北國銀行——地銀初のオールクラウド化を成した銀行の、堅実な数字
石川県金沢市に本店を置く北國銀行は、地方銀行で初めて勘定系システムのクラウド化を成し遂げた、DXの先進行として知られています。預貸率53.5%、自己資本比率8.3%、不良債権比率2.27%。その先進的な顔の裏にある数字は、意外なほど手堅い地銀の実像を映しています。
石川県金沢市に本店を置く北國銀行は、加賀百万石の城下町を地盤とする地方銀行です。預金4兆9,158億円、貸出金2兆6,297億円、店舗106。石川県を代表する地銀でありながら、いま金融業界では「最も先進的な銀行の一つ」として全国に名を知られています。
その名を高めたのが、デジタル化への先進的な取り組みです。北國銀行は、DXという言葉が広まる前から行内のIT改革を進め、地方銀行として初めて、勘定系システムを含めたシステムのクラウド化に踏み切りました。さらに、デジタル地域通貨「トチツーカ」を展開し、地元の数千の加盟店で日常の買い物に使われるなど、地域のデジタル基盤づくりにも踏み込んでいます。金沢という伝統工芸と観光の城下町に立ちながら、最先端を走る——この二面性が、北國銀行の数字を読むときの補助線になります。
では、その先進的な銀行の財務はどうなっているのか。先進性と財務の堅実さは、必ずしも一致しません。派手な投資が先行して足元が緩む銀行もある。だが北國銀行の数字を見ると、むしろ逆の姿が浮かびます。
まず、数字を並べる
北國銀行の預金は4兆9,158億円、貸出金は2兆6,297億円、預貸率53.5%。自己資本比率は8.3%。不良債権比率は2.27%。中小企業等への貸出先は約9万7千先にのぼります。
| 預金 | 4兆9,158億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 2兆6,297億円 |
| 預貸率 | 53.5% |
| 自己資本比率 | 8.30% |
| 不良債権比率 | 2.27% |
| 中小企業等向け貸出先 | 97,214先 |
| 店舗 | 106店 |
中小企業等への貸出先は約9万7千先。地銀として地域の事業者に広く貸しています。
53.5%という預貸率を、どう読むか
地方銀行の預貸率としては、53.5%は中庸からやや控えめな水準です。預金を超えて貸し込む一部の地銀(熊本銀行127.2%など)と比べれば、貸出に振り切ってはいない。一方で、預金の半分以上は地元に貸している。派手に攻めるのでも、過度に守るのでもない、バランスの取れた貸し方と読めます。
これを先進性と重ねると、一つの解釈が見えてきます。デジタル化で知られる銀行というと、収益を新規事業や投資で攻めている印象を持ちがちです。しかし北國銀行の預貸率は、本業の融資をしっかり地元に向けつつ、その土台の上でデジタル化を進めている姿を示しています。足場は地域への融資という地銀の本分に置いたまま、その効率や利便を先進技術で高めようとしている——そう読むのが、数字に素直な見方でしょう。
2.27%と8.3%——堅実さの裏づけ
不良債権比率2.27%は、地方銀行として低めの水準です。先進的な取り組みで知られながら、貸出の焦げ付きはよく抑えられている。これは、新しいことに挑む一方で、融資の審査や管理という地味な土台が緩んでいないことの表れと読めます。
自己資本比率8.3%は、国際基準を意識する大手地銀と比べれば突出して厚いわけではありませんが、国内基準行に求められる4%は十分に上回っています。派手な数字ではないが、地に足のついた水準です。もっとも、自己資本比率も不良債権比率も、景気や引当方針、決算期ごとの事情に左右されるため、一時点の数字だけで健全性を断じることはできません。ただ、低い不良債権と相応の自己資本という組み合わせは、先進性の陰で財務規律が保たれていることをうかがわせます。
なぜ、こうなったのか——地域と戦略
北國銀行の地盤である石川県は、金沢の伝統工芸や観光、加賀の産業、能登の一次産業など、多様な地域経済を抱えています。近年は能登半島地震という大きな災害も経験しました。こうした地域に根ざす地銀として、融資の本分を守りつつ、人口減少やデジタル化という構造変化に先手を打つ——その戦略が、先進性と堅実さが同居する数字を形づくっていると考えられます。
地方銀行は、信用金庫と違って会員資格のような制度上の枠はなく、より広い相手に貸せます。だからこそ、どこに重心を置くかは各行の戦略次第です。北國銀行は、その自由度のなかで「地域への融資を土台に、デジタルで効率と利便を高める」という道を選んだ銀行だと読めます。
数字は、戦略を映す
運用に振る銀行もあれば、預金を超えて貸し込む銀行もあります。そして北國銀行のように、本業の融資を手堅く続けながら、その上で先進技術に踏み込む銀行もあります。預貸率・不良債権・自己資本という数字の組み合わせは、その金融機関がどんな戦略で地域と向き合っているかを映す鏡です。DXで知られる金沢の地銀が示す手堅い数字は、革新が堅実の上に立っていることの表れと読めます。
各地の金融機関には、それぞれの土地と戦略が刻まれた、それぞれの生き方があります。石川県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、石川県の地域金融機関のページもどうぞ。
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
勘定系システムのクラウド化・デジタル地域通貨「トチツーカ」等のデジタル化の取り組みに関する記述=北國銀行および報道各社の公開情報等。
金沢・石川県の地域経済(伝統工芸・観光・能登半島地震の影響等)に関する記述=石川県・金沢市等の公開情報等。