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長野信用金庫——善光寺門前の信金は、なぜ極厚の資本を持つのか

預貸率40.9%、預金8,859億円、自己資本比率22.27%、不良債権比率6.03%。長野市に本店を置く長野信用金庫。善光寺門前町・長野に根ざす信金が、なぜ極めて厚い自己資本を持つのか。同じ長野県の信金と比べながら、その数字と歴史を読む。

ニホン銀行紀行 ・ 長野県

長野県の県都・長野市に本店を置く長野信用金庫は、預金8,859億円を持つ信用金庫だ。店舗38。長野市を中心に、長野県北部の北信地域を地盤としている。預金1兆円に迫る、長野県内でも大型の信金だ。

本拠の長野市は、善光寺の門前町として開けた、長野県北部の中心都市だ。県庁所在地として行政・商業の中心を担い、善光寺の参詣でにぎわう門前町の商業、周辺には果樹や米作の農業地帯、地場の中小製造業が広がる。1998年の冬季五輪の開催地としても知られる。長野信用金庫は、こうした善光寺門前町・長野を中心とする北信に根ざしてきた信金だ。

この信金の数字で目を引くのは、自己資本比率22.27%という、極めて厚い資本だ。預貸率は40.9%で、預金の4割ほどを貸出に回している。なぜ、善光寺門前の信金は、これほど厚い資本を持つのか。同じ長野県の信金とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。長野信用金庫の預金は8,859億円、貸出金は3,619億円。預貸率は40.9%で、預金の4割ほどを貸出に回している。自己資本比率は22.27%と極めて厚く、不良債権比率は6.03%。店舗数は38、中小企業等への貸出残高は2,942億円。

同じ長野県で、岡谷市を地盤とする諏訪信用金庫(自己資本比率23.91%・預貸率45.9%)と比べると、両者はそろって自己資本比率20%超という、全国でも際立って厚い資本を持つ。長野信用金庫(22.27%)も諏訪信用金庫(23.91%)も、信用金庫の国内基準4%を大きく上回る。長野県の信金がそろって極めて厚い自己資本を持つのは、長野という土地の堅実な貯蓄性向と、貸出を抑えめにして利益を着実に資本へ積んできた経営の表れだと読める。一方、不良債権比率は長野信用金庫(6.03%)が諏訪信用金庫(3.16%)を上回り、長野信用金庫はやや焦げ付きを抱えるが、22.27%という極厚の自己資本が十分に吸収できる範囲だ。

長野県の二つの信用金庫(令和7年3月末)
 長野信用金庫諏訪信用金庫
本店長野市岡谷市
預金8,859億円4,212億円
預貸率40.9%45.9%
自己資本比率22.27%23.91%
不良債権比率6.03%3.16%

ともに長野県を地盤とする二つの信金。そろって自己資本比率20%超という全国でも際立って厚い資本を持つ。長野の堅実な貯蓄性向と、貸出を抑えめにして資本を積む経営が数字に表れている。

善光寺門前・長野とともに——長野信用金庫の歩み

長野信用金庫は、北信の中小・零細事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。善光寺門前の商店、参詣客を迎える事業者、北信の農家や中小製造業、そして住民——こうした人々が会員となり、預金を預け、必要なときに資金を借りる。長野信用金庫は、合併を経て、善光寺門前町・長野を中心に北信に広く根ざす大型信金へと成長してきた。

長野という土地は、信用金庫にとって、預金は集まるが貸出先には限りのある地盤だ。善光寺門前の商業や農業、地場の中小製造業が広がるが、人口減少や産業構造の変化のなかで、新たに大きく借り入れて投資する事業者は限られる。預金は集まるが、それを貸し切るだけの旺盛な資金需要は乏しい——この構図が、40.9%という低い預貸率の背景にあると読める。集めた預金のうち貸出に回りきらない分は運用などに向かい、そこで積み上がった利益が、22.27%という極めて厚い自己資本となってきたと読める。

22.27%の資本を、北信から読む

長野信用金庫の自己資本比率22.27%という極めて厚い資本は、善光寺門前町・長野という、堅実な貯蓄性向を持つ土地で、貸出を抑えめにして利益を着実に資本へ積んできたことの表れだと読める。預金は集まるが、それを無理に貸し切るのでなく、堅実に運用して資本を厚くしてきた。同じ長野県の諏訪信用金庫も自己資本比率は20%超で、長野の信金がそろって極厚の資本を持つことは、地盤の性格が個別の信金の方針を超えて数字に表れていることを示す。

不良債権比率6.03%という数字は、人口減少や産業構造の変化のなかで、地域の事業者の浮き沈みを一定程度引き受けていることを映すが、22.27%という極厚の自己資本が十分に吸収できる範囲だ。善光寺門前で預金を集め、貸出を抑えめにして、極めて厚い資本を積む——それが、長野信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。堅実を旨とする長野の信金の、一つのかたちがここにある。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

長野の経済とともに

長野信用金庫の数字は、善光寺門前町・長野という土地と、そこで貸出を抑えめにしながら極めて厚い資本を積む大型信金の歩みの、両方を映している。預金の4割ほどを地元に貸しながら、残りを堅実に運用し、極厚の資本で守りを固めてきた。善光寺門前の商業と北信の農業の経済が、40.9%という低い預貸率と、22.27%という極めて厚い自己資本に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。長野信用金庫を見れば、善光寺門前町・長野の経済と、そこで極厚の資本を積む大型信金の姿が浮かぶ。長野県の他の金融機関は、同じく極厚資本の諏訪信用金庫、県内の信組長野県信用組合、県トップの地銀八十二銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。長野県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、長野県の地域金融機関のページへ。

自己資本比率とは 自己資本比率とは、金融機関の総資産に対する自己資本の割合。損失が出たときに、自前の資本でどれだけ吸収できるかを示す、健全性の目安の一つだ。信用金庫には国内基準で4%以上が求められる。預金は集まるが旺盛な資金需要に乏しい土地では、信用金庫は貸出を抑えめにし、堅実に運用して利益を資本へ積むため、自己資本比率が20%を超えるほど厚くなることがある。預貸率とあわせて見ることで、その土地と経営の性格が見えてくる。 → あわせて「預貸率の読み方」もどうぞ

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。諏訪信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(長野市に本店を置き、長野県北部の北信地域を地盤とする信用金庫であること、合併を経て北信に広く根ざす大型信金になったこと、長野が善光寺の門前町として開けた県庁所在地で、参詣でにぎわう門前町の商業や周辺の果樹・米作の農業地帯が広がること、1998年の冬季五輪の開催地であること)に関する記述=長野信用金庫および各種公開情報にもとづく。
長野・北信の地理・経済(善光寺、門前町、県庁所在地、北信、果樹、米作、冬季五輪)に関する記述=各種公開情報。

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