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福井信用金庫——県内最大の信金は、なぜ焦げ付きが高めなのか

預貸率46.5%、不良債権比率5.29%、自己資本比率16.34%。福井県内最大規模の信用金庫が抱える、やや高めの焦げ付き。その数字を、繊維と地場産業という土地の事情から読み解く。

ニホン銀行紀行 ・ 福井県

福井県には、トップバンクである福井銀行のほかに、地域に深く根を張る信用金庫がいくつもある。なかでも預金規模で県内最大級なのが、福井信用金庫——通称「ふくしん」だ。福井市に本店を置き、繊維やものづくりの土地に密着して、地元の小さな事業者に貸してきた。

その福井信用金庫の数字を見ると、一つ目を引くものがある。不良債権比率5.29%。信用金庫としては、やや高めの水準だ。なぜこの数字になるのか。それを、土地の産業から読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。福井信用金庫の預金は8,358億円、貸出金は3,885億円。預貸率は46.5%で、預金の半分弱を貸出に回している。自己資本比率は16.34%と厚く、健全性そのものに不安があるわけではない。中小企業等への貸出先は約2万4千件にのぼる。県内の信用金庫としては、群を抜く規模である。

注目したいのは、預貸率46.5%という控えめな数字と、不良債権比率5.29%というやや高めの数字が、同居している点だ。たくさん貸しているわけではないのに、焦げ付きの比率は低くない。ここに、この信用金庫が向き合っている土地の現実がある。

繊維の浮き沈みを抱えて

福井県は、絹織物から合成繊維へと続く繊維産業の土地だ。鯖江の眼鏡フレーム、各地の機械金属など、ものづくりの中小事業者が数多く根を張っている。こうした地場産業は、技術に裏打ちされた強さを持つ一方で、世界の需要や流行、円相場といった外の要因に大きく揺さぶられる。好況のときもあれば、急な不況に見舞われることもある。

信用金庫は、その土地の中小・零細事業者に寄り添って貸す金融機関だ。大企業ではなく、地域の小さな事業者を会員として支える。だからこそ、地場産業が波にもまれれば、その影響をまっすぐに受ける。やや高めの不良債権比率は、見方を変えれば、浮き沈みのある地場産業から逃げずに貸し続けてきたことの裏返しでもある。安全な相手だけを選んで貸していれば、焦げ付きの比率はもっと低く抑えられただろう。

もちろん、焦げ付きが多いことを手放しで良しとはできない。だが、信用金庫という組織の成り立ちを思えば、地域の事業者と運命をともにするのは、その本分でもある。厚い自己資本(16.34%)は、そうしたリスクを抱えながらも経営の健全性を保つための備えと読める。

低い預貸率を、どう読むか

預貸率46.5%という数字は、信用金庫としては中庸だ。これをもって「貸し渋っている」と単純には言えない。地元の事業者が必要とする以上に無理に貸し込めば、それこそ焦げ付きを増やしかねない。借り手の体力に見合った範囲で貸し、残りは安全な運用に回す——その慎重さの表れとも読める。

大切なのは、一つの数字だけを取り出して善し悪しを断じないことだ。預貸率46.5%、不良債権比率5.29%、自己資本比率16.34%。この三つを並べて初めて、「地場産業のリスクを抱えながら、厚い資本で支えつつ、慎重に貸している信用金庫」という像が立ち上がる。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

土地とともにある信金

福井信用金庫の数字は、繊維とものづくりの土地が抱える浮き沈みを、そのまま映している。県内最大規模の信用金庫として、地場の小さな事業者を支え続けてきた歩みが、やや高めの焦げ付きという形で表れている。それは弱さというより、地域と運命をともにする金融機関の姿だ。

福井県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、福井県の地域金融機関のページへ。県のトップバンクである福井銀行とあわせて読むと、同じ土地の金融機関の役割の違いが見えてくる。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、相対的に融資先を求めている可能性をうかがう一つの目安になる。ただし、有価証券運用を主体とする金融機関は、預貸率が低くても融資に積極的とは限らない。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
本店所在地=福井信用金庫公開情報。
福井県の産業(繊維・眼鏡・機械金属)に関する記述=各種公開情報。

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