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奄美大島信用金庫——離島に立つ信金は、何に貸しているのか

不良債権比率8.73%、預貸率52.2%。奄美群島という離島に立つ奄美大島信用金庫。その数字を読むと、サトウキビ・肉用牛・観光・建設という、台風や相場に揺れる島の産業に貸し続けてきた信金の姿が見えてきます。

ニホン銀行紀行 ・ 鹿児島県

鹿児島県奄美市に本店を置く奄美大島信用金庫は、地元で「あましん」と呼ばれています。本州から遠く離れた奄美群島の各島に支店網を広げる、離島の信用金庫です。預金887億円、貸出金463億円、店舗15。1934年に名瀬町信用組合として設立され、戦後に信用金庫となった、島の歴史とともに歩んできた金融機関です。

奄美群島は、本州からも鹿児島本土からも遠く離れた離島です。サトウキビと黒糖、肉用牛の畜産、温暖な気候を生かした野菜づくりといった農業に、観光と建設業が加わって、島の経済を形づくります。世界自然遺産に登録された豊かな自然と、台風の通り道という厳しさが同居する土地です。この土地柄が、奄美大島信用金庫の数字を読む鍵になります。

この信用金庫の数字で目を引くのは、不良債権比率8.73%という、やや高めの水準です。預貸率は52.2%で、集めた預金の半分ほどを貸出に回しています。この二つの数字を、奄美という離島の産業から読むと、本州の金融機関とは違う、島ならではの事情が浮かび上がります。

まず、数字を並べる

奄美大島信用金庫の預金は887億円、貸出金は463億円、預貸率52.2%。自己資本比率は15.23%、不良債権比率は8.73%。中小企業等向けの貸出先は6,635件にのぼります。

奄美大島信用金庫(2025年3月期)
預金887億円
貸出金463億円
預貸率52.2%
自己資本比率15.23%
不良債権比率8.73%
中小企業等向け貸出先6,635件
店舗15店・奄美群島の各島

島の事業者6,600余りに貸す、奄美群島ただひとつの信用金庫です。

離島という、ひとつの経済圏

奄美群島は、本州はもちろん、鹿児島本土からも遠く離れた離島です。この地理が、奄美大島信用金庫の立場を決めています。島の外の大きな銀行が積極的に支店を構えにくい離島では、地元の信用金庫が、島の事業者にとって中心的な貸し手になります。中小企業等向け貸出先が6,635件と、預金規模のわりに多いのは、島の経済を一手に引き受けてきたことの表れです。

では、その島の経済とは何か。奄美群島の基幹産業を知ると、不良債権比率8.73%という数字の背景が見えてきます。

8.73%を、島の産業から読む

奄美群島の農業の基幹作物は、サトウキビです。栽培農家は全農家の約7割、栽培面積は全耕地の5割以上を占め、製糖会社や黒糖工場など、島の経済に幅広く関わっています。これに、近年盛んになってきた肉用牛の繁殖経営が加わります。産出額は農業全体の3分の1以上を占め、県内でも有数の産地です。さらに、冬の温暖な気候を生かした野菜づくり、そして観光と建設業が、島の経済を支えています。

これらの産業に共通するのは、自然と相場に大きく左右されることです。サトウキビも肉用牛も、台風や干ばつといった自然災害の影響を受けやすい。離島という立地は、台風の通り道にあたることも多く、一度の災害が農業や建設、観光に広く影響します。飼料価格の高騰は、肉用牛の生産者の収益を圧迫します。観光は、天候や景気、感染症の流行に揺れます。こうした変動の大きい産業に貸す信用金庫では、不良債権比率がある程度高めに出やすいと考えられます。

不良債権比率8.73%という数字は、「危ない信金」と短絡すべきものではありません。むしろ、台風・干ばつ・相場に揺れる離島の一次産業や観光・建設に、それでも貸し続けてきたことの帰結と読むほうが実態に近いと思われます。島の外の銀行が踏み込みにくい場所で、島の事業者に資金を流す役割を、この信金が担ってきました。もちろん、不良債権比率には個別の大口先の事情や引当の方針も絡むため、産業の変動だけが原因とは断じられません。だが、離島の産業構造を抜きに、この数字は読めません。

島とともに、前を向く動き

奄美大島信用金庫は、守るだけの信金ではありません。2021年には農業分野への融資に本格的に参入し、農業向けの新商品の取り扱いを始めました。同じ年、奄美大島は世界自然遺産に登録され、観光面では追い風も吹いています。変動の大きい島の産業に寄り添いながら、新しい資金需要にも応えようとする——離島の信用金庫の、もうひとつの顔です。自己資本比率15.23%という一定の厚みは、島の揺れを受け止めつつ前に進むための備えともいえます。

借り手にとっての意味

離島では、地元の信用金庫が、事業者にとって最も身近な——ときに唯一の——本格的な貸し手になることがあります。島の産業の事情を知り、自然災害のリスクも織り込んで貸してきた経験は、島の事業者にとって心強いものです。ただし、それでも審査は審査であり、預貸率や不良債権比率といった数字だけで借りやすさが決まるわけではありません。預貸率の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、島の風土を映す

不良債権比率8.73%という数字は、本州の物差しで見れば高い。だが、台風が通り、サトウキビと肉用牛と観光に支えられた離島で、島の事業者に貸し続けてきた信金の数字としては、別の意味を帯びます。数字は、その金融機関がどんな風土のなかで、誰に向き合ってきたかを映しています。奄美大島信用金庫の数字は、奄美群島という離島の風土そのものです。

本紀行には、同じ鹿児島県の南日本銀行も登場しています。南日本銀行は、鹿児島本土を中心に、中小・零細に深く貸す第二地方銀行でした。奄美の島々に根ざし、台風や相場に揺れる一次産業に貸し続けてきたこの奄美大島信用金庫と、本土の中小に広く貸す南日本銀行(預貸率76.3%・店舗64)とを並べると、同じ鹿児島県でも、離島の経済を支える信金と、本土の中小に深く貸す第二地銀とで、地盤も役割も大きく異なることが見えてきます。本土の第二地銀の姿は、南日本銀行の記事もあわせてどうぞ。

各地の金融機関には、それぞれの土地の風土と事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。鹿児島県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、鹿児島県の地域金融機関のページもどうぞ。

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
奄美群島の基幹産業(サトウキビ・肉用牛・野菜・観光・建設)に関する記述=農畜産業振興機構・奄美市公開情報・各種公開情報。
農業分野への融資参入・新商品の取り扱い開始、奄美大島の世界自然遺産登録に関する記述=奄美大島信用金庫公開情報・各種公開情報。台風・干ばつ・飼料高騰の影響は公知の事実。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=金融庁 金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」資料『協同組織金融機関の「地区」のあり方』(2008年6月20日・神吉正三)。

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