桑名三重信用金庫——東海道の宿場町で、北勢の信金はなぜ貸出を抑えるか
預貸率41.6%、預金7,822億円、自己資本比率16.09%、不良債権比率5.02%。桑名市に本店を置く桑名三重信用金庫。東海道の宿場町・桑名を中心に三重県北勢に根ざす信金が、なぜ貸出を抑えめにするのか。同じ三重の信金と比べながら、その数字と歴史を読む。
三重県の桑名市に本店を置く桑名三重信用金庫は、預金7,822億円を持つ信用金庫だ。店舗43。桑名市を中心に、三重県北部の北勢地域を地盤としている。三重県内でも有数の規模を持つ信金だ。
本拠の桑名市は、木曽三川(木曽川・長良川・揖斐川)の河口に位置し、古くは東海道の宿場町・桑名宿として栄えた。「その手は桑名の焼き蛤」で知られる蛤の産地であり、伊勢国の玄関口でもあった。いまは名古屋への通勤圏として住宅地が広がる一方、北勢地域には自動車部品や機械、化学などの工場が立地する。桑名三重信用金庫は、こうした名古屋に近い三重県北勢に根ざしてきた信金だ。
この信金の数字で目を引くのは、預貸率41.6%という低さと、自己資本比率16.09%という厚みだ。預金の4割ほどしか貸出に回していない。一方、不良債権比率5.02%はやや高めだ。なぜ、北勢の信金は、貸出を抑えめにするのか。同じ三重を地盤とする信金とも比べながら、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。桑名三重信用金庫の預金は7,822億円、貸出金は3,256億円。預貸率は41.6%で、預金の4割ほどを貸出に回している。自己資本比率は16.09%と厚く、不良債権比率は5.02%。店舗数は43、中小企業等への貸出残高は2,942億円。
同じ三重県で、県庁所在地の津市を地盤とする津信用金庫(預貸率19.2%・自己資本比率22.84%)と比べると、桑名三重信用金庫のほうが、預貸率は高い。桑名三重信用金庫の預貸率41.6%は津信用金庫(19.2%)を大きく上回り、桑名三重信用金庫のほうがよく貸している。一方、自己資本比率はどちらも高く、津信用金庫(22.84%)が桑名三重信用金庫(16.09%)を上回る。三重県の信金は、そろって貸出を抑えめにし、厚い自己資本を保つ傾向があるが、そのなかでも桑名三重信用金庫は、名古屋に近い北勢の資金需要を映して、津信用金庫より貸出に積極的だと読める。
| 桑名三重信用金庫 | 津信用金庫 | |
|---|---|---|
| 本店 | 桑名市 | 津市 |
| 預金 | 7,822億円 | 857億円 |
| 預貸率 | 41.6% | 19.2% |
| 自己資本比率 | 16.09% | 22.84% |
| 不良債権比率 | 5.02% | 4.55% |
ともに三重県を地盤とする信金。どちらも貸出を抑えめにし、厚い自己資本を保つ。そのなかで桑名三重信用金庫は、名古屋に近い北勢の資金需要を映してよく貸している。
東海道の宿場町とともに——桑名三重信用金庫の歩み
桑名三重信用金庫は、北勢の中小・零細事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。桑名の商店、北勢の自動車部品・機械・化学の中小製造業、名古屋通勤圏の住民——こうした人々が会員となり、預金を預け、必要なときに資金を借りる。桑名三重信用金庫は、桑名信用金庫と三重信用金庫の合併を経て、いまの名となり、北勢に広く根ざす信金へと成長してきた。名に「桑名」と「三重」を併せ持つのは、この合併の歴史を映している。
北勢という土地は、信用金庫にとって、二つの顔を持つ。一つは、名古屋への通勤圏として住宅地が広がり、預金が集まりやすい顔。もう一つは、自動車部品や機械、化学の工場が立地し、中小製造業が資金を必要とする顔だ。預金は集まるが、地元の中小だけでは貸出先に限りがある——この構図が、預貸率41.6%という、預金に対して貸出を抑えめにする姿に表れていると読める。預金の残りは、有価証券などの運用に向かう。厚い自己資本比率16.09%は、その堅実な経営を映している。
41.6%を、北勢から読む
桑名三重信用金庫の預貸率41.6%という低さは、名古屋に近い北勢で、預金は集まるが、地元の中小だけでは貸出先に限りがあることの表れだと読める。名古屋通勤圏として住宅地が広がる桑名・北勢は、預金の集まりやすい土地だ。一方、貸出の主な相手である中小・零細事業者の数には限りがあり、大企業の工場は信用金庫より大手銀行が主に資金を供給する。その結果、預金に対して貸出が抑えめになり、預貸率が4割ほどにとどまる。
自己資本比率16.09%という厚い資本は、貸出を無理に伸ばさず、堅実な経営を続けてきたことを映す。不良債権比率5.02%はやや高めだが、地域の中小の事業の浮き沈みを引き受けるなかでの水準と読める。名古屋に近い北勢で、預金を集めつつ、貸出は地元の中小に絞り、厚い資本を保つ——それが、桑名三重信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
三重の経済とともに
桑名三重信用金庫の数字は、東海道の宿場町・桑名を擁する三重県北勢という土地と、そこで預金を集めつつ中小に絞って貸す信金の歩みの、両方を映している。名古屋に近い北勢の住宅地から預金を集め、厚い資本を保ちながら、地元の中小・零細事業者を支えてきた。桑名の商業と北勢のものづくりの経済が、41.6%という預貸率に表れている。
銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。桑名三重信用金庫を見れば、北勢の経済と、そこで堅実に貸す信金の姿が浮かぶ。三重県の他の金融機関は、県都・津の津信用金庫、県南部の紀北信用金庫、県内の地銀百五銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。三重県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、三重県の地域金融機関のページへ。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。津信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(桑名市に本店を置き、三重県北勢を地盤とする信用金庫であること、桑名信用金庫と三重信用金庫の合併を経ていまの名になったこと、桑名が木曽三川の河口に位置し東海道の宿場町・桑名宿として栄え、蛤の産地で伊勢国の玄関口であったこと、いまは名古屋への通勤圏として住宅地が広がり北勢に自動車部品・機械・化学などの工場が立地すること)に関する記述=桑名三重信用金庫および各種公開情報にもとづく。
桑名・北勢の地理・経済(桑名、木曽三川、東海道、宿場町、蛤、北勢、名古屋通勤圏、自動車部品、機械、化学)に関する記述=各種公開情報。