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碧海信用金庫——自動車のまちで、三河の大型信金は何に貸すか

預貸率52.5%、預金2.3兆円、自己資本比率15.5%。安城市に本店を置く碧海信用金庫。トヨタ系企業が集まる西三河に根ざし、厚い自己資本を持つ大型信用金庫「へきしん」。その数字と歴史を読む。

ニホン銀行紀行 ・ 愛知県

愛知県安城市に本店を置く碧海信用金庫は、地元で「へきしん」と呼ばれる信用金庫だ。預金2兆3,190億円、店舗78。信用金庫のなかでも全国屈指の規模を持つ大型信金である。安城・刈谷・知立・碧南といった西三河の都市を中心に、店舗網を張り巡らせている。

本拠の西三河は、日本の自動車産業の心臓部だ。隣接する豊田市にトヨタ自動車の本拠があり、その周辺には、デンソーやアイシンをはじめとする大手部品メーカー、そしてそれらを支える無数の中小の協力会社が集まる。刈谷・安城・碧南——いずれも、自動車部品の製造を軸に発展してきた、ものづくりの都市である。「へきしん」の名は、この地域の旧郡名「碧海郡」に由来する。かつては「日本デンマーク」と呼ばれた農業先進地でもあったが、いまは自動車産業の城下町としての性格が強い。その西三河に、碧海信用金庫は深く根を張っている。

この信金の数字には、二つの特徴がある。預貸率52.5%という中位の貸出と、自己資本比率15.5%という厚さだ。自動車産業の集まる豊かな土地で、なぜこの組み合わせになるのか。数字とともに読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。碧海信用金庫の預金は2兆3,190億円、貸出金は1兆2,181億円。預貸率は52.5%で、預金の半分強を貸出に回している。自己資本比率は15.5%と厚く、不良債権比率は2.95%と低めだ。店舗数は78、中小企業等への貸出残高は1兆1,089億円にのぼる。

目を引くのは、自己資本比率15.5%という厚さと、不良債権比率2.95%という低さだ。同じ西三河で総資産4兆円を超える中部最大級の信金・岡崎信用金庫(預貸率49.2%・自己資本比率11.16%)と比べると、碧海信用金庫は規模ではやや小さいが、自己資本はより厚い。低い焦げ付きと厚い資本は、豊かな自動車産業を地盤とし、その取引先に堅実に貸してきたことの裏返しだと読める。預貸率52.5%は、信用金庫として中位だが、豊かな地盤を持つ割には、貸出が突出して高いわけではない。

西三河の二つの大型信用金庫(令和7年3月末)
 碧海信用金庫岡崎信用金庫
本店安城市岡崎市
預金23,190億円36,259億円
預貸率52.5%49.2%
自己資本比率15.5%11.16%
不良債権比率2.95%2.21%

同じ西三河に立つ二つの大型信金。規模では中部最大級の岡崎信用金庫が上回るが、碧海信用金庫はより厚い自己資本を持つ。いずれも焦げ付きは低く、豊かな自動車産業の地盤を映している。

農業先進地から、自動車の城下町へ

碧海信用金庫が根ざす西三河の碧海郡一帯は、もともと矢作川の水を引いた豊かな農業地帯だった。大正から昭和初期にかけては、多角的な農業経営で知られ、その先進性から「日本デンマーク」と呼ばれたこともある。碧海信用金庫は、こうした農業と商業の盛んな土地で、地元の事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。

戦後、この地域の姿は大きく変わる。隣接する豊田市のトヨタ自動車の発展とともに、西三河一帯が自動車産業の一大集積地となったのだ。部品メーカーや協力会社が次々と立地し、農業の町は、ものづくりの城下町へと変貌した。碧海信用金庫は、合併を重ねて規模を広げながら、自動車産業を支える中小企業に資金を供給し続けてきた。農業の土地から自動車の土地へ——地域の産業の変化とともに、貸す相手も変わってきた歴史が、この信金にはある。

厚い自己資本を、自動車の地から読む

碧海信用金庫の自己資本比率15.5%という厚さと、不良債権比率2.95%という低さは、豊かな自動車産業を地盤とすることの表れだと読める。トヨタを頂点とする自動車産業のすそ野には、安定した受注を持つ部品メーカーや協力会社が数多くある。そうした取引先に堅実に貸してきたからこそ、焦げ付きは低く抑えられ、資本も厚く積み上がってきた。豊かな地盤が、健全な数字を支えている。

一方で、預貸率52.5%が示すのは、豊かな土地ゆえに、地元の企業や個人にも余裕があるという側面だ。資金を必要とする以上に、預金として集まってくる。その結果、集めた預金のすべてを貸出に回しきるわけではなく、半分強にとどまる。これは融資に消極的というより、地盤の豊かさの裏返しでもある。いま、自動車産業は電動化という大きな転換期にある。部品の構成が変わり、すそ野の中小企業も変化を迫られている。厚い自己資本は、その転換を支え続けるための備えにもなると読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

西三河の経済とともに

碧海信用金庫の数字は、「日本デンマーク」と呼ばれた農業先進地から自動車の城下町へと変わった西三河という土地と、その変化に寄り添って貸し続けてきた大型信金の歩みの、両方を映している。豊かな自動車産業を地盤に、合併を重ねて全国屈指の規模に育ち、低い焦げ付きと厚い資本を保ってきた。地盤の豊かさと堅実な経営が、15.5%という厚い自己資本に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。碧海信用金庫を見れば、自動車産業に沸く西三河と、その豊かな地盤に堅実に貸す大型信金の姿が浮かぶ。同じ西三河の、中部最大級の信金は、岡崎信用金庫の記事もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。愛知県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、愛知県の地域金融機関のページへ。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、相対的に融資先を求めている可能性をうかがう一つの目安になる。ただし、地盤が豊かで預金が集まりやすい土地では、貸出に積極的でも預貸率が中位にとどまることがある。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。岡崎信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(安城市に本店を置く信用金庫であること、行名が旧碧海郡に由来すること、合併を重ねて全国屈指の規模となったこと、西三河がトヨタ自動車とその部品・協力会社の集積地であること、かつて農業先進地として「日本デンマーク」と呼ばれたこと)に関する記述=碧海信用金庫および各種公開情報にもとづく。
西三河の地理・産業(安城・刈谷・知立・碧南、矢作川、自動車産業の集積、電動化の動き)に関する記述=各種公開情報。

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