川崎信用金庫——京浜工業地帯の信金は、ものづくりの川崎で何に貸すか
預貸率61.2%、預金2.4兆円、店舗56。川崎市に本店を置く川崎信用金庫。京浜工業地帯の中核都市・川崎に根ざし、ものづくりの中小企業に貸す大型信用金庫。その数字と歴史を読む。
神奈川県川崎市に本店を置く川崎信用金庫は、地元で「かわしん」と呼ばれる信用金庫だ。預金2兆3,796億円、店舗56。信用金庫のなかでも全国屈指の規模を持つ大型信金である。川崎市を中心に、横浜市や東京都の一部にも店舗網を広げ、地元の中小企業と暮らしを支えてきた。
本拠の川崎市は、東京と横浜にはさまれた、京浜工業地帯の中核をなす都市だ。臨海部には大企業の工場やコンビナートが並び、内陸部には、その大企業を支える無数の中小工場が集まる。金属加工、機械、電機、化学——ものづくりの裾野が、これほど厚く広がる土地は多くない。近年は、臨海部の再開発や、武蔵小杉に代表される住宅地化も進み、街の表情は変わりつつある。だが、その根底には、いまも「ものづくりの街」としての性格が流れている。その川崎に、川崎信用金庫は深く根を張っている。
この信金の数字には、ある特徴がある。預貸率61.2%——信用金庫としては、よく貸している部類に入る。預金を集めるだけでなく、その6割超を地元の貸出に回している。なぜ、これほど貸せるのか。ものづくりの街という地盤とともに、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。川崎信用金庫の預金は2兆3,796億円、貸出金は1兆4,561億円。預貸率は61.2%で、預金の6割超を貸出に回している。自己資本比率は13.49%と厚く、不良債権比率は4.73%。店舗数は56、中小企業等への貸出残高は1兆4,448億円にのぼる。
目を引くのは、預貸率61.2%という高さだ。信用金庫は、預金を集めても貸出が伸びず、預貸率が3〜5割にとどまる先が多い。そのなかで6割を超えるこの数字は、都市型の大型信金としてよく貸している。同じ神奈川県の政令市・横浜市を地盤とする横浜信用金庫(預貸率57.6%)と比べても、川崎信用金庫の預貸率は高い。京浜工業地帯という、資金需要の厚い土地が、この高い預貸率を支えていると読める。自己資本比率13.49%という厚さも、よく貸しながら守りを固めていることを示している。
| 川崎信用金庫 | 横浜信用金庫 | |
|---|---|---|
| 本店 | 川崎市 | 横浜市 |
| 預金 | 23,796億円 | 20,704億円 |
| 貸出金 | 14,561億円 | 11,930億円 |
| 預貸率 | 61.2% | 57.6% |
| 自己資本比率 | 13.49% | 11.09% |
神奈川の二つの政令市を地盤とする大型信金。いずれもよく貸すが、京浜工業地帯の中核・川崎を地盤とする川崎信用金庫は、預貸率・自己資本比率ともにやや高い。ものづくりの街の資金需要の厚みが映る。
ものづくりの街とともに——川崎信用金庫の歩み
川崎信用金庫は、京浜工業地帯の発展とともに育ってきた信用金庫だ。大正から昭和にかけて、川崎の臨海部に大工場が次々と建ち、それを支える中小の町工場が内陸に広がった。大企業の下請け・孫請けとして精密な部品や加工を担う、こうした中小工場こそが、信用金庫の主な貸出先である。川崎信用金庫は、合併を重ねて規模を広げながら、ものづくりの担い手に資金を供給し続けてきた。
川崎の産業は、時代とともに姿を変えてきた。かつての重厚長大型の工業から、近年は研究開発拠点や、先端技術、環境・エネルギー関連の産業へと、臨海部の顔ぶれも移りつつある。内陸部では住宅地化が進み、新しい住民や事業者も増えている。変わりゆくものづくりの街で、変わらず地元の事業者に貸し続ける——それが、川崎信用金庫の役割になってきた。
61.2%を、京浜工業地帯から読む
川崎信用金庫の預貸率61.2%は、信用金庫としてよく貸す部類に入る。この高さの背景には、京浜工業地帯という、貸す相手が厚く集まる土地がある。大企業を支える中小の町工場、加工業、機械・金属・電機の事業者——ものづくりの裾野が広いぶん、設備投資や運転資金の需要も大きい。貸す相手が豊富にいることが、高い預貸率を支えている。
不良債権比率4.73%は、ものづくりを地盤とする都市型信金として、標準的な範囲にある。注目すべきは、よく貸しながら、自己資本比率13.49%という厚さも保っていることだ。資金需要の厚い土地で積極的に貸しつつ、厚い資本で守りも固める——攻めと守りのバランスが、この信金の数字に表れている。預金を運用に逃がすのではなく、地元のものづくりに向ける。京浜工業地帯の中核という地盤が、その姿勢を可能にしていると読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
川崎の経済とともに
川崎信用金庫の数字は、京浜工業地帯の中核・川崎という土地と、ものづくりの担い手に貸し続ける大型信金の歩みの、両方を映している。大工場とそれを支える無数の町工場が集まる街で、合併を重ねて全国屈指の規模に育ち、変わりゆく産業とともに地元の中小に貸してきた。資金需要の厚い土地で積極的に貸す姿が、61.2%という高い預貸率と、厚い自己資本の両立に表れている。
銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。川崎信用金庫を見れば、京浜工業地帯のものづくりの厚みと、そこに深く貸す都市型信金の姿が浮かぶ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。神奈川県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、神奈川県の地域金融機関のページへ。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。横浜信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(川崎市に本店を置く信用金庫であること、京浜工業地帯の発展とともに合併を重ねて全国屈指の規模となったこと、川崎市が金属・機械・電機・化学などのものづくりの集積地であり、近年は臨海部の再開発や住宅地化が進むこと)に関する記述=川崎信用金庫および各種公開情報にもとづく。
川崎の地理・産業(京浜工業地帯、臨海部のコンビナート、内陸部の中小工場、武蔵小杉などの住宅地化)に関する記述=各種公開情報。