福井銀行——繊維のまちが生んだ銀行は、いま県の金融を束ねる
預貸率70.4%、自己資本比率8.10%。繊維業者たちが資金を出し合って生まれた福井県のトップバンクが、いま県内の金融を一つに束ねつつある。「ふくぎん」の歩みと数字を読む。
福井県は、繊維のまちだ。眼鏡フレームの国内生産で知られる鯖江、絹織物や合成繊維の産地として栄えた県都・福井。日本海に面したこの県の経済は、ものづくりの細やかな手仕事に支えられてきた。そんな土地で、地元の事業者たちが自ら資金を出し合って一つの銀行を立ち上げた。それが、福井銀行のはじまりである。
愛称は「ふくぎん」。福井県を地盤とする県内最大の地方銀行であり、近年は隣の第二地方銀行・福邦銀行を傘下に収め、県内の金融機関を一つのグループに束ねつつある。今回は、この地域の盟主とも言える銀行の数字と歩みを読みにいく。
預貸率70.4%。預金の7割ほどを貸出に回している。地方銀行としては標準的な水準で、極端に貸し込むでも、運用に偏るでもない、堅実なバランスだ。自己資本比率は8.10%、不良債権比率は1.39%と、焦げ付きも低く抑えられている。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。福井銀行の預金は2兆9,012億円、貸出金は2兆430億円。店舗数は98。中小企業等への貸出先は約6万9千件にのぼる。地方銀行としては中規模だが、人口約75万人の福井県においては、圧倒的な存在感を持つトップバンクである。
2025年3月期の連結当期純利益は71億6千万円で、前年から34億円あまり増えている。傘下の福邦銀行とともに、グループ一体で地域を支える体制を強めている。
同じ福井県内の他の金融機関と並べると、規模の違いがはっきりする。
| 福井銀行 | 福邦銀行 | 福井信用金庫 | |
|---|---|---|---|
| 種別 | 地方銀行 | 第二地銀 | 信用金庫 |
| 預金 | 29,012億円 | 4,187億円 | 8,358億円 |
| 貸出金 | 20,430億円 | 4,052億円 | 3,885億円 |
| 預貸率 | 70.4% | 96.8% | 46.5% |
福井銀行は規模で県内を大きく引き離す。一方、傘下の福邦銀行は預貸率96.8%と、預金をほぼ貸し切る積極的な姿。グループのなかで役割が違う。
繊維とともに生まれた銀行
福井銀行の歴史は、1899年(明治32年)にさかのぼる。地元で繊維業を営む者たちが、福井県の繊維産業をさらに発展させようと、それぞれ資金を出し合って設立した銀行だった。「地域産業の助成こそ使命」——創立の精神は、地元のものづくりを金融で支えることにあった。
福井は古くから絹織物の産地であり、明治以降は羽二重(はぶたえ)と呼ばれる薄絹の輸出で栄えた。のちには合成繊維の産地としても発展する。繊維は浮き沈みの激しい産業だ。世界の需要や流行に左右され、好不況の波が大きい。そうした産業を地元で支えるには、土地に根ざした金融機関の存在が欠かせなかった。福井銀行は、設立当初からその役割を担ってきた。
その後、福井銀行は周辺の銀行を次々と合併・買収しながら規模を広げ、福井県を代表する地方銀行へと成長していった。県内の金融の中心を、長く担い続けてきた銀行である。
福邦銀行を傘下に収める
近年の福井銀行を語るうえで欠かせないのが、福邦銀行との関係だ。福邦銀行は同じ福井市に本店を置く第二地方銀行で、福井銀行が子会社化し、いまはグループの一員となっている。
この二行は、同じ県を地盤としながら性格が異なる。福井銀行が県全体を見渡すトップバンクであるのに対し、福邦銀行は預貸率96.8%という数字が示すように、預金をほぼ貸し切る、貸出に振り切った銀行だ。規模の小さい第二地銀が、限られた資金を地元の中小事業者に積極的に振り向けてきた姿が、その数字に表れている。
人口減少が進む地方では、同じ県内で金融機関が競い合うより、力を合わせて地域を支えるほうが理にかなう場面が増えている。福井銀行が福邦銀行を傘下に収めたことは、県内の金融を一つに束ね、限られた経営資源を地域全体のために使おうとする動きと読める。一つの県の金融が、徐々にまとまりつつある。その中心に、福井銀行がいる。
地域の盟主として
福井銀行の数字は、派手さこそないが、地域の盟主としての安定を物語っている。預貸率70.4%という堅実なバランス、低く抑えられた焦げ付き、そして県内随一の規模。繊維業者が資金を出し合って始めたこの銀行は、一世紀を超えて、いまも福井の経済の背骨であり続けている。
銀行の数字は、その土地の経済を映す鏡だ。福井銀行を見れば、ものづくりに支えられた日本海側の県の姿が浮かぶ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。福井県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、福井県の地域金融機関のページへ。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
当期純利益=福井銀行2025年3月期決算短信・決算説明資料(連結)。
沿革(1899年設立・繊維業者による創立・地域産業の助成)=福井銀行公開情報、各種公開情報。
福邦銀行の子会社化に関する記述=福井銀行・福邦銀行公開情報。
福井県の産業(繊維・羽二重)に関する記述=各種公開情報。