の存在は心強いものです。一方で、やや高めの不良債権比率は、その地域の商業が課題を抱えていることの裏返しでもあります。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、県都の商業を映す

預貸率46.5%という水準と、不良債権比率5.5%というやや高めの数字は、合併を重ねて香川全域に広がりながら、県都・高松の商業・サービス業に貸し続けてきた信金の姿を映しています。守りを固める信金もあれば、県都の商業地で地域経済の体温を引き受ける信金もある。数字は、その金融機関がどんな土地で、誰に向き合ってきたかを語ります。高松信用金庫の数字は、四国の玄関口に立つ信金の、いまの記録です。

各地の金融機関には、それぞれの土地の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。香川県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、香川県の地域金融機関のページもどうぞ。

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
高松信用金庫の沿革(1949年創業、1981年に坂出信用金庫、2004年にさぬき信用金庫と合併し香川県全域に営業区域を拡大)に関する記述=高松信用金庫および各種公開情報にもとづく。
高松市の県都・四国の玄関口としての商業・サービス業の集積に関する記述=各種公開情報。
観音寺信用金庫の数値=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=金融庁 金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」資料『協同組織金融機関の「地区」のあり方』(2008年6月20日・神吉正三)。

← ニホン銀行紀行へ | ¥Today トップへ