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みなと銀行——破綻を引き受けた「県民銀行」は、兵庫で何に貸すか

預貸率84.6%、預金3.9兆円。神戸市に本店を置くみなと銀行。破綻した兵庫銀行を継いだみどり銀行を阪神銀行が救済合併して生まれた、りそな傘下の第二地銀が、兵庫で何に貸すかを読みます。

ニホン銀行紀行 ・ 兵庫県

兵庫県神戸市中央区に本店を置くみなと銀行は、りそなホールディングス傘下の第二地方銀行です。預金3兆8,673億円、貸出金3兆2,717億円、店舗104。店舗の大半が兵庫県内に集中し、「県民銀行」を掲げて地域に密着する銀行です。「みなとまち神戸」を象徴する行名のとおり、神戸を中心に兵庫県全域を地盤としています。

本拠地の兵庫県は、港町・神戸を擁し、阪神工業地帯の一角として製造業が厚く、瀬戸内から日本海まで広がる多様な経済を持つ県です。神戸の港湾・商業、阪神間の都市経済、播磨の重工業、但馬・淡路の農水産業まで、一県のなかに多彩な顔があります。貿易の窓口・神戸という土地柄もあり、海外と取引する中小企業も少なくありません。この多様な兵庫経済が、みなと銀行の数字を読む鍵になります。

みなと銀行の成り立ちには、平成の金融危機の記憶が刻まれています。源流は1949年に設立された七福相互無尽で、阪神相互銀行、阪神銀行と歩んできました。そして1999年4月、阪神銀行が、経営破綻した兵庫銀行の営業を引き継いだみどり銀行を救済合併する形で、みなと銀行が発足しました。破綻した地域金融を引き受けて生まれたという経緯は、阪神・淡路大震災からの復興期にあった兵庫経済を支える役割と重なります。その後、2000年代以降の再編を経て、現在はりそなグループの一員となっています。数字の面で目を引くのは、預貸率84.6%という高い水準です。

まず、数字を並べる

みなと銀行の預金は3兆8,673億円、貸出金は3兆2,717億円、預貸率84.6%。自己資本比率は10.06%、不良債権比率は1.67%。中小企業等向けの貸出残高は2兆4,937億円にのぼります。

みなと銀行(令和7年3月末)
預金3兆8,673億円
貸出金3兆2,717億円
預貸率84.6%
自己資本比率10.06%
不良債権比率1.67%
中小企業等向け貸出残高24,937億円
店舗104店

預金3.9兆円・預貸84.6%。兵庫県に密着する「県民銀行」の数字。

84.6%を、兵庫密着という立場から読む

預貸率84.6%は、地方銀行のなかでよく貸している高い水準です。集めた預金の8割超を貸出に回している。これは、みなと銀行が店舗の大半を兵庫県内に集中させ、「県民銀行」として地元に深く貸し込んできたことの表れと読めます。

みなと銀行は、第二地方銀行という立場にあり、兵庫県内の中小企業とのリテール取引を厚く重ねてきました。神戸の商業・サービス業、阪神間の都市の事業者、播磨の製造業、そして「みなとまち神戸」を背景に海外と取引する中小企業——多様な兵庫経済の担い手に、地域密着で貸す。県外に手を広げず、兵庫という一県の経済に集中して貸し込む姿勢が、預貸率84.6%という高い水準を支えていると読めます。中小企業等向けの貸出残高2兆4,937億円という規模は、兵庫の事業者の資金需要を広く引き受けてきた証です。貿易為替の取扱高は業界トップ水準とされ、海外と取引する中小企業を支える役割も担っています。

不良債権比率1.67%は、地銀として標準的な水準です。破綻した地域金融を引き受けて生まれた経緯を思えば、長い時間をかけて健全性を立て直してきたことがうかがえます。自己資本比率10.06%という相応の厚みと、りそなグループの一員という後ろ盾もあり、よく貸しながら安定した経営を保っています。もちろん、これらの比率には経営方針や景気も絡むため断定はできませんが、破綻を引き受けて生まれ、兵庫に密着してきた第二地銀という立場を抜きに、この数字は読めません。

みなと銀行が示すのは、破綻した地域金融を引き受けて生まれ、兵庫一県に密着して貸し込む姿です。県外に広げず、多様な兵庫経済の担い手に深く貸す。預貸率84.6%という高い水準は、その「県民銀行」という立場を映していると読めます。

もう一つの「大手傘下の二地銀」と並べてみる

本紀行には、大手金融グループの傘下に入った第二地銀が、ほかにも登場しています。神奈川県の神奈川銀行です。神奈川銀行は横浜FG傘下の小さな第二地銀で、県外支店を持たず中小零細に密着し、預貸率87.5%でした。大手グループの後ろ盾を得つつ、地元の中小に深く貸し込むという構図は、りそな傘下のみなと銀行(兵庫密着)と横浜FG傘下の神奈川銀行(神奈川密着)で共通しています。大手の傘の下で地域に徹する二地銀の姿は、神奈川銀行の記事もあわせてどうぞ。

借り手にとっての意味

大手グループ傘下の県民銀行は、兵庫の事業者にとって、地域密着と全国ネットワークの両方を兼ねた選択肢です。兵庫県内に張りめぐらせた店舗網と、りそなグループのノウハウや貿易為替の知見は、海外と取引する中小企業にとっても心強いものです。預貸率は貸出への姿勢の表れとも読めますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、引き受けた歴史と密着を映す

預貸率84.6%という水準は、破綻した地域金融を引き受けて生まれ、兵庫という一県に密着して貸し込んできたみなと銀行の姿を映しています。県を越えて広がる地銀もあれば、みなと銀行のように一県に徹する地銀もある。数字は、その金融機関がどんな歴史を背負い、どんな土地に向き合ってきたかを語ります。みなと銀行の数字は、危機を越えて兵庫に根を張る「県民銀行」の、いまの記録です。

各地の金融機関には、それぞれの土地と歴史の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。兵庫県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、兵庫県の地域金融機関のページもどうぞ。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、相対的に融資先を求めている可能性をうかがう一つの目安になる。ただし、有価証券運用を主体とする金融機関は、預貸率が低くても融資に積極的とは限らない。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
みなと銀行の沿革(1949年に七福相互無尽として設立、阪神相互銀行・阪神銀行を経て、1999年4月に阪神銀行が経営破綻した兵庫銀行を継いだみどり銀行を救済合併してみなと銀行が発足、現在はりそなホールディングス傘下)、本店所在地(神戸市中央区)、店舗の大半が兵庫県内に集中する「県民銀行」であること、貿易為替取扱高が業界トップ水準であることに関する記述=みなと銀行および各種公開情報にもとづく。
兵庫県の経済(神戸の港湾・商業、阪神工業地帯、播磨・但馬・淡路の多様な産業)に関する記述=各種公開情報。
神奈川銀行の位置づけ=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末および本紀行既出記事。

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