津信用金庫——県都の信金は、なぜ預金の2割しか貸さないのか
預貸率19.2%、預金857億円、自己資本比率22.84%。津市に本店を置く津信用金庫。三重県の県都に根ざしながら、全国屈指の低い預貸率と厚い自己資本を持つ信用金庫。その数字と歴史を読む。
三重県の県都・津市に本店を置く津信用金庫は、地元で「つしんきん」と呼ばれる信用金庫だ。預金857億円、店舗6。津市を中心に、県中部の限られた地域を地盤とする、小規模な信金である。
本拠の津は、三重県の県庁所在地だ。だが、同じ県内の四日市や鈴鹿といった工業都市に比べると、津は行政・商業の街としての性格が強く、人口規模も突出して大きいわけではない。県都でありながら、隣接する大都市・名古屋の経済圏の影響も受ける。津信用金庫は、こうした県都・津の限られた商圏に根ざしてきた、地域密着の小さな信金だ。
この信金の数字でまず目を引くのは、預貸率19.2%という、全国でも屈指の低さだ。預金857億円に対し、貸出はわずか164億円。預金の2割ほどしか貸出に回していない。さらに、自己資本比率は22.84%と非常に厚い。なぜ、県都の信金がこれほど貸さず、資本を厚く積むのか。同じ三重県の信金とも比べながら、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。津信用金庫の預金は857億円、貸出金は164億円。預貸率は19.2%で、預金の2割ほどしか貸出に回していない。自己資本比率は22.84%と非常に厚く、不良債権比率は4.55%。店舗数は6、中小企業等への貸出残高は88億円。
際立つのは、預貸率19.2%という低さだ。これは全国の信用金庫のなかでも、最も低い部類に入る。同じ三重県で、尾鷲ヒノキの林業と熊野灘の漁業に支えられた紀北信用金庫(預貸率23.5%・自己資本比率33.2%)と比べても、津信用金庫の預貸率はさらに低い。両者は、ともに低い預貸率と厚い自己資本を持つ点で共通する。県都という立地でありながら、津信用金庫がこれほど貸さないのは、地盤とする商圏が限られ、貸出先となる事業者や資金需要が乏しいことの表れだと読める。隣接する名古屋経済圏や、県内の大手地銀との競合のなかで、小さな信金の貸出は伸びにくい。
| 津信用金庫 | 紀北信用金庫 | |
|---|---|---|
| 地盤 | 県都・津 | 尾鷲(東紀州) |
| 預金 | 857億円 | 1,072億円 |
| 預貸率 | 19.2% | 23.5% |
| 自己資本比率 | 22.84% | 33.2% |
| 不良債権比率 | 4.55% | — |
ともに低い預貸率と厚い自己資本を持つ三重県の二つの信金。津信用金庫は県都に立地しながら、預貸率は紀北信用金庫よりさらに低い。地盤とする商圏の限られた事情が数字に表れている。
県都の小さな信金として——津信用金庫の歩み
津信用金庫は、県都・津の商人や事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。津市とその周辺の商店や個人、小さな事業者——こうした人々が預金を預け、必要なときに資金を借りる。津信用金庫は、限られた商圏のなかで、地域に密着した小さな信金として歩んできた。
津という土地は、県都でありながら、信用金庫にとって貸出を伸ばしやすい地盤とは言いにくい。隣接する名古屋という大都市圏の経済力が及び、県内には大手の地銀や、より規模の大きい信用金庫も存在する。そうした競合のなかで、小さな津信用金庫が貸出を大きく伸ばすのは難しい。預金は地元から集まるが、それを貸し切るだけの需要を、限られた商圏で確保できない——この構図が、19.2%という極端に低い預貸率の背景にあると読める。集めた預金の多くは、有価証券の運用などに向かう。
19.2%を、県都の信金から読む
津信用金庫の預貸率19.2%という全国屈指の低さは、限られた商圏で、貸出先となる事業者や資金需要が乏しいことの表れだと読める。県都という立地は、必ずしも旺盛な貸出需要を意味しない。むしろ、隣接する大都市圏に経済活動が吸われ、地元の小さな信金が貸せる先は限られる。預金は集まっても、それを地元で貸し切れず、預貸率は2割ほどにとどまる。
自己資本比率22.84%という厚さは、小規模で、貸出を大きく伸ばせない地域で、長く在り続けるための備えだと読める。貸出が少ない分、運用に頼る経営になるが、厚い自己資本があれば、市況の変動にも耐えられる。不良債権比率4.55%という水準は、限られた貸出先の事情を映すが、厚い自己資本がそれを支える。無理に貸して規模を追うのでなく、できる範囲で堅実に貸し、厚い資本で守りを固める——それが、津信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
津の経済とともに
津信用金庫の数字は、県都でありながら隣接する大都市圏の影響を受ける津という土地と、その限られた商圏のなかで堅実に在り続ける小さな信金の歩みの、両方を映している。預金は地元から集まるが、貸出先は限られ、預金の2割ほどしか貸せない。だからこそ、厚い自己資本で守りを固める。地盤とする土地の事情が、19.2%という全国屈指の低い預貸率に表れている。
銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。津信用金庫を見れば、県都・津の経済と、そこで堅実に在り続ける小さな信金の姿が浮かぶ。同じ三重県の金融機関は、東紀州の紀北信用金庫、県トップの地銀百五銀行、合併で生まれた三十三銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。三重県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、三重県の地域金融機関のページへ。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。紀北信用金庫の数値も同出典(不良債権比率は当該欄が公表されていないため「—」と表示)。
沿革・地域(津市に本店を置き、三重県中部を地盤とする小規模な信用金庫であること、津が三重県の県庁所在地であること、四日市・鈴鹿などの工業都市や隣接する名古屋経済圏の影響を受けること)に関する記述=津信用金庫および各種公開情報にもとづく。
津・三重の地理・経済(県都、行政・商業の街、名古屋経済圏、四日市・鈴鹿)に関する記述=各種公開情報。