岩手銀行——北東北の県都銀行は、広い県土で何に貸すか
預貸率68.9%、預金3.2兆円、不良債権比率2.55%。盛岡市に本店を置く岩手銀行。本州一広い県土を持つ岩手の県都銀行「いわぎん」が、農業・水産・半導体の土地で貸す姿を読みます。
岩手県盛岡市に本店を置く岩手銀行は、地元で「いわぎん」と呼ばれる地方銀行です。預金3兆2,022億円、貸出金2兆2,066億円、店舗110。岩手県を代表する地方銀行であり、岩手県および県内多くの自治体の指定金融機関——公金を扱う銀行——でもあります。
本拠地の岩手県は、北海道に次ぐ広さを持つ、本州で最も面積の大きい県です。内陸の盛岡・北上の都市部や工業団地、太平洋に面する三陸の水産業、そして広大な県土に広がる農業・畜産まで、産業が地理的に分散しています。近年は内陸部で半導体関連の投資が相次ぐ一方、沿岸部は東日本大震災からの復興を歩んできました。この広く分散した県土という地盤が、岩手銀行の数字を読む鍵になります。
岩手銀行は、1932年に設立され、岩手県の産業の発展とともに歩んできました。広い県土の各地に店舗網を張り巡らせ、県都・盛岡を中心に岩手経済を支える県のトップバンクです。数字の面で目を引くのは、預貸率68.9%という、地銀のなかではやや控えめな水準です。
まず、数字を並べる
岩手銀行の預金は3兆2,022億円、貸出金は2兆2,066億円、預貸率68.9%。自己資本比率は11.09%、不良債権比率は2.55%。中小企業等向けの貸出残高は1兆2,543億円にのぼります。
| 預金 | 3兆2,022億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 2兆2,066億円 |
| 預貸率 | 68.9% |
| 自己資本比率 | 11.09% |
| 不良債権比率 | 2.55% |
| 中小企業等向け貸出残高 | 12,543億円 |
| 店舗 | 110店 |
預貸68.9%・不良債権2.55%。広い県土を支える北東北の県都銀行。
68.9%を、広い県土から読む
預貸率68.9%は、地方銀行のなかではやや控えめな水準です。集めた預金の約7割を貸出に回している。県のトップバンクとして相応に貸してはいるものの、首都圏や大都市圏の地銀のような高い預貸率には届きません。ここに、広く分散した県土という地盤が見えます。
岩手銀行が貸す相手は、岩手県内の事業者と個人です。盛岡・北上の商業や製造業、内陸の半導体関連、三陸の水産加工、広い県土に広がる農業・畜産、そして住宅ローンが、その融資先に含まれます。中小企業等向けの貸出残高1兆2,543億円という規模は、県内の事業者の資金需要を引き受けてきたことを示しています。一方で、本州一広い県土に人口と産業が分散し、人口減少も進む岩手では、大都市圏のように旺盛な資金需要が一点に集中するわけではない。集めた預金のうち貸出に回りきらない分は、有価証券などの運用に向かいます。預貸率68.9%という水準は、広く分散した地方の県を地盤とすることの表れと読めます。
不良債権比率2.55%は、地銀としてやや高めの水準です。震災を経た沿岸部の事業者や、人口減の進む地域の借り手を抱えてきたことが、ある程度は影響していると思われます。それでも自己資本比率11.09%という相応の厚みを保ち、県のトップバンクとして安定した経営を続けています。もちろん、これらの比率には経営方針や景気も絡むため断定はできませんが、本州一広い県土という地盤と、震災・人口減という土地の事情を抜きに、この数字は読めません。
同じ岩手で、信金と並べてみる
本紀行には、同じ岩手県の北上信用金庫も登場しています。北上信金は、半導体に沸く北上川流域の内陸工業都市に根ざす信金でした。広い県土全体を相手にする岩手銀行(預貸率68.9%)と、内陸工業都市に根ざす北上信金とを並べると、同じ岩手でも、県全域を相手にする県都銀行と、特定の工業都市に密着する信金とで、貸す範囲も性格も異なることが見えてきます。県を支える地銀と、地区に根ざす信金——両者を並べると、広い岩手の金融の層が見えてきます。岩手の信金の姿は、北上信用金庫の記事もあわせてどうぞ。
借り手にとっての意味
県のトップバンクは、岩手の事業者にとって、もっとも身近で頼れる選択肢のひとつです。広い県土をカバーする店舗網は、各地の事業者にとって心強いものです。預貸率がやや控えめなのは地盤の事情によるもので、それが個別の融資の可否を一律に決めるわけではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。
数字は、広い県土を映す
預貸率68.9%という水準は、本州一広い県土に産業が分散する土地に根ざし、県都・盛岡から三陸まで広く岩手経済を支えてきた地銀の姿を映しています。資金需要の集中する都市の地銀もあれば、岩手銀行のように広く分散した県土を支える地銀もある。数字は、その金融機関がどんな土地に立っているかを語ります。岩手銀行の数字は、広い北東北の県を支える県都銀行「いわぎん」の、いまの記録です。
各地の金融機関には、それぞれの土地の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。岩手県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、岩手県の地域金融機関のページもどうぞ。
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
岩手銀行の沿革(1932年設立、岩手県を代表する地方銀行、県都・盛岡を中心に広い県土に店舗網を持つ県のトップバンク、岩手県等の指定金融機関であること)に関する記述=岩手銀行および各種公開情報にもとづく。
岩手県の地理と産業(本州で最も面積の大きい県、盛岡・北上の都市部と工業団地、内陸の半導体関連投資、三陸の水産業、広大な県土の農業・畜産、東日本大震災からの復興)に関する記述=各種公開情報。
北上信用金庫の位置づけ=各種公開情報および本紀行既出記事。