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山口県信用組合——小さな信組は、不良債権8.68%を抱えて誰に貸すか

預貸率76.2%、不良債権比率8.68%、預金268億円。山陽小野田市に本店を置く山口県信用組合。小規模な信組が高い不良債権を抱えながら預金の8割近くを貸す数字を、小さな信組の役割から読みます。

ニホン銀行紀行 ・ 山口県

山口県山陽小野田市に本店を置く山口県信用組合は、県西部を中心に営業する信用組合です。預金268億円、貸出金204億円、店舗4。本紀行に登場する金融機関のなかでも、とりわけ小規模な信用組合です。店舗はわずか4。地域の限られた範囲に根ざして営む、小さな協同組織金融機関です。

本拠地の山陽小野田市は、山口県の西部、瀬戸内海に面した市です。セメントや化学などの工業が立地する一方、周辺には農業や中小の商工業が広がる地域です。山口県西部には、下関や宇部といった都市があり、地方銀行や信用金庫も営業しています。そのなかで、山口県信用組合のような小さな信組は、より小規模で、ほかの金融機関が手を伸ばしにくい事業者や住民に向き合う役割を担ってきました。この、小さな信組という立場が、その数字を読む鍵になります。

この信用組合の数字で目を引くのは、預貸率76.2%という高さと、不良債権比率8.68%という高さの組み合わせです。集めた預金の8割近くを貸しながら、焦げ付きも高い。この二つを、小さな信組の役割から読みます。

まず、数字を並べる

山口県信用組合の預金は268億円、貸出金は204億円、預貸率76.2%。自己資本比率は10.31%、不良債権比率は8.68%と高め。中小企業等向けの貸出先は1千件を超えます。

山口県信用組合(令和7年3月末)
預金268億円
貸出金204億円
預貸率76.2%
自己資本比率10.31%
不良債権比率8.68%
中小企業等向け貸出先1,377件
店舗4店

預貸76.2%・不良債権8.68%。小さな信組が抱える数字を読む。

76.2%と8.68%を、小さな信組の役割から読む

預貸率76.2%は、信用組合のなかでは高い水準です。本紀行で見てきた信金・信組の多くが、預貸率3割から5割ほどで運用に頼るなか、山口県信用組合は集めた預金の8割近くを貸出に回している。規模は小さいが、貸すことには積極的な信組です。そこに、不良債権比率8.68%という高い数字が重なります。

山口県信用組合が貸す相手は、地元の小規模・零細な事業者や住民が中心です。小さな商店、零細な事業者、ほかの金融機関が規模や条件の面で貸しにくい先に、距離の近さを生かして向き合ってきたと考えられます。こうした小規模・零細な借り手は、景気の変動や担い手の高齢化といった影響を受けやすく、信用力の面でも余裕が小さい。そうした相手に積極的に貸せば、相対的にリスクの高い先も引き受けることになり、不良債権比率は高まりやすくなります。預貸率76.2%という積極性と、不良債権比率8.68%という高さは、ともに「小さな借り手に近い距離で貸す」小規模信組の姿の、表と裏と読めます。

自己資本比率10.31%は、これだけの不良債権を抱えながらも、協同組織としての健全性の基準は保っている水準です。規模が小さいぶん、一つひとつの貸出先の事情が数字に響きやすく、不良債権比率も振れやすい。もちろん、これらの比率には個別の大口先の事情も大きく絡むため、断定はできません。ただ、ほかの金融機関が手を伸ばしにくい小さな借り手に向き合う信組であれば、その焦げ付き比率は高めに出やすい、とまでは言えると思われます。小さな信組という立場を抜きに、この数字は読めません。

山口県信用組合が示すのは、規模は小さくとも、地元の小さな借り手に近い距離で貸す信組の姿です。店舗4、預金268億円。それでも預金の8割近くを貸す。高い不良債権比率は、ほかでは借りにくい小規模・零細な事業者に向き合ってきたことの裏返しと読めます。

信用組合という、より小さく地域に密着した形

山口県信用組合は、信用金庫ではなく信用組合です。信用組合は、中小企業等協同組合法などにもとづく協同組織で、組合員のための相互扶助を目的とします。信用金庫と比べても、より小規模で、地域や組合員に密着した存在であることが多い。地元の小さな事業者や住民に、近い距離で向き合う——それが、この信組の役割です。店舗4という小ささは、裏を返せば、限られた範囲に深く根ざしているということでもあります。

同じ山口で、地銀と並べてみる

本紀行には、同じ山口県の西京銀行も登場しています。西京銀行は、周南市を本拠とする第二地方銀行でした。県全域を相手にする地銀・西京銀行と、県西部の限られた範囲で小さな借り手に貸す山口県信用組合(預金268億円・店舗4)とを並べると、同じ山口でも、県を相手にする地銀と、地元の零細に密着する小さな信組とで、規模も役割も大きく異なることが見えてきます。地銀と小さな信組——両者を並べると、地域金融の幅が見えてきます。山口の地銀の姿は、西京銀行の記事もあわせてどうぞ。

借り手にとっての意味

小さな信用組合は、ほかの金融機関が規模や条件の面で貸しにくい小規模・零細な事業者にとって、身近な相談相手になりえます。距離の近さを生かして、地元の小さな借り手に向き合う姿勢があるぶん、頼りになる場面があります。一方で、高い不良債権比率は、貸してきた相手が信用力の面で余裕の小さい先を含むことの裏返しでもあります。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、小さな信組の役割を映す

預貸率76.2%という積極性と、不良債権比率8.68%という高さは、規模は小さくとも、地元の小さな借り手に近い距離で貸してきた信組の姿を映しています。大きな規模で広く貸す金融機関もあれば、山口県信用組合のように小さな範囲で零細な借り手に向き合う信組もある。数字は、その金融機関がどんな規模で、誰に向き合ってきたかを語ります。山口県信用組合の数字は、県西部の小さな借り手を支える信組の、いまの記録です。

各地の金融機関には、それぞれの規模と役割の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。山口県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、山口県の地域金融機関のページもどうぞ。

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
山口県信用組合の地盤(山陽小野田市本店、山口県西部を中心に営業する小規模な信用組合であること)に関する記述=山口県信用組合および各種公開情報にもとづく。
山陽小野田市・山口県西部の地理と産業(瀬戸内海に面し、セメント・化学等の工業、農業・中小商工業)に関する記述=各種公開情報。
西京銀行の位置づけ=各種公開情報および本紀行既出記事。
信用組合の制度(中小企業等協同組合法等にもとづく協同組織であること)に関する記述=関係法令および金融庁等の公開資料にもとづく一般的な説明。

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