会津商工信用組合——城下町の信組は、誰に貸しているのか
不良債権比率12.94%、預貸率49.0%。会津二十三万石の城下町・会津若松に根ざす会津商工信用組合。全国でも高い不良債権比率を、会津清酒・会津漆器・観光という伝統産業と、豪雪・人口減という土地の事情から読む。
福島県会津若松市に本店を置く会津商工信用組合は、地元で「あいしん」とも呼ばれる、会津地方の信用組合だ。預金951億円、店舗13。会津盆地を中心に、地域の事業者に向き合ってきた金融機関である。
会津若松は、会津二十三万石と称された城下町だ。戦国時代の蒲生氏郷が礎を築いたと伝わる会津清酒・会津漆器・会津絵ろうそくといった伝統産業が今も息づき、鶴ヶ城を中心とした観光が街を支えている。会津の酒は全国新酒鑑評会で何度も上位を占める実力派ぞろいで、米どころでもある。一方、冬は深い雪に閉ざされる豪雪地帯であり、近年は人口減少も進む。この「伝統産業と観光の城下町であり、豪雪・過疎の地でもある」という土地柄が、会津商工信用組合の数字を読む鍵になる。
この信用組合の数字で目を引くのは、不良債権比率12.94%という、全国でも高い部類の水準だ。預貸率は49.0%で、集めた預金のおよそ半分を貸出に回している。この高い不良債権を、会津という土地から読むと、城下町の信組ならではの事情が見えてくる。
まず、数字を並べる
会津商工信用組合の預金は951億円、貸出金は466億円、預貸率49.0%。自己資本比率は9.59%、不良債権比率は12.94%。中小企業等向けの貸出先は5,481件にのぼる。
| 預金 | 951億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 466億円 |
| 預貸率 | 49.0% |
| 自己資本比率 | 9.59% |
| 不良債権比率 | 12.94% |
| 中小企業等向け貸出先 | 5,481件 |
| 店舗 | 13店 |
不良債権比率12.94%は全国でも高い。この数字を、会津の産業から読む。
12.94%を、城下町の産業から読む
不良債権比率12.94%は、全国の信用組合のなかでも高い部類に入る。だが、これを「危ない信組」と短絡すべきではない。会津という土地が抱える産業の事情から読むと、別の姿が見えてくる。
会津商工信用組合が貸す相手の多くは、地元の中小・小規模の事業者だ。そのなかには、会津清酒の酒蔵、会津漆器の工房、会津絵ろうそくの職人といった伝統産業の担い手、そして鶴ヶ城周辺の観光に支えられた宿泊・飲食・小売の事業者が、相当数含まれていると考えられる。伝統産業の担い手は、その多くが小規模で、需要の変化や後継者の確保という課題を抱えている。観光関連の事業も、景気や感染症の流行、そして雪の多寡に左右されやすい。こうした、変動や構造的な課題を抱える小さな事業者に貸す信用組合では、不良債権比率が高めに出やすいと考えられる。
加えて、会津は豪雪地帯であり、人口減少も進む。冬の経済活動の制約や、人口減による事業環境の縮小は、地元の事業者の経営に影を落とす。不良債権比率12.94%という数字には、伝統産業や観光という会津の産業構造に加えて、豪雪・過疎という土地の条件も影響していると思われる。もちろん、不良債権比率には個別の大口先の事情や引当の方針も絡むため、産業や土地の条件だけが原因とは断じられない。だが、城下町の小さな事業者に向き合う信組であることを抜きに、この数字は読めない。
信用組合という、より地域に密着した形
会津商工信用組合は、信用金庫ではなく信用組合だ。信用組合は、中小企業等協同組合法などにもとづく協同組織で、組合員のための相互扶助を目的とする。信用金庫と比べても、より小規模な事業者や地域に密着した存在であることが多い。会津という城下町で、伝統産業の小さな担い手や地域の事業者に、より近い距離で向き合ってきた——それが、この信組の役割だ。預貸率49.0%という、半分ほどを貸出に回す姿勢は、リスクを抱えながらも地元に資金を流してきたことの表れといえる。
借り手にとっての意味
地元に密着した信用組合は、地域の小さな事業者にとって身近な相談相手だ。とりわけ、伝統産業の工房や酒蔵、観光関連の小さな事業者にとって、会津の事情を知る信組の存在は心強い。一方で、不良債権比率の高さは、その地域の事業者が課題を抱えていることの裏返しでもある。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理している。
数字は、城下町の今を映す
不良債権比率12.94%という数字は、全国の物差しで見れば高い。だが、会津清酒や会津漆器という伝統産業に支えられ、豪雪と人口減という条件を抱えた城下町で、地元の小さな事業者に貸し続けてきた信組の数字としては、別の意味を帯びる。数字は、その金融機関がどんな土地で、誰に向き合ってきたかを映している。会津商工信用組合の数字は、会津二十三万石の城下町の今そのものだ。
各地の金融機関には、それぞれの土地の事情が刻まれた、それぞれの生き方がある。同じ会津若松には、低い焦げ付きと厚い自己資本を保つ会津信用金庫もある。同じ城下町を地盤としながら、信用組合である会津商工信用組合と、信用金庫である会津信用金庫とでは、数字がこれほど違う。これは優劣ではなく、種別や向き合う取引先の層の違いだ。会津のもうひとつの金融機関の姿は、会津信用金庫の記事もあわせてどうぞ。福島県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、福島県の地域金融機関のページもどうぞ。
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
会津の伝統産業(会津清酒・会津漆器・会津絵ろうそく)・観光(鶴ヶ城等)・米作り・豪雪・人口減少に関する記述=会津若松市・福島県・各種公開情報。
信用組合の制度(中小企業等協同組合法等にもとづく協同組織であること)に関する記述=関係法令および金融庁等の公開資料にもとづく一般的な説明。