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愛知信用金庫——名古屋の商工のまちで、あいしんは何に貸すか

預貸率49.0%、自己資本比率14.68%、不良債権比率3.44%。名古屋市に本店を置く愛知信用金庫「あいしん」。愛知商工信用組合を源流とし、名古屋の商工業に根ざす信金の数字を読みます。

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愛知県名古屋市に本店を置く愛知信用金庫は、預金2,838億円、貸出金1,389億円、店舗20。「あいしん」の愛称で、名古屋市を中心に、その周辺の地域を地盤とする信用金庫です。

本店のある名古屋市は、人口約230万を抱える中部地方最大の都市であり、日本有数の経済圏です。自動車産業を頂点とするものづくりの集積を背景に、無数の中小事業者がその裾野を支える商工業のまちです。製造業の関連だけでなく、卸・小売、サービス、建設など、多種多様な事業者がひしめいています。この、中小の商工業者が密集する大都市という土地柄が、愛知信用金庫の数字を読む鍵になります。

この信用金庫の成り立ちは、1951年に設立された「愛知商工信用組合」にさかのぼります。翌1952年に信用金庫法に基づき「愛知信用金庫」となりました。「商工信用組合」を源流とする歩みは、名古屋の商工業者とともに育ってきたことを映しています。1975年には市外の豊明市に進出するなど、地盤を広げてきました。数字の面で目を引くのは、預貸率49.0%という水準と、自己資本比率14.68%という相応の厚みの組み合わせです。

まず、数字を並べる

愛知信用金庫の預金は2,838億円、貸出金は1,389億円、預貸率49.0%。自己資本比率は14.68%、不良債権比率は3.44%。中小企業等向けの貸出先は6,748件です。

愛知信用金庫(令和7年3月末)
預金2,838億円
貸出金1,389億円
預貸率49.0%
自己資本比率14.68%
不良債権比率3.44%
中小企業等向け貸出先6,748件
店舗20店

預貸率49.0%・自己資本14.68%。名古屋の商工業に根ざす信金の数字を読む。

49.0%と14.68%を、名古屋の商工から読む

預貸率49.0%は、信用金庫としては中庸からやや高めの水準です。本紀行で見てきた、預貸率が3割台にとどまる地方の信金と比べれば、しっかり貸している方に入ります。自己資本比率14.68%という相応の厚みと、不良債権比率3.44%という中庸の水準とあわせて読むと、大都市の商工業に資金を回しつつ、堅実に守りも固める信金の姿が浮かびます。

愛知信用金庫が貸す相手は、名古屋を中心とする商工業の中小事業者です。ものづくりの裾野を支える町工場、卸・小売の商業、サービス業、建設業が、その融資先に含まれると考えられます。自動車産業を頂点とする厚い産業集積のなかで、中小事業者の資金需要は一定程度あり、預貸率49.0%という、信金として中庸を超える水準を支えていると読めます。6,748件という中小企業等向けの貸出先は、大都市の商工業に資金を届けてきたこの信金の地盤を示しています。

もちろん、これらの比率には個別の事情や経営方針も絡むため断定はできませんが、商工業者がひしめく名古屋という大都市を抜きに、この信金の数字は読めません。相応の自己資本は、よく貸しながらも堅実に守りを固めてきたことの表れと読めます。

愛知信用金庫が示すのは、大都市・名古屋の商工業に資金を回しつつ、守りも固める信金の姿です。ものづくりの裾野を支える中小に貸し、中庸を超える預貸率を保ちながら、相応の自己資本で堅実さも保つ。その数字は、商工のまちに根ざす信金の輪郭を映しています。

なぜ、こうなったのか——制度と地域

愛知信用金庫が地元に貸す信金であることの背景には、信用金庫という制度があります。信用金庫が融資できる相手は原則として「会員」に限られ、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人、と定められています。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれません。

この制度は、名古屋のような土地でこそ生きます。会員資格が地区内の中小事業者に絞られるからこそ、信金は大企業ではなく、ものづくりの裾野を支える町工場や、まちの商店に資金を向けます。「商工信用組合」を源流とする愛知信用金庫にとって、名古屋の商工業者に資金を届けることは、制度の枠であると同時に、成り立ちそのものでもあります。中庸を超える預貸率は、貸し先に事欠かない大都市の地盤と、この信金の出自の両方を映していると読めます。

同じ県の、金融機関と並べてみる

同じ愛知県を代表する地銀として、名古屋銀行(預貸率83.5%)も本紀行に登場しています。県全域・大都市圏を相手にする名古屋銀行(預貸率83.5%)と、名古屋の中小商工業に密着するこの愛知信用金庫(預貸率49.0%)とを並べると、同じ名古屋でも、大都市圏を広く相手にする地銀と、中小に密着する信金とで、貸す範囲も性格も異なることが見えてきます。地銀の姿は、名古屋銀行の記事もあわせてどうぞ。

同じ愛知県の三河には、岡崎信用金庫があります。預貸率49.2%の岡崎信用金庫と、預貸率49.0%の愛知信用金庫は、近い水準で地元の商工業に貸す信金どうしです。名古屋の信金と三河の信金、それぞれの土地に根ざす姿は、岡崎信用金庫の記事もあわせてどうぞ。

借り手にとっての意味

地元に根ざす信用金庫は、地域の中小事業者にとって、身近な相談相手です。とりわけ、ものづくりの裾野や商業を担う名古屋の事業者にとって、土地の事情を知る信金の存在は心強いものです。中庸を超える預貸率は、しっかり貸す姿勢の表れとも読めますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、根を張る土地を映す

預貸率49.0%という水準と、自己資本比率14.68%という相応の厚みは、商工業者がひしめく大都市・名古屋に根を張り、ものづくりの裾野に資金を届けてきた信金の姿を映しています。数字は、その金融機関がどんな土地で、誰に向き合ってきたかを語ります。愛知信用金庫の数字は、商工のまち・名古屋に根ざす「あいしん」の、いまの記録です。

各地の金融機関には、それぞれの土地と産業の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。愛知県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、愛知県の地域金融機関のページもどうぞ。

愛知信用金庫と融資・保証のはなし

愛知信用金庫は、地域に根ざした信用金庫です。借りる・備えるのどちらを考えるにしても、土台になるのは日頃の取引と信用。口座づくりから保証制度まで、どんな立場でも知っておきたい融資・銀行取引の基礎をまとめました。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、相対的に融資先を求めている可能性をうかがう一つの目安になる。ただし、有価証券運用を主体とする金融機関は、預貸率が低くても融資に積極的とは限らない。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
愛知信用金庫の沿革(1951年に愛知商工信用組合として設立、1952年に信用金庫法に基づき愛知信用金庫へ改組、1975年に豊明市へ進出)、「あいしん」の愛称、本店所在地に関する記述=愛知信用金庫公開情報・各種公開情報にもとづく。
名古屋市の人口・自動車産業を頂点とする商工業の集積に関する記述=各種公開情報。
名古屋銀行・岡崎信用金庫の数値=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=金融庁 金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」資料『協同組織金融機関の「地区」のあり方』(2008年6月20日・神吉正三)。

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