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道南うみ街信用金庫——道南の海のまちで、信金は何に貸すか

預貸率38.7%、自己資本比率7.77%、不良債権比率5.12%。江差町に本店を置く道南うみ街信用金庫。函館信用金庫と江差信用金庫の合併で生まれた、道南の海と観光のまちに根ざす信金の数字を読みます。

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北海道檜山郡江差町に本店を置く道南うみ街信用金庫は、預金3,049億円、貸出金1,179億円、店舗20。江差町に登記上の本店を、函館市に本部機能を置き、道南(渡島・檜山)一円を地盤とする信用金庫です。

地盤とする道南は、北海道の南西部、津軽海峡に面した海と歴史のまちが連なる地域です。港町・函館は、幕末に開かれた国際貿易港の面影と夜景で知られる北海道屈指の観光都市であり、本店を置く江差は、かつてニシン漁とその交易で「江差の五月は江戸にもない」とうたわれた古い湊町です。漁業と水産加工、そして観光が地域経済を支える一方、人口減少は道内でも早く進んでいます。この、海に開かれながらも人口が細っていく土地柄が、道南うみ街信用金庫の数字を読む鍵になります。

この信用金庫は、2017年1月、函館信用金庫と江差信用金庫が合併して発足しました。源流の一つである江差信用金庫は、1924年に有限責任江差信用組合として設立され、戦後の信用金庫制度のもとで江差信用金庫へと改組した、道南の古い信金です。二つの信金が一つになり、本部を函館に置きながら登記上の本店を江差に残した歩みは、道南という広域をひとつで支えようとする姿勢の表れと読めます。数字の面で目を引くのは、預貸率38.7%という低さと、自己資本比率7.77%という薄めの守りの組み合わせです。

まず、数字を並べる

道南うみ街信用金庫の預金は3,049億円、貸出金は1,179億円、預貸率38.7%。自己資本比率は7.77%、不良債権比率は5.12%。中小企業等向けの貸出先は7,139件です。

道南うみ街信用金庫(令和7年3月末)
預金3,049億円
貸出金1,179億円
預貸率38.7%
自己資本比率7.77%
不良債権比率5.12%
中小企業等向け貸出先7,139件
店舗20店

預貸率38.7%・自己資本7.77%。道南の海のまちに根ざす信金の数字を読む。

38.7%と7.77%を、道南の海から読む

預貸率38.7%という低めの水準は、預金として集めた資金のうち、貸出に回しているのが四割に満たないことを示します。本紀行で見てきた地方の信金のなかでも、控えめな部類です。自己資本比率7.77%という薄めの守りとあわせて読むと、潤沢な資金を抱えながらも、地元に貸し切れていない地域金融機関の姿が浮かびます。

道南うみ街信用金庫が貸す相手は、函館・江差を中心とする道南の中小事業者です。漁業や水産加工、観光に連なる宿や商業、まちの建設業や小売業が、その融資先に含まれると考えられます。だが、人口減少が進み、漁獲や観光の変動も抱える土地では、旺盛に伸びる資金需要が常にあるわけではありません。預貸率38.7%という水準は、そうした土地の事情を映していると読めます。借り手が構造的に細っていくなかで無理に貸し増せば、限られた地域に資産を集中させるリスクを抱えることにもなります。

不良債権比率5.12%は、地方の信金として中庸からやや高めの水準にあり、薄めの自己資本とあわせれば、合併で広域をひとつにまとめながら、地域経済の変動と向き合ってきた歩みがうかがえます。もちろん、これらの比率には個別の事情や経営方針も絡むため断定はできませんが、海に開かれながらも人口が細る道南という土地を抜きに、この信金の数字は読めません。

道南うみ街信用金庫が示すのは、海のまちが一つになって地域を支えようとする信金の姿です。函館と江差、二つの信金が合併し、人口の細る道南をひとつでカバーする。控えめな預貸率と薄めの自己資本は、潤沢な預金を抱えつつ貸し先を探す、人口減少地域の信金の輪郭を映しています。

なぜ、こうなったのか——制度と地域

道南うみ街信用金庫が地元に貸す信金であることの背景には、信用金庫という制度があります。信用金庫が融資できる相手は原則として「会員」に限られ、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人、と定められています。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれません。

この制度のもとでは、貸す相手はおのずと地元の中小事業者や住民に絞られます。道南うみ街信用金庫にとって、その「地元」とは、漁業・水産・観光を柱とし、人口減少が進む道南の地域経済です。函館と江差の信金が合併して広域をひとつにまとめたのも、個々のまちでは細っていく地盤を、より大きな単位で支えようとする動きと読めます。控えめな預貸率は、その広い地区のなかでも貸し先が限られる土地の現実を映した、一つの帰結とも読めます。

同じ道の、金融機関と並べてみる

同じ北海道を代表する地銀として、北海道銀行(預貸率75.1%)も本紀行に登場しています。広大な北海道全体を相手にする道銀(預貸率75.1%)と、道南の海のまちに根ざすこの道南うみ街信用金庫(預貸率38.7%)とを並べると、同じ北海道でも、道全域を相手にする地銀と、特定地域に密着する信金とで、貸す範囲も性格も大きく異なることが見えてきます。道全体を支える地銀の姿は、北海道銀行の記事もあわせてどうぞ。

同じ道南には、函館に根ざす渡島信用金庫があります。預貸率71.1%の渡島信用金庫は、同じ道南でもしっかり貸す信金でした。預貸率38.7%の道南うみ街信用金庫とは、同じ海のまちに根ざしながら数字の形が大きく異なります。同じ道南でも、貸す信金と貸し先を探す信金がある。その対比は、渡島信用金庫の記事もあわせてどうぞ。

借り手にとっての意味

地元に根ざす信用金庫は、地域の中小事業者にとって、身近な相談相手です。とりわけ、漁業や観光を担う道南の小さな事業者にとって、土地の事情を知る信金の存在は心強いものです。預貸率が低いことは、相対的に貸し先を求めている可能性をうかがう一つの目安にはなりますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、根を張る土地を映す

預貸率38.7%という控えめな水準と、自己資本比率7.77%という薄めの守りは、津軽海峡に開かれた道南の海のまちに根を張り、人口減少と向き合いながら地域を支えてきた信金の姿を映しています。しっかり貸す信金もあれば、潤沢な預金を抱えつつ貸し先を探す信金もある。数字は、その金融機関がどんな土地で、誰に向き合ってきたかを語ります。道南うみ街信用金庫の数字は、函館と江差が一つになった海のまちの信金の、いまの記録です。

各地の金融機関には、それぞれの土地と産業の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。北海道の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、北海道の地域金融機関のページもどうぞ。

道南うみ街信用金庫と融資・保証のはなし

道南うみ街信用金庫は、地域に根ざした信用金庫です。借りる・備えるのどちらを考えるにしても、土台になるのは日頃の取引と信用。口座づくりから保証制度まで、どんな立場でも知っておきたい融資・銀行取引の基礎をまとめました。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、相対的に融資先を求めている可能性をうかがう一つの目安になる。ただし、有価証券運用を主体とする金融機関は、預貸率が低くても融資に積極的とは限らない。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
道南うみ街信用金庫の沿革(2017年に函館信用金庫と江差信用金庫が合併して発足、源流の江差信用金庫は1924年に有限責任江差信用組合として設立、本部を函館市・登記上の本店を江差町に置くこと)に関する記述=道南うみ街信用金庫公開情報・各種公開情報にもとづく。
函館・江差の港町としての歴史、道南の漁業・水産・観光、人口減少に関する記述=各種公開情報。
北海道銀行・渡島信用金庫の数値=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=金融庁 金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」資料『協同組織金融機関の「地区」のあり方』(2008年6月20日・神吉正三)。

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