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鹿児島銀行——薩摩のトップバンクは、なぜ預金の9割を貸せるのか

預貸率90.9%、自己資本比率11.36%、不良債権比率2.03%。九州フィナンシャルグループの中核をなす鹿児島県のトップバンク「かぎん」。よく貸す薩摩の銀行の数字を、土地の産業から読む。

ニホン銀行紀行 ・ 鹿児島県

鹿児島県は、本土の南端に位置し、多くの離島を抱える広い県だ。桜島を望む鹿児島市を中心に、畜産・焼酎・観光という独自の産業が根を張る。黒豚、黒牛、黒さつま鶏といったブランド畜産、芋焼酎、そして屋久島や奄美といった世界自然遺産の島々。南国の豊かな一次産業と観光が、県経済の柱になっている。そのトップバンクが、鹿児島銀行——通称「かぎん」である。

この銀行の数字を見ると、まず預貸率の高さが目を引く。預貸率90.9%。預かった預金の9割を貸出に回している。地方銀行のなかでも高い部類だ。なぜ、これほど貸せるのか。それを、土地の事情から読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。鹿児島銀行の預金は4兆8,671億円、貸出金は4兆4,235億円。自己資本比率は11.36%と厚く、不良債権比率は2.03%。店舗数は151、中小企業等への貸出先は約14万6千件にのぼる。県内にとどまらず、福岡・宮崎・熊本など九州各県や、大阪・東京にも拠点を持つ。鹿児島県のトップバンクとして、確かな規模を誇る。

鹿児島銀行は、熊本県を地盤とする肥後銀行とともに、九州フィナンシャルグループの傘下にある。グループの2025年3月期の連結当期純利益は約303億円で、前年から大きく伸びている。同じ鹿児島県内の他行と並べると、規模の違いがはっきりする。

鹿児島県内の主な普通銀行(2025年3月期)
 鹿児島銀行南日本銀行
種別地方銀行第二地方銀行
預金48,671億円7,761億円
貸出金44,235億円5,922億円
預貸率90.9%76.3%
自己資本比率11.36%

規模では鹿児島銀行が県内を大きく引き離す。預貸率も高く、貸出への積極性がうかがえる。鹿児島県には、ほかに第二地銀の南日本銀行や複数の信用金庫・信用組合がある。

畜産と焼酎の土地に貸す

鹿児島銀行の高い預貸率を支えているのは、鹿児島という土地の産業構造だ。鹿児島県は農業産出額で全国上位に位置し、とりわけ畜産が盛んだ。肉用牛、豚、鶏——ブランド畜産の肥育には、家畜の導入や飼料、畜舎の整備に継続的な資金が要る。芋焼酎の蔵元、茶の生産者、そして観光関連の事業者。こうした地場産業の資金需要が、銀行の貸出を厚くしている。

離島を多く抱えることも、この県の特徴だ。種子島、屋久島、奄美大島をはじめ、有人離島が数多くある。本土から離れた島々の経済を、地元の金融機関が支えてきた。広い県土と多くの離島に貸し先が点在することが、鹿児島銀行の貸出を地理的にも広げている。南国の一次産業と観光、そして島々の暮らし。そのすべてに資金を供給する役割を、この銀行は担ってきた。

九州フィナンシャルグループの一員として

鹿児島銀行を語るうえで欠かせないのが、九州フィナンシャルグループの存在だ。2015年、鹿児島県のトップバンクである鹿児島銀行と、熊本県のトップバンクである肥後銀行が経営統合し、このグループが誕生した。それぞれの県でシェアトップの地方銀行同士が手を組むのは、全国的にも珍しい統合だった。

人口減少が進む地方では、単独で経営を続けるより、規模を合わせて経営基盤を固めるほうが理にかなう場面が増えている。九州フィナンシャルグループは、中央集権ではなく、地域に近い子銀行に軸足を置く経営を掲げ、鹿児島銀行と肥後銀行それぞれの地域密着を保ちながら、デジタル化など共通の分野はグループに集約している。鹿児島銀行は、グループの一員として南九州の経済を支える役割を担っている。

よく貸す銀行を、どう読むか

預貸率90.9%という高い数字は、鹿児島銀行が貸出に積極的であることの表れだ。ただし、よく貸す銀行が「誰にでも貸す」わけではない。不良債権比率2.03%は、地方銀行として極端に高い水準ではないが、低いとも言い切れない。畜産や焼酎、観光といった産業は、市況や天候、感染症(家畜の病気)といったリスクと隣り合わせでもある。そうしたリスクを抱える産業に貸しながら、焦げ付きを一定の範囲に抑えている、と読むのが妥当だろう。

預貸率という一つの数字をどう読むかについては、預貸率の読み方で整理しているので、あわせて読んでほしい。高ければ積極的、低ければ消極的、という単純な話ではない。なぜその数字になっているのか、土地と銀行の事情まで読みにいくことで、はじめて意味が立ち上がる。

南国の経済とともに

鹿児島銀行の数字は、畜産・焼酎・観光に支えられた南国の経済を、そのまま映している。よく貸し、九州フィナンシャルグループの一員として基盤を固める。広い県土と多くの離島に貸し先を持ち、薩摩の経済を長く支えてきた銀行である。

銀行の数字は、その土地の経済を映す鏡だ。鹿児島銀行を見れば、桜島を望む南国・薩摩の姿が浮かぶ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。鹿児島県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、鹿児島県の地域金融機関のページへ。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、相対的に融資先を求めている可能性をうかがう一つの目安になる。ただし、有価証券運用を主体とする金融機関は、預貸率が低くても融資に積極的とは限らない。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
当期純利益=九州フィナンシャルグループ2025年3月期決算短信(連結)、各種公開情報。
沿革・経営統合(肥後銀行・九州フィナンシャルグループ2015年設立)に関する記述=九州フィナンシャルグループ公開情報、各種公開情報。
鹿児島県の産業(畜産・焼酎・観光・離島)に関する記述=各種公開情報。

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