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米子信用金庫——山陰の商都・米子で、信金は何に貸すか

預貸率67.6%、預金1,859億円。米子市に本店を置く米子信用金庫。山陰の商都・米子に根ざす信金が、預金の7割近くを地元に貸す姿を、伯耆という土地から読みます。

ニホン銀行紀行 ・ 鳥取県

鳥取県米子市に本店を置く米子信用金庫は、地元で「よなごしんきん」と呼ばれる信用金庫です。預金1,859億円、貸出金1,257億円、店舗15。鳥取県西部、伯耆(ほうき)地方の中心都市・米子を地盤とする信用金庫です。

本拠地の米子市は、鳥取県西部の中心都市です。古くから商業で栄え「山陰の商都」とも呼ばれ、山陰両県(鳥取・島根)の結節点として、交通と商いの要でした。背後には名峰・大山(だいせん)がそびえ、周辺には農業、近隣の境港には水産業も広がります。県都・鳥取市とは離れた県西部にあって、独自の経済圏を成してきた土地です。この、商都として栄えた県西部の中心という土地柄が、米子信用金庫の数字を読む鍵になります。

数字の面で目を引くのは、預貸率67.6%という、信用金庫としては高めの水準です。集めた預金の7割近くを貸出に回しています。

まず、数字を並べる

米子信用金庫の預金は1,859億円、貸出金は1,257億円、預貸率67.6%。自己資本比率は8.39%、不良債権比率は4.28%。中小企業等向けの貸出先は9千件を超えます。

米子信用金庫(令和7年3月末)
預金1,859億円
貸出金1,257億円
預貸率67.6%
自己資本比率8.39%
不良債権比率4.28%
中小企業等向け貸出先9,273件
店舗15店

預貸67.6%・中小先9千超。商都・米子に根ざす信金の数字。

67.6%を、商都・米子から読む

預貸率67.6%は、信用金庫のなかでは高めの水準です。本紀行で見てきた地方の信金の多くが預貸率3割から5割ほどにとどまるなか、米子信用金庫は集めた預金の7割近くを貸出に回している。地域に積極的に貸している信金です。中小企業等向けの貸出先が9千件を超えることも、その裾野の広さを示しています。

米子信用金庫が貸す相手は、米子を中心とする県西部・伯耆地方の中小事業者と個人です。商都・米子の商業・サービス業、近隣の農業・水産に連なる事業者、建設、観光、そして個人の住宅資金が、その融資先に含まれると考えられます。米子は、山陰両県の結節点として一定の経済集積を持ち、商いの伝統も厚い。過疎の進む山陰にありながら、商都という地盤が、信金に貸す相手を供給してきた——預貸率67.6%という高めの水準は、こうした米子の商業集積に支えられていると読めます。

一方、不良債権比率4.28%はやや高めの水準です。これは、積極的に地域へ貸すなかで、体力に余裕の小さい中小・零細な借り手も引き受けてきたことの裏返しと読めます。自己資本比率8.39%という、協同組織として基準を満たす水準を保ちながら、商都の中小に深く貸してきた姿がうかがえます。もちろん、これらの比率には個別の事情や経営方針も絡むため断定はできませんが、山陰の商都・米子という土地を抜きに、この数字は読めません。

米子信用金庫が示すのは、過疎の進む山陰にありながら、商都という地盤を足場に積極的に貸す信金の姿です。山陰両県の結節点・米子に根ざし、預金の7割近くを地域に流す。預貸率67.6%という高さは、商都・米子の商業集積に支えられた積極性の表れと読めます。

なぜ、こうなったのか——制度と地域

米子信用金庫が地元の中小事業者に貸す信金であることの背景には、信用金庫という制度があります。信用金庫が融資できる相手は原則として「会員」に限られ、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の定める「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人、と定められています。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれません。

この枠のもとでは、貸す相手はおのずと地元の中小事業者や住民に絞られます。米子信用金庫にとって、その「地元」とは、商都・米子を芯とする鳥取県西部・伯耆地方の地域経済そのものです。会員資格が地区内に絞られるという制度の枠が、結果として「商都・米子の中小に貸す信金」という姿を形づくっています。

同じ鳥取で、もう一つの信金と並べてみる

本紀行には、同じ鳥取県の倉吉信用金庫も登場しています。倉吉信金は、県中部・倉吉などを地盤とする信金でした。県西部の商都・米子に根ざす米子信用金庫(預貸率67.6%)と、県中部に根ざす倉吉信用金庫とを並べると、同じ鳥取県でも、それぞれの地域を地盤とする信金が、山陰という共通の条件のなかで地域を支えていることが見えてきます。県中部の信金の姿は、倉吉信用金庫の記事もあわせてどうぞ。

借り手にとっての意味

地元に根ざす信用金庫は、地域の事業者にとって身近な相談相手です。とりわけ、商都・米子で商いを営む中小事業者にとって、土地の事情を知る信金の存在は心強いものです。高めの預貸率は積極的に貸す姿勢の表れとも読めますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、商都の集積を映す

預貸率67.6%という高めの水準は、過疎の進む山陰にありながら、商都・米子の商業集積を足場に、地域の中小に積極的に貸してきた信金の姿を映しています。運用に頼る地方の信金もあれば、米子信用金庫のように商都の地盤に支えられ積極的に貸す信金もある。数字は、その金融機関がどんな土地で、どんな足場を持ってきたかを語ります。米子信用金庫の数字は、山陰の商都を支える信金「よなごしんきん」の、いまの記録です。

各地の金融機関には、それぞれの土地と歩みの事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。鳥取県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、鳥取県の地域金融機関のページもどうぞ。

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
米子信用金庫の地盤(米子市本店、鳥取県西部・伯耆地方を地盤とする信用金庫であること)に関する記述=米子信用金庫および各種公開情報にもとづく。
米子市・伯耆地方の歴史と地理(山陰の商都、山陰両県の結節点、大山、近隣の境港の水産、農業)に関する記述=各種公開情報。
倉吉信用金庫の位置づけ=各種公開情報および本紀行既出記事。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=金融庁 金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」資料『協同組織金融機関の「地区」のあり方』(2008年6月20日・神吉正三)。

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