奈良中央信用金庫——大和の信金は、なぜ厚い自己資本で4割しか貸さないのか
預貸率41.0%、預金5,568億円、自己資本比率17.12%。磯城郡に本店を置く奈良中央信用金庫。大和の地に根ざす「なかしん」が、なぜ厚い自己資本を持ち、預金の4割しか貸さないのか。その数字と歴史を読む。
奈良県の磯城郡(しきぐん)田原本町に本店を置く奈良中央信用金庫は、地元で「なかしん」と呼ばれる信用金庫だ。預金5,568億円、店舗15。奈良盆地の中央部を中心に、県北・中部を地盤としている。預金規模では奈良県内の信金で上位に入る、大型の信金だ。
本拠の磯城郡田原本町は、奈良盆地のほぼ中央に位置する町だ。周辺は、古代に大和王権の中心が置かれた地であり、いまも数多くの古墳や遺跡が残る歴史の濃い土地だ。奈良盆地は、大阪のベッドタウンとして人口を抱える一方、大企業や工場の集積は大阪・京都ほどではない。奈良中央信用金庫は、こうした古代以来の歴史を抱える大和の地に根ざしてきた信金だ。
この信金の数字で目を引くのは、預貸率41.0%という低さと、自己資本比率17.12%という厚さだ。5,568億円という大きな預金を集めながら、貸出はその4割にとどまり、自己資本は際立って厚い。なぜ、大和の大型信金は、これほど貸さず、これほど資本を厚く積むのか。同じ奈良県の信金とも比べながら、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。奈良中央信用金庫の預金は5,568億円、貸出金は2,281億円。預貸率は41.0%で、預金の4割ほどを貸出に回している。自己資本比率は17.12%と厚く、不良債権比率は4.42%。店舗数は15、中小企業等への貸出残高は1,990億円。
同じ奈良県で、大和郡山市を地盤とする奈良信用金庫(預貸率52.1%・自己資本比率8.43%)と比べると、対照的だ。奈良中央信用金庫の預貸率41.0%は、奈良信用金庫(52.1%)を下回り、自己資本比率17.12%は奈良信用金庫(8.43%)の倍を超える。同じ奈良県の信金でも、奈良信用金庫はよく貸し、奈良中央信用金庫は貸出を抑えて厚い資本を積む。これは、奈良中央信用金庫が、豊富な預金を集めながら、貸出を抑えめにし、運用などで利益を積んで厚い資本を蓄えてきたことの表れだと読める。
| 奈良中央信用金庫 | 奈良信用金庫 | |
|---|---|---|
| 本店 | 磯城郡田原本町 | 大和郡山市 |
| 預金 | 5,568億円 | 3,478億円 |
| 預貸率 | 41.0% | 52.1% |
| 自己資本比率 | 17.12% | 8.43% |
| 不良債権比率 | 4.42% | 2.56% |
ともに奈良県を地盤とする二つの信金。規模では奈良中央信用金庫が上回るが、預貸率は奈良信用金庫が高い。奈良中央信用金庫は貸出を抑えめにして厚い自己資本を積む。地盤の性格と歩みの違いが数字に表れている。
大和の地とともに——奈良中央信用金庫の歩み
奈良中央信用金庫は、大和の地の商人や事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。奈良盆地の商店、農家、中小事業者、そして大阪へ通う住民——こうした人々が預金を預け、必要なときに資金を借りる。奈良中央信用金庫は、合併を経て、奈良県内有数の規模へと成長してきた。
奈良盆地という土地は、信用金庫にとって、預金を集めやすい一方で、貸出先には限りのある地盤だ。大阪のベッドタウンとして人口は多く、預金は豊富に集まる。しかし、大企業や工場の集積は大阪・京都ほどではなく、信用金庫が貸す中小向けの資金需要には、おのずと限りがある。豊富に預金は集まるが、それを貸し切るだけの貸出先は乏しい——この構図が、41.0%という低い預貸率と、厚い自己資本の背景にあると読める。集めた預金のうち貸出に回りきらない分は運用などに向かい、そこで積み上がった利益が、厚い資本となってきたと読める。
17.12%の資本を、大和の地から読む
奈良中央信用金庫の自己資本比率17.12%という厚さは、豊富な預金を集めながら、貸出を抑えめにし、運用などで着実に利益を積んできたことの表れだと読める。貸出先の乏しい奈良盆地では、預金を無理に貸し切るのでなく、堅実に運用して利益を蓄え、それを資本として厚く積む。地域経済が落ち込んでも揺るがず在り続けるための、分厚い備えがここにある。
預貸率41.0%という低さは、その裏返しだ。貸出先の乏しい地盤では、貸出は預金の4割にとどまる。不良債権比率4.42%というやや高めの数字は、貸出先の事情を映すが、厚い自己資本が十分に吸収できる。豊富な預金を集め、貸出を抑えめにし、運用で利益を積み、厚い資本で守りを固める——それが、奈良中央信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。よく貸す奈良信用金庫とは対照的なこの姿は、同じ奈良県でも信金によって生き方が分かれることを示している。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
奈良の経済とともに
奈良中央信用金庫の数字は、古代以来の歴史を抱える大和の地と、そこで豊富な預金を集めながら厚い自己資本を積む大型信金の歩みの、両方を映している。預金の4割を地元に貸しながら、運用で利益を積み、厚い自己資本で守りを固めてきた。貸出先の乏しい奈良盆地の経済が、41.0%という低い預貸率と、17.12%という厚い自己資本に表れている。
銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。奈良中央信用金庫を見れば、大和の地の経済と、そこで厚い資本を積む大型信金の姿が浮かぶ。奈良県の他の金融機関は、大和盆地の大和信用金庫、県唯一の地銀南都銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。奈良県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、奈良県の地域金融機関のページへ。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。奈良信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(磯城郡田原本町に本店を置き、奈良盆地の中央部を中心に県北・中部を地盤とする信用金庫であること、合併を経て奈良県内有数の規模になったこと、田原本町周辺が古代に大和王権の中心が置かれた歴史の濃い土地であること、奈良盆地が大阪のベッドタウンの性格を持つこと)に関する記述=奈良中央信用金庫および各種公開情報にもとづく。
奈良・大和の地理・経済(奈良盆地、磯城郡、田原本町、大和王権、古墳、ベッドタウン)に関する記述=各種公開情報。