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イオ信用組合——朝銀中部を源流とする信組は、何を抱えて貸すか

預貸率84.7%、自己資本比率5.79%、不良債権比率20.71%。岐阜市に本店を置くイオ信用組合。朝銀中部を源流とする在日朝鮮人系信用組合の数字を、出典を示して事実として読みます。

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ニホン銀行紀行 ・ 岐阜県

岐阜県岐阜市に本店を置くイオ信用組合は、預金1,261億円、貸出金1,069億円、店舗13。本部を名古屋市に置き、東海・北陸を地盤とする信用組合で、在日朝鮮人系の信用組合である「朝銀(ちょうぎん)」系の系譜に連なります。

「朝銀」は、戦後、在日朝鮮人系の事業者の相互扶助のために各地で設立された信用組合の系譜です。なお、ここでいう朝銀(朝鮮総連系)は、在日韓国人系(民団系)の「商銀」とは別系統です。イオ信用組合の起こりは、1954年に設立された大成信用組合にさかのぼり、1972年に朝銀岐阜信用組合へ改称しました。1999年に朝銀富山・石川・静岡・三重と合併して朝銀中部信用組合となり、2001年に経営破綻した朝銀愛知・福井の事業を引き継いで本部を名古屋へ移し、2004年にイオ信用組合へ改称しました。数字の面で目を引くのは、不良債権比率20.71%という高さです。

まず、数字を並べる

イオ信用組合の預金は1,261億円、貸出金は1,069億円、預貸率84.7%。自己資本比率は5.79%、不良債権比率は20.71%。中小企業等向けの貸出先は1,265件です。

イオ信用組合(令和7年3月末)
預金1,261億円
貸出金1,069億円
預貸率84.7%
自己資本比率5.79%
不良債権比率20.71%
中小企業等向け貸出先1,265件
店舗13店

不良債権20.71%。朝銀中部を源流とする信組の数字を読む。

20.71%を、事実として読む

不良債権比率20.71%は、本紀行で見てきた信用組合のなかでも際立って高い水準です。これは、楽観できる数字ではありません。背景として、朝銀系の信用組合では、バブル経済期に各地の朝銀から不動産関連などへの融資が行われ、その後に不良債権化した経緯が広く知られています。各地の朝銀を統合して生まれたイオ信用組合も、こうした歴史の影響を引き継いでいると読めます。自己資本比率5.79%という薄さもあわせ、財務の健全性という観点からは、慎重に見るべき数字です。

一方、預貸率84.7%は高く、集めた預金の八割超を組合員に貸し出しています。在日朝鮮人系のコミュニティという組合員基盤のもと、その資金需要に貸してきたことの表れと読めます。高い預貸率と高い不良債権という組み合わせは、よく貸す一方で、過去の融資の傷を抱えていることを示します。ここでは評価や論評を加えず、数字と経緯を事実として記すにとどめます。もちろん個別の事情も絡むため、断定はできません。

なぜ、こうなったのか——制度と地域

信用組合が融資できる相手は原則として「組合員」に限られます。組合員になれるのは、中小企業等協同組合法などにより、その信用組合の地区内に住所や事業所がある中小事業者・勤労者などで、員外への貸出には制限があります。事業者には規模の制限もあり、大企業は組合員になれません。

この制度のもとでは、貸す相手はおのずと組合員に絞られます。イオ信用組合にとって、その組合員基盤は、東海・北陸に広がる在日朝鮮人系のコミュニティを中心とする事業者や住民です。各地の朝銀系信組を統合し、破綻した信組の事業を引き継いで広域に地盤を広げてきた経緯を持ちます。高い預貸率は明確な組合員基盤に貸してきたことの、高い不良債権は過去の融資の傷を引き継いできたことの、それぞれ表れと読めます。

同じ県の、金融機関と並べてみる

同じ岐阜県を代表する地銀として、十六銀行(預貸率79.0%)も本紀行に登場しています。県全域を相手にする十六銀行と、東海・北陸のコミュニティを基盤とするイオ信用組合とでは、組合員基盤の性格が異なります。十六銀行の姿は、十六銀行の記事もあわせてどうぞ。

数字は、組合の成り立ちと歴史を映す

不良債権比率20.71%という高さと、預貸率84.7%という高さは、朝銀中部を源流とし、過去の融資の傷を抱えながら組合員に貸してきた信組の姿を、事実として映しています。イオ信用組合の数字は、朝銀系の系譜を引き継ぐ信組の、いまの記録です。預貸率の読み方は預貸率の読み方を、岐阜県の他の金融機関は岐阜県の地域金融機関のページもどうぞ。

イオ信用組合と融資・保証のはなし

イオ信用組合は、地域に根ざした信用組合です。借りる・備えるのどちらを考えるにしても、土台になるのは日頃の取引と信用。口座づくりから保証制度まで、どんな立場でも知っておきたい融資・銀行取引の基礎をまとめました。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、相対的に融資先を求めている可能性をうかがう一つの目安になる。ただし、有価証券運用を主体とする金融機関は、預貸率が低くても融資に積極的とは限らない。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
イオ信用組合の沿革(1954年に大成信用組合として設立、1972年に朝銀岐阜信用組合へ改称、1999年に朝銀富山・石川・静岡・三重と合併して朝銀中部信用組合となり、2001年に朝銀愛知・福井の事業を引き継いで本部を名古屋へ移し、2004年にイオ信用組合へ改称、朝銀系の信用組合であること)に関する記述=イオ信用組合公開情報・各種公開情報にもとづく。
朝銀系・商銀系の系譜、バブル期の朝銀系信用組合の不動産関連融資の不良債権化に関する記述=各種公開情報。
十六銀行の数値=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
信用組合の組合員・員外貸出に関する記述=中小企業等協同組合法ほか関係法令にもとづく一般的な整理。

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