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甲府信用金庫——盆地の信金は、なぜ預金の4割しか貸さないのか

預貸率42.6%、預金5,389億円、自己資本比率19.05%。甲府市に本店を置く甲府信用金庫。甲府盆地に根ざす「こうしん」が、なぜ預金の4割しか貸さず、厚い自己資本を持つのか。その数字と歴史を読む。

ニホン銀行紀行 ・ 山梨県

山梨県の県都・甲府市に本店を置く甲府信用金庫は、地元で「こうしん」と呼ばれる信用金庫だ。預金5,389億円、店舗21。甲府市を中心に、甲府盆地の一帯を地盤としている。山梨県では有数の規模を持つ信金だ。

本拠の甲府は、四方を山に囲まれた甲府盆地の中心都市だ。武田信玄ゆかりの城下町として知られ、いまも山梨県の行政・商業の中心を担う。盆地に広がるのは、ぶどうや桃をはじめとする果樹栽培で名高い農業地帯であり、ワインや宝飾(甲府は水晶細工を起源とするジュエリーの産地)といった地場産業も持つ。一方で、東京に近く、人口減少も進む地方都市でもある。甲府信用金庫は、こうした盆地の農と地場産業、そして地方都市の暮らしに根ざしてきた信金だ。

この信金の数字でまず目を引くのは、預貸率42.6%という低さだ。預金の4割ほどしか貸出に回していない。そして同時に、自己資本比率は19.05%と厚い。なぜ、盆地の信金はこれほど貸さず、資本を厚く積むのか。同じ甲府を地盤とする信金とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。甲府信用金庫の預金は5,389億円、貸出金は2,296億円。預貸率は42.6%で、預金の4割ほどしか貸出に回していない。自己資本比率は19.05%と厚く、不良債権比率は4.82%。店舗数は21、中小企業等への貸出残高は1,809億円。

同じ甲府市に本店を置く山梨信用金庫(預貸率39.1%・自己資本比率13.91%)と比べると、両者の預貸率はともに4割前後で低い。甲府盆地の信金は、ともに預金の4割ほどしか貸さない。これは偶然ではなく、盆地という限られた経済圏で、貸出先となる事業者や資金需要が乏しいことの表れだと読める。甲府信用金庫の自己資本比率19.05%という厚さは、山梨信用金庫(13.91%)を上回る。貸出が少ない分、運用などで積み上げた利益が、厚い自己資本となって蓄積されてきたと読める。

山梨県・甲府の二つの信用金庫(令和7年3月末)
 甲府信用金庫山梨信用金庫
本店甲府市甲府市
預金5,389億円4,806億円
預貸率42.6%39.1%
自己資本比率19.05%13.91%
不良債権比率4.82%5.29%

ともに甲府を地盤とする二つの信金。預貸率はともに4割前後で低い。甲府信用金庫は自己資本がより厚く、盆地の限られた経済圏で貸出先が乏しい事情が、両者に共通して数字に表れている。

甲府盆地とともに——甲府信用金庫の歩み

甲府信用金庫は、甲府盆地の商人や事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。城下町・甲府の商店や事業者、果樹農家、宝飾やワインの地場産業に携わる人々、そして地域の住民——こうした人々が預金を預け、必要なときに資金を借りる。甲府信用金庫は、地域の暮らしと商いに寄り添いながら、山梨県有数の規模へと成長してきた。

甲府盆地という土地は、信用金庫にとって貸出を伸ばしやすい地盤とは言いにくい。四方を山に囲まれ、人口は多くなく、人口減少も進む。果樹農業や宝飾・ワインといった地場産業はあるが、大きな製造業の集積はない。預金は地域から堅実に集まるが、それを貸し切るだけの需要が、盆地の限られた経済圏には乏しい——この構図が、42.6%という低い預貸率の背景にあると読める。集めた預金の多くは、有価証券の運用などに向かい、そこで積み上がった利益が、厚い自己資本となってきたと読める。

42.6%を、盆地の信金から読む

甲府信用金庫の預貸率42.6%という低さは、山に囲まれた盆地の限られた経済圏で、貸出先となる事業者や資金需要が乏しいことの表れだと読める。果樹農業や地場産業はあるが、大きな製造業の集積はなく、人口減少も進む。預金は集まっても、それを地元で貸し切れず、預貸率は4割台にとどまる。

自己資本比率19.05%という厚さは、貸出を大きく伸ばせない地域で、長く在り続けるための備えだと読める。貸出が少ない分、リスクを抑えた運用で着実に利益を積み、それを資本として厚く蓄えてきた。不良債権比率4.82%というやや高めの数字は、限られた貸出先の事情を映すが、厚い自己資本がそれを吸収する。無理に貸して規模を追うのでなく、できる範囲で堅実に貸し、厚い資本で守りを固める——それが、甲府信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

甲府の経済とともに

甲府信用金庫の数字は、四方を山に囲まれ、果樹と地場産業で営まれる甲府盆地という土地と、その限られた経済圏のなかで運用に頼り守りを固める信金の歩みの、両方を映している。預金は堅実に集まるが、貸出先は乏しく、預金の4割ほどしか貸せない。だからこそ、厚い自己資本で守りを固める。盆地の経済が、42.6%という低い預貸率と、19.05%という厚い自己資本に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。甲府信用金庫を見れば、山に囲まれた甲府盆地の経済と、そこで守りを固める信金の姿が浮かぶ。山梨県の地銀は、県トップの山梨中央銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。山梨県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、山梨県の地域金融機関のページへ。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、相対的に融資先を求めている可能性をうかがう一つの目安になる。ただし、盆地など貸出先が乏しい土地では、預金が集まっても預貸率が低くとどまり、運用で積んだ利益が厚い自己資本となることがある。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。山梨信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(甲府市に本店を置き、甲府盆地を地盤とする信用金庫であること、甲府が武田信玄ゆかりの城下町で山梨県の県都であること、甲府盆地が果樹〔ぶどう・桃〕栽培やワイン・宝飾の産地であること)に関する記述=甲府信用金庫および各種公開情報にもとづく。
甲府・山梨の地理・産業(甲府盆地、城下町、果樹栽培、ワイン、宝飾、人口減少)に関する記述=各種公開情報。

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