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しまね信用金庫——出雲の城下町・松江で、信金は何に貸すか

預貸率54.2%、預金1,251億円。松江市に本店を置くしまね信用金庫。出雲の城下町・松江に根ざす信金が、預金の半分強を地元に貸す姿を、山陰という土地から読みます。

ニホン銀行紀行 ・ 島根県

島根県松江市に本店を置くしまね信用金庫は、県東部・出雲地方を中心に根ざす信用金庫です。預金1,251億円、貸出金678億円、店舗13。県都・松江を本拠とし、出雲地方の中小事業者に向き合ってきた信用金庫です。

本拠地の松江市は、宍道湖のほとりに開けた、島根県の県都です。松江城の城下町であり、出雲大社を擁する出雲地方の中心として、古くから山陰の政治・経済・文化の要でした。山陰は、日本海に面し、農業・水産、観光、そして地域の商業・サービス業が経済を支えてきた一方、全国的に見れば人口減少と過疎が進む地域でもあります。この、歴史ある城下町を抱えつつ過疎の進む山陰という土地柄が、しまね信用金庫の数字を読む鍵になります。

数字の面で見ておきたいのは、預貸率54.2%という水準です。集めた預金の半分強を貸出に回しています。

まず、数字を並べる

しまね信用金庫の預金は1,251億円、貸出金は678億円、預貸率54.2%。自己資本比率は9.8%、不良債権比率は2.76%。中小企業等向けの貸出先は5千件を超えます。

しまね信用金庫(令和7年3月末)
預金1,251億円
貸出金678億円
預貸率54.2%
自己資本比率9.8%
不良債権比率2.76%
中小企業等向け貸出先5,315件
店舗13店

預貸54.2%・自己資本9.8%。出雲の城下町に根ざす信金の数字。

54.2%を、山陰の土地から読む

預貸率54.2%は、信用金庫として中庸の水準です。集めた預金の半分強を貸出に回し、残りは有価証券などの運用にあてています。本紀行で見てきた地方の信金のなかでは、やや高めの部類に入ります。

しまね信用金庫が貸す相手は、松江を中心とする出雲地方の中小事業者と個人です。地域の商業・サービス業、建設、農業・水産に連なる事業者、観光関連、そして個人の住宅資金が、その融資先に含まれると考えられます。山陰は、大都市圏のような旺盛な資金需要が次々と生まれる土地ではなく、人口減少も進んでいます。集めた預金を地域だけで貸し切るのが容易ではなく、あふれた分が運用に向かう——この構図は地方の信金に共通しますが、しまね信用金庫は県都・松江という一定の経済集積を地盤とするため、預貸率は5割を超える水準を保っていると読めます。

不良債権比率2.76%は、地方の信金として特別に高くも低くもない水準です。自己資本比率9.8%という、協同組織として相応の水準とあわせて、堅実な経営がうかがえます。過疎の進む山陰で、県都の経済集積を足場に、地域の中小を堅実に支える——しまね信用金庫の数字からは、そうした姿勢が読み取れます。もちろん、これらの比率には個別の事情や経営方針も絡むため断定はできませんが、城下町・松江を抱えつつ過疎の進む山陰という土地を抜きに、この数字は読めません。

しまね信用金庫が示すのは、過疎の進む山陰で、県都の経済集積を足場に地域を支える信金の姿です。出雲の城下町・松江に根ざし、出雲地方の中小と個人に貸す。預貸率54.2%という水準は、人口減少の地域にありながら、県都という足場を持つ信金が地域に向き合ってきたことの表れと読めます。

なぜ、こうなったのか——制度と地域

しまね信用金庫が地元の中小事業者に貸す信金であることの背景には、信用金庫という制度があります。信用金庫が融資できる相手は原則として「会員」に限られ、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の定める「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人、と定められています。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれません。

この枠のもとでは、貸す相手はおのずと地元の中小事業者や住民に絞られます。しまね信用金庫にとって、その「地元」とは、県都・松江を芯とする島根県東部・出雲地方の地域経済そのものです。会員資格が地区内に絞られるという制度の枠が、結果として「出雲地方の中小に貸す信金」という姿を形づくっています。

同じ島根で、もう一つの信金と並べてみる

本紀行には、同じ島根県の島根中央信用金庫も登場しています。島根中央信金は、県中部の出雲市などを地盤とする信金でした。県都・松江を本拠とするしまね信用金庫(預貸率54.2%)と、県中部に根ざす島根中央信用金庫とを並べると、同じ島根県でも、それぞれの地域を地盤とする信金が、山陰という共通の条件のなかで地域を支えていることが見えてきます。山陰のもう一つの信金の姿は、島根中央信用金庫の記事もあわせてどうぞ。

借り手にとっての意味

地元に根ざす信用金庫は、地域の事業者にとって身近な相談相手です。とりわけ、過疎の進む地域で事業を営む中小事業者にとって、土地の事情を知る信金の存在は心強いものです。預貸率の水準は地盤の事情によるもので、それが個別の融資の可否を一律に決めるわけではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、山陰の歩みを映す

預貸率54.2%という水準は、城下町・松江を抱えつつ過疎の進む山陰に根ざし、県都の経済集積を足場に地域の中小を堅実に支えてきた信金の姿を映しています。大都市圏の信金もあれば、しまね信用金庫のように過疎の地域で県都を足場とする信金もある。数字は、その金融機関がどんな土地で、どんな条件のなかで歩んできたかを語ります。しまね信用金庫の数字は、出雲の城下町を支える信金の、いまの記録です。

各地の金融機関には、それぞれの土地と歩みの事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。島根県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、島根県の地域金融機関のページもどうぞ。

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
しまね信用金庫の地盤(松江市本店、島根県東部・出雲地方を中心に根ざす信用金庫であること)に関する記述=しまね信用金庫および各種公開情報にもとづく。
松江市・出雲地方の歴史と地理(宍道湖、松江城の城下町、出雲大社、山陰の中心、日本海の農業・水産・観光、人口減少・過疎)に関する記述=各種公開情報。
島根中央信用金庫の位置づけ=各種公開情報および本紀行既出記事。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=金融庁 金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」資料『協同組織金融機関の「地区」のあり方』(2008年6月20日・神吉正三)。

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