¥Today ニホン銀行紀行

渡島信用金庫——守りの多い北海道で、道南の信金はなぜ預金の7割を貸すのか

預貸率71.1%、預金2,144億円、自己資本比率11.41%、不良債権比率3.08%、店舗11。茅部郡森町に本店を置く渡島信用金庫。守りを固める信金の多い北海道で、際立って高い預貸率で貸す道南の信金が、何に貸すのか。その数字と歴史を読む。

銀行・金融ニュース
ニホン銀行紀行 ・ 北海道

北海道の茅部郡森町に本店を置く渡島信用金庫は、預金2,144億円を持つ信用金庫だ。店舗11。「おしま」の名で知られ、渡島半島の噴火湾沿いを中心に、道南を地盤としている。

本拠の森町は、北海道南部の渡島半島、内浦湾(噴火湾)に面した町だ。古くから漁業の盛んな土地で、いかめしの駅弁で全国に名を知られる。背後には駒ヶ岳がそびえ、農業も営まれる。森町から函館にかけての道南は、北海道のなかでも比較的温暖で、本州との結びつきも深い土地だ。渡島信用金庫は、こうした道南に根ざしてきた信金だ。

この信金の数字で目を引くのは、預貸率71.1%という高さだ。北海道の信用金庫は、預金を集める力に対して貸出先が限られ、預貸率を低く抑え、自己資本を厚く積む傾向がある。これまで見てきた稚内信用金庫(預貸率17.3%)、室蘭信用金庫(同30.9%)、網走信用金庫(同34.7%)、大地みらい信用金庫(同30.2%)——いずれも守りを固める信金だった。そのなかで、渡島信用金庫の71.1%は際立って高い。なぜ、道南の信金は、これほどよく貸すのか。数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。渡島信用金庫の預金は2,144億円、貸出金は1,525億円。預貸率は71.1%で、預金の7割を超えて貸出に回している。自己資本比率は11.41%、不良債権比率は3.08%。店舗数は11、中小企業等への貸出残高は1,321億円。

北海道の他の信金と比べると、その違いは際立つ。稚内信用金庫(預貸率17.3%・自己資本61.86%)、室蘭信用金庫(同30.9%・27.68%)、網走信用金庫(同34.7%・34.06%)といった信金が、低い預貸率と極厚の自己資本で「守る」のに対し、渡島信用金庫は預貸率71.1%・自己資本11.41%で「攻める」。北海道の信金としては珍しい姿だ。預金の7割を超えて貸し、自己資本は標準的な水準にとどめる。不良債権比率3.08%は落ち着いている。守りの多い北海道で、道南の信金はよく貸す——それが、この信金の数字の特徴だ。

北海道の信用金庫・預貸率の比較(令和7年3月末)
 渡島信用金庫稚内信用金庫網走信用金庫
本店森町稚内市網走市
預貸率71.1%17.3%34.7%
自己資本比率11.41%61.86%34.06%
不良債権比率3.08%
店舗11

低い預貸率と極厚の自己資本で「守る」信金が多い北海道のなかで、渡島信用金庫の預貸率71.1%は際立って高い。道南でよく貸す信金だ。

道南とともに——渡島信用金庫の歩み

渡島信用金庫は、道南の中小・零細事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。森町や噴火湾沿いの漁業者、農家、水産加工の事業者、地元の商店、そして道南に住む人々——こうした人々が会員となり、預金を預け、必要なときに資金を借りる。少ない店舗で、道南の地盤に密着してきた信金だ。

道南という土地が、なぜ高い預貸率を生むのか。一つには、森町から函館にかけての道南が、北海道のなかでも比較的人口の集まる、本州との結びつきの深い土地であることが挙げられる。漁業・水産加工・農業に加え、函館圏という都市経済の縁にあって、資金需要が比較的厚い。そうした地盤で、地元の中小に密着し、深く貸す——この貸し方が、預貸率71.1%という高さを支えている。店舗11という少なさで、その地盤を深く耕している。自己資本比率11.41%は、信用金庫の国内基準4%を上回る健全な水準だ。不良債権比率3.08%は落ち着いており、よく貸しながら焦げ付きを抑えている。

71.1%を、道南から読む

渡島信用金庫の預貸率71.1%という高さは、守りを固める信金の多い北海道で、道南という比較的資金需要の厚い土地に深く貸してきたことの表れだと読める。北海道の多くの信金が、広く薄い地盤で貸出先が限られ、預金を運用に向けて厚い資本を積むのに対し、渡島信用金庫は函館圏の縁という地盤を生かし、地元の中小に深く貸している。少ない店舗で、濃く貸す。それがこの信金の選んだ道だ。

自己資本比率11.41%という健全な資本と、不良債権比率3.08%という落ち着いた焦げ付きは、道南でよく貸しながら、健全さを保ってきたことを映す。守りの多い北海道で、道南の地盤に深く貸す——それが、渡島信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。同じ北海道の信金でも、地盤の違いが、これほど異なる数字を生む。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

北海道の経済とともに

渡島信用金庫の数字は、道南という土地と、そこで深く貸す信金の歩みの、両方を映している。預金の7割を超えて地元の会員に貸し、少ない店舗で道南の地盤を耕しながら、森町を中心とする噴火湾沿いの中小・零細事業者を支えてきた。漁業・水産加工・農業と函館圏の縁という経済が、71.1%という高い預貸率に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。渡島信用金庫を見れば、道南の経済と、そこで深く貸す信金の姿が浮かぶ。北海道の他の金融機関は、最北の稚内信用金庫、鉄のまちの室蘭信用金庫、道都の北海道信用金庫もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。北海道の他の金融機関と並べて眺めたい方は、北海道の地域金融機関のページへ。

渡島信用金庫と融資・保証のはなし

本業の事業融資に踏み込むなら、知っておきたいのが融資の進め方と保証のしくみです。創業期から事業の拡大まで、道南で事業を営む立場で押さえておきたい融資・銀行取引の基礎をまとめました。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。同じ地方でも、広く薄い地盤で貸出先の限られた信金は預貸率が低く厚い資本を積み、都市圏の縁など資金需要の厚い地盤に深く貸す信金は預貸率が高くなる。自己資本比率や不良債権比率とあわせて見ることで、その信金の貸し方が見えてくる。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。稚内信用金庫・網走信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(茅部郡森町に本店を置き、「おしま」の名で知られ、渡島半島の噴火湾沿いを中心に道南を地盤とする信用金庫であること、少ない店舗で道南の地盤に密着してきたこと、森町が渡島半島の内浦湾(噴火湾)に面し漁業の盛んな土地でいかめしの駅弁で知られ駒ヶ岳を背にして農業も営まれること、森町から函館にかけての道南が北海道のなかで比較的温暖で本州との結びつきが深いこと)に関する記述=渡島信用金庫および各種公開情報にもとづく。
森町・道南の地理・経済(森町、渡島半島、噴火湾、内浦湾、駒ヶ岳、いかめし、漁業、水産加工、函館圏)に関する記述=各種公開情報。

本サイトは、資金繰り支援サービス「¥Today」が運営しています。

← ニホン銀行紀行へ | ¥Today トップへ