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十六銀行——ナンバー銀行で日本最古、東海に広がる地銀の数字

預貸率79.0%、預金6.4兆円。岐阜市に本店を置く十六銀行。第十六国立銀行を源流とし、いまもナンバーを名に残す日本最古の銀行。岐阜から愛知へ広がった東海の広域地銀の数字を、ものづくりの土地から読みます。

ニホン銀行紀行 ・ 岐阜県

岐阜県岐阜市に本店を置く十六銀行は、預金6兆3,738億円、貸出金5兆327億円、店舗160。岐阜県を代表する地方銀行であり、隣の愛知県にも広く展開する、東海地方の広域地銀です。その名は、明治初期の国立銀行の番号に由来します。

本拠地を含む岐阜・愛知は、日本のものづくりを支える地域です。製造業の比率が高く、全国トップクラスの製造品出荷額を誇る。岐阜県内には、美濃和紙や関の刃物、東濃の美濃焼といった伝統産業から、自動車・航空機部品などの先端分野まで、幅広い産業が集積しています。この、ものづくりの土地に深く根を張り、さらに名古屋圏という大きな経済圏へ手を伸ばしてきたのが、十六銀行です。この地盤の広がりが、十六銀行の数字を読む鍵になります。

そして、この銀行の名には、特別な歴史が刻まれています。源流は、1877年(明治10年)、渋沢栄一率いる第一国立銀行の指導のもと、岐阜の商工業者を中心に設立された第十六国立銀行。当時の国立銀行が在郷士族の出資を中心としたのに対し、第十六国立銀行は平民の出資が9割を超えて設立された点も特徴でした。そしていま、十六銀行は、ナンバーをそのまま行名に残す銀行として、日本最古の存在です。かつて日本最古のナンバー銀行だった新潟の第四銀行が2021年に合併で名を変えたため、その座を継ぎました。150年近い歴史を名に刻んだ地銀の数字を読みます。

まず、数字を並べる

十六銀行の預金は6兆3,738億円、貸出金は5兆327億円、預貸率79.0%。自己資本比率は10.02%、不良債権比率は1.14%。中小企業等向けの貸出残高は3兆6,807億円にのぼります。

十六銀行(令和7年3月末)
預金6兆3,738億円
貸出金5兆327億円
預貸率79.0%
自己資本比率10.02%
不良債権比率1.14%
中小企業等向け貸出残高36,807億円
店舗160店

預金6.4兆円、預貸率79.0%。岐阜から愛知へ広がる東海の広域地銀です。

79.0%を、ものづくりの土地と広域地盤から読む

預貸率79.0%は、地方銀行のなかでもしっかり高い水準です。集めた預金の8割近くを貸出に回している。これだけ貸せるのは、貸す相手がそれだけ豊富にいるからにほかなりません。

その背景にあるのが、岐阜・愛知という、ものづくりの集積地です。十六銀行が貸す相手は、岐阜県内の製造業や商業はもちろん、1970年代から進出してきた愛知県の事業者にも広く及びます。名古屋圏は、東京圏・大阪圏に次ぐ経済規模を持つ大市場。岐阜という本拠地に加えて、この大きな経済圏に貸し先を広げてきたことが、預貸率79.0%という高さを支えていると読めます。本拠地だけでは限られる資金需要を、隣接する大市場で補う——この戦略は、東海地方の地銀に共通する生き残りの形です。不良債権比率1.14%と低く抑えられているのは、多様な業種・地域に貸し先が分散していることと、長年の取引で培った目利きの表れと考えられます。

十六銀行は、長い歴史のなかで合併も重ねてきました。明治・大正・昭和を通じて岐阜県内の多くの金融機関を吸収合併し、2012年には経営再建中だった岐阜銀行を合併しています。2021年には持株会社「十六フィナンシャルグループ」へ移行しました。合併で規模を広げ、愛知へ手を伸ばし、東海の広域地銀として地歩を固めてきた歩みが、いまの数字の土台にあります。もちろん、これらの比率には経営方針や景気も絡むため断定はできませんが、ものづくりの土地と名古屋圏という二つの地盤を抜きに、この数字は読めません。

十六銀行が示すのは、本拠地のものづくりと、隣接する大市場の両方を地盤とする広域地銀の地力です。岐阜の製造業に根ざしつつ、名古屋圏へ貸し先を広げる。預貸率79.0%という高さと低い焦げ付きは、二つの地盤に支えられた東海地銀の姿の表れと読めます。

ナンバー銀行という、歴史の重み

十六銀行を語るうえで欠かせないのが、その名に刻まれた歴史です。明治初期、全国に設立された国立銀行には、設立順に番号が振られました。その多くは、その後の合併や改称で番号を名から外していきましたが、十六銀行は今日まで「十六」を残しています。ナンバーをそのまま行名に冠する銀行として、いまや日本最古。2025年4月からは、10年ぶりに岐阜県の指定金融機関業務を担うことにもなりました。そして2027年には、創立150周年を迎えます。150年近く、岐阜の地で番号とともに歩んできたこと自体が、この銀行の地域における信用の厚みを物語っています。

同じ県の、信用金庫と並べてみる

同じ岐阜県には、東濃地方の美濃焼の産地に根ざす東濃信用金庫があります。東濃信用金庫は、和食器シェア6割の陶磁器産地で、預貸率45.6%・不良債権比率6.1%という、地場産業の構造変化を映す数字を持っていました。県全域から愛知まで広く貸す十六銀行(79.0%・1.14%)とは、対照的な数字です。県を代表し、ものづくりの集積地と大市場に広く貸す地銀と、一つの地場産業の盛衰を引き受ける信金。これは優劣ではなく、規模も地盤も役割も違う立ち位置の差です。同じ岐阜県でも、金融機関の立場が違えば、数字はこれだけ異なります。東濃の信金の姿は、東濃信用金庫の記事もあわせてどうぞ。

借り手にとっての意味

県を代表する広域地銀は、岐阜・愛知の事業者にとって、もっとも身近な選択肢のひとつです。150年近い歴史と、東海地方を覆う店舗網を持つ十六銀行は、相応の資金力と、地域を知り抜いた目を併せ持っています。預貸率の高さは積極的に貸す姿勢の表れとも読めますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、土地と歴史を映す

預貸率79.0%という高さと、不良債権比率1.14%という低さは、ものづくりの集積地・岐阜に根ざし、名古屋圏という大市場へ広がってきた広域地銀の姿を映しています。そしてその名には、ナンバー銀行で日本最古という、150年近い歴史が刻まれています。数字は、その金融機関がどんな土地で、どんな歴史を重ねてきたかを語ります。十六銀行の数字は、番号とともに東海を歩んできた地銀の、いまの記録です。

隣県・愛知には、業務提携の関係にある名古屋銀行(預貸率83.5%)があります。名古屋銀行は第二地銀ながら、地銀協加盟の地銀が本店を置かない愛知で、地銀的な役割を担ってきました。生粋の地銀である十六銀行と、地銀なき愛知で地銀的に振る舞う第二地銀・名古屋銀行とを並べると、同じ中部のものづくり地帯で、立場の異なる二つの銀行がどう中小企業に貸してきたかが見えてきます。地銀的な第二地銀の姿は、名古屋銀行の記事もあわせてどうぞ。

また、同じ岐阜県には、もう一つの有力地銀である大垣共立銀行(預貸率78.5%)があります。明治のナンバー銀行を源流とし歴史と伝統を重んじる十六銀行と、「脱・銀行」を掲げ革新を追う大垣共立銀行とは、同じ岐阜のものづくり地帯を地盤に、ほぼ同じ預貸率で貸しながら、伝統と革新という対照的な個性で県内の二大地銀を分け合っています。岐阜のもう一方の雄の姿は、大垣共立銀行の記事もあわせてどうぞ。

各地の金融機関には、それぞれの土地と歴史の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。岐阜県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、岐阜県の地域金融機関のページもどうぞ。

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
十六銀行の沿革(1877年に第十六国立銀行として設立、渋沢栄一率いる第一国立銀行の指導、平民出資が9割超、1896年に株式会社十六銀行へ改組、2012年に岐阜銀行を合併、2021年に十六フィナンシャルグループへ移行)、ナンバーを行名に残す銀行として日本最古であること、1970年代以降の愛知県進出、2025年4月からの岐阜県指定金融機関業務、2027年の創立150周年に関する記述=十六銀行・十六フィナンシャルグループおよび各種報道(日本経済新聞等)・公開情報にもとづく。
岐阜県・愛知県の産業(製造業の集積、美濃和紙・関の刃物・美濃焼等の伝統産業、自動車・航空機部品等)に関する記述=各種公開情報。
東濃信用金庫の数値=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。

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