京都中央信用金庫——全国最大級の信金は、古都で何に貸すか
預貸率63.2%、預金5.4兆円、中小先14万。京都市に本店を置く京都中央信用金庫「中信」。全国最大級の規模を誇る信金が、古都・京都で14万の中小事業者に貸す姿を読みます。
京都府京都市下京区に本店を置く京都中央信用金庫は、地元で「中信(ちゅうしん)」と呼ばれる信用金庫です。預金5兆4,056億円、貸出金3兆4,156億円、店舗135。全国に250余りある信用金庫のなかでも、最大級の規模を誇る信金です。中小企業等向けの貸出先は14万件を超え、その数字が地域の事業者にいかに広く根を張っているかを物語ります。
本拠地の京都は、千年の都として知られる古都であり、世界有数の観光都市です。一方で、西陣織や京友禅といった伝統産業、京菓子や清酒などの食文化、そして任天堂・京セラ・島津製作所に代表される先端ものづくり企業まで、多様な産業が層をなして集積する土地でもあります。観光と伝統と先端産業が同居する京都という土地柄が、京都中央信用金庫の数字を読む鍵になります。
中信の歩みは、1940年、京都市中央卸売市場で「京都市中央市場信用組合」として設立されたことに始まります。市場の商人たちの相互扶助から出発した信金です。その後、信用金庫へ改組し、2001年には経営破綻した京都みやこ信用金庫・南京都信用金庫の事業を譲り受け、店舗数・預金量で全国最大規模の信金となりました。2010年には信用金庫業界で初めて預金残高が4兆円を超え、2025年には創立85周年を迎えています。数字の面で目を引くのは、その規模の大きさと、預貸率63.2%という水準です。
まず、数字を並べる
京都中央信用金庫の預金は5兆4,056億円、貸出金は3兆4,156億円、預貸率63.2%。自己資本比率は11.24%、不良債権比率は1.91%。中小企業等向けの貸出先は14万32件にのぼります。
| 預金 | 5兆4,056億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 3兆4,156億円 |
| 預貸率 | 63.2% |
| 自己資本比率 | 11.24% |
| 不良債権比率 | 1.91% |
| 中小企業等向け貸出先 | 140,032件 |
| 店舗 | 135店 |
預金5.4兆円・中小先14万。全国最大級の信金が古都で貸す数字。
63.2%を、古都の産業の層から読む
預貸率63.2%は、信用金庫としてはしっかり高い水準です。これだけの規模を持ちながら、集めた預金の6割超を貸出に回している。古都・京都の幅広い産業に貸し先を持っていることの表れと読めます。
中信が貸す相手は、京都の多様な事業者です。西陣織や京友禅の伝統産業、京菓子・清酒の食文化、観光・宿泊業、そして先端ものづくり企業の関連中小企業や下請けまで、その融資先は層をなしています。中小企業等向けの貸出先が14万件を超えるという数字は、規模の大きさだけでなく、京都の経済の隅々にまで毛細血管のように資金を流していることを示しています。卸売市場の商人の相互扶助から出発した信金が、いまや古都の産業全体を支える存在になった——その歩みが、預貸率63.2%という高さと14万という貸出先の数に表れていると読めます。
注目したいのは、信金としては全国最大級の規模を持ちながら、預貸率が地銀ほど高くはない(6割台)点です。これは、信用金庫という制度の枠が関係していると考えられます。信金は会員(地区内の中小事業者・住民)にしか原則貸せず、大企業には貸せません。どれだけ規模が大きくなっても、貸す相手は地区内の中小事業者に限られる。だから、集めた潤沢な預金のうち貸出に回しきれない分は、有価証券などの運用に向かいます。自己資本比率11.24%という厚みと、不良債権比率1.91%という低めの水準は、巨大な規模を堅実に運営してきたことの表れと読めます。もちろん、これらの比率には経営方針や景気も絡むため断定はできませんが、観光・伝統・先端産業が同居する京都という土地と、信金という制度の枠を抜きに、この数字は読めません。
なぜ、こうなったのか——制度と地域
京都中央信用金庫が地元の中小事業者に貸す信金であることの背景には、信用金庫という制度があります。信用金庫が融資できる相手は原則として「会員」に限られ、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人、と定められています。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれません。
この制度のもとでは、貸す相手はおのずと地元の中小事業者や住民に絞られます。中信にとって、その「地元」とは京都という巨大な経済圏です。全国最大級の規模に育ってもなお、その本質は地区内の中小事業者の相互扶助にある。卸売市場の商人たちが金を融通し合った原点から、京都全体の14万を超える中小事業者へ——規模は桁違いに大きくなっても、地区に根ざして会員を支えるという信金の役割は変わっていません。破綻した二つの信金を引き受けて規模を広げたことも、地域の金融を絶やさないという信金の使命の延長にあったと読めます。
同じ「大規模信金」と並べてみる
本紀行には、もう一つの全国屈指の規模を持つ信金が登場しています。埼玉県の埼玉縣信用金庫です。埼玉縣信金もまた、首都圏に近い経済力を背景に、信金として全国有数の規模と高い預貸率を保っていました。京都中央信用金庫(預貸率63.2%)と埼玉縣信金は、いずれも信金という制度の枠の中で全国最大級にまで育ち、地区内の膨大な中小事業者に貸すという、よく似た姿を持っています。両者を並べると、信金が規模を追ったときに何が起こるかが見えてきます。もう一つの大規模信金の姿は、埼玉縣信用金庫の記事もあわせてどうぞ。
借り手にとっての意味
地元に根ざす信用金庫は、地域の中小事業者にとって、身近な相談相手です。とりわけ、全国最大級の規模を持つ中信は、京都の幅広い業種の事業者に向き合ってきた厚みがあります。預貸率の水準は貸出への姿勢の表れとも読めますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。
数字は、古都の厚みを映す
預貸率63.2%という水準と、14万を超える貸出先という数字は、観光・伝統・先端産業が層をなす古都・京都に根ざし、卸売市場の商人の相互扶助から全国最大級にまで育った信金の姿を映しています。地区を狭く守る小さな信金もあれば、京都中央信用金庫のように地区そのものが巨大な経済圏である信金もある。数字は、その金融機関がどんな土地で、どこまで根を広げてきたかを語ります。京都中央信用金庫の数字は、古都の産業全体を支える「中信」の、いまの記録です。
本紀行には、この中信に次ぐ規模を持つ大規模信金も登場しています。愛知県の岡崎信用金庫(預貸率49.2%)は、総資産4兆円を超える中部最大級の信金で、京都中信や城南信金に次ぐ全国トップクラスの規模を誇ります。古都の多様な産業に貸す京都中信(預貸率63.2%)と、ものづくりの三河に貸す岡崎信用金庫(預貸率49.2%)とを並べると、同じ全国最大級の信金でも、地区の産業構造によって預貸率が大きく変わることが見えてきます。もう一つの大規模信金の姿は、岡崎信用金庫の記事もあわせてどうぞ。
本紀行には、同じ京都府の京都銀行も登場しています。京都銀行は、任天堂・村田製作所など京都発の優良企業の大株主として知られ、保有株の含み益が1兆円規模にのぼる有力地銀でした。古都の中小に深く貸すこの京都中央信用金庫(預貸率63.2%)と、近畿一円に広がり株式でも稼ぐ京都銀行(預貸率78.8%)とを並べると、同じ京都を地盤としながら、地元の中小に徹して貸す巨大信金と、広域に展開し株式でも稼ぐ地銀とで、役割と性格が異なることが見えてきます。京都を代表する地銀の姿は、京都銀行の記事もあわせてどうぞ。
各地の金融機関には、それぞれの土地と成り立ちの事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。京都府の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、京都府の地域金融機関のページもどうぞ。
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
京都中央信用金庫の沿革(1940年に京都市中央市場信用組合として設立、2001年に京都みやこ信用金庫・南京都信用金庫の事業を譲受し全国最大規模に、2010年に信金業界初の預金4兆円超、2025年に創立85周年)、全国最大級の信金であること、スローガン「ON YOUR SIDE:一緒がうれしい」に関する記述=京都中央信用金庫および各種公開情報にもとづく。
京都の地理と産業(古都・観光、西陣織・京友禅等の伝統産業、京菓子・清酒、先端ものづくり企業の集積)に関する記述=各種公開情報。
埼玉縣信用金庫の位置づけ=各種公開情報および本紀行既出記事。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=金融庁 金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」資料『協同組織金融機関の「地区」のあり方』(2008年6月20日・神吉正三)。