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長野銀行——八十二銀行と一つになった第二地銀は、最後に何を残したか

預貸率57.6%、不良債権比率6.42%。松本市に本店を置いた長野銀行。八十二銀行と経営統合し2026年に合併した第二地銀の、合併直前の数字を、地銀再編という文脈から読みます。

ニホン銀行紀行 ・ 長野県

長野県松本市に本店を置いた長野銀行は、地元で「ながぎん」と呼ばれた第二地方銀行です。預金8,741億円、貸出金5,035億円、店舗53。長野県のなかで、地方銀行の八十二銀行に次ぐ立場にあった第二地銀です。なお、この長野銀行は、本記事が基準とする令和7年(2025年)3月末の時点ではすでに八十二銀行の傘下にあり、2026年1月、八十二銀行と合併して「八十二長野銀行」となりました。本記事は、合併直前の数字から、一つの第二地銀が歩んだ姿を読むものです。

本拠地の松本市は、長野県中信地方の中心都市です。国宝・松本城の城下町であり、精密機械や電子部品などの製造業、観光、農業が広がる土地です。長野県は南北に長く、善光寺の長野市、諏訪、上田、飯田など、地域ごとに異なる経済圏を持ちます。そのなかで長野銀行は、松本を本拠としつつ県内に店舗を展開してきました。この、八十二銀行という大きな地銀と同じ県を分け合う第二地銀という立場が、長野銀行の数字を読む鍵になります。

長野銀行は、1950年に殖産無尽を母体として設立され、相互銀行を経て1989年に普通銀行へ転換しました。数字の面で見ておきたいのは、預貸率57.6%という水準と、不良債権比率6.42%というやや高めの数字です。

まず、数字を並べる

長野銀行の預金は8,741億円、貸出金は5,035億円、預貸率57.6%。自己資本比率は7.3%、不良債権比率は6.42%。中小企業等向けの貸出残高は4,896億円にのぼります。

長野銀行(令和7年3月末)
預金8,741億円
貸出金5,035億円
預貸率57.6%
自己資本比率7.3%
不良債権比率6.42%
中小企業等向け貸出残高4,896億円
店舗53店

預貸57.6%・不良債権6.42%。合併直前の第二地銀の数字を読む。

57.6%と6.42%を、第二地銀の立場から読む

預貸率57.6%は、地方銀行・第二地銀としてはやや低めの水準です。集めた預金の6割弱を貸出に回している。そこに、不良債権比率6.42%というやや高めの数字が重なります。この組み合わせを、長野銀行が置かれた立場から読みます。

長野銀行が貸す相手は、松本を中心とする長野県内の中小事業者です。精密機械や電子部品の製造業、観光関連、農業、地域の商業が、その融資先に含まれます。だが、長野県には、総資産で長野銀行の10倍を超える規模の地方銀行・八十二銀行が存在しました。大きな地銀と同じ県でシェアを分け合う第二地銀は、地銀が手を伸ばしにくい中小・零細により深く向き合うことで、自らの居場所を作る。そうした先には、信用力に余裕の小さい事業者も含まれ、不良債権比率は高めに出やすくなります。預貸率がやや低めにとどまるのも、人口減少が進む県内で、貸出を大きく伸ばせる優良な借り手が限られていたことの表れと読めます。自己資本比率7.3%という、地銀のなかでは薄めの水準も、こうした立場と無縁ではありません。

そして、こうした第二地銀が単独で生き残ることの難しさこそが、八十二銀行との経営統合・合併という道につながりました。人口減少が進む地方で、同じ県に二つの銀行が並び立つより、一つにまとまって経営基盤を強くする——長野銀行の歩んだ道は、全国で進む地銀再編の、ひとつの典型でした。もちろん、これらの比率には個別の事情や経営方針も絡むため断定はできませんが、大きな地銀と県を分け合う第二地銀という立場を抜きに、この数字は読めません。

長野銀行が示すのは、大きな地銀と県を分け合い、最後は一つにまとまった第二地銀の姿です。地銀が届きにくい中小に深く貸し、やや高い焦げ付きを抱えながら地域を支えた。57.6%と6.42%は、第二地銀の立場と、地銀再編へと向かった地方金融の現実を映していると読めます。

同じ長野で、統合相手の地銀と並べてみる

本紀行には、長野銀行の統合相手であり、合併後の母体となった八十二銀行も登場しています。八十二銀行は、長野県を代表する有力地銀で、長野銀行の10倍を超える規模を持っていました。やや低い預貸率とやや高い焦げ付きを抱えた第二地銀・長野銀行(預貸率57.6%)と、県を代表する大きな地銀・八十二銀行とを並べると、同じ長野県で、規模の異なる二つの銀行が、なぜ一つにまとまる道を選んだのかが見えてきます。長野銀行を迎え入れた地銀の姿は、八十二銀行の記事もあわせてどうぞ。

借り手にとっての意味

第二地方銀行は、地域の中小事業者にとって、地銀と並ぶ身近な選択肢でした。地銀が慎重になりがちな先にも向き合う姿勢は、中小事業者にとって心強いものでした。合併によって八十二長野銀行となったいまも、旧長野銀行が培ってきた地域との関係は受け継がれていくとみられます。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、地銀再編の現実を映す

預貸率57.6%という水準と、不良債権比率6.42%というやや高めの数字は、大きな地銀と県を分け合いながら、地銀が届きにくい中小に深く向き合い、最後は統合・合併の道を歩んだ第二地銀の姿を映しています。単独で県を支える銀行もあれば、長野銀行のように再編のなかで一つにまとまる銀行もある。数字は、その金融機関がどんな立場で、どんな選択をしたかを語ります。長野銀行の数字は、八十二長野銀行へと受け継がれた、ひとつの第二地銀の最後の記録です。

各地の金融機関には、それぞれの立場と歩みの事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。長野県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、長野県の地域金融機関のページもどうぞ。

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。数値は合併前・令和7年3月末時点の長野銀行単体のものです。
長野銀行の沿革(1950年に殖産無尽を母体として設立、相互銀行を経て1989年に普通銀行へ転換、松本市本店、第二地方銀行)、八十二銀行との経営統合(2023年6月に八十二銀行の完全子会社となったこと)および2026年1月の合併による「八十二長野銀行」発足に関する記述=八十二銀行・長野銀行の開示資料、金融庁の公表資料および各種報道・公開情報にもとづく。
松本市・長野県の産業(松本城の城下町、精密機械・電子部品の製造業、観光、農業)に関する記述=各種公開情報。
八十二銀行の位置づけ=各種公開情報および本紀行既出記事。
第二地方銀行の一般的な成り立ち(無尽・相互銀行を源流とする等)に関する記述=一般的な金融制度の説明にもとづく。

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