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糸魚川信用組合——ヒスイとフォッサマグナの地で、まちと運命をともにする信組

預貸率39.1%、不良債権比率7.94%。新潟県糸魚川市に本店を置く糸魚川信用組合「いとしん」。ヒスイとフォッサマグナの地で、「まちの存亡は、いとしんの存亡」と掲げ、まちづくりに踏み込む小さな地域信組の数字を読みます。

ニホン銀行紀行 ・ 新潟県

新潟県糸魚川市に本店を置く糸魚川信用組合は、地元で「いとしん」と呼ばれる、小さな地域信用組合です。預金697億円、貸出金273億円、店舗6。1951年の創業以来、相互扶助の理念のもと、新潟県の最西端・糸魚川の地に根を張ってきました。

本店のある糸魚川市は、地球の歴史が地表に現れた、特別な土地です。日本列島を東西に分ける大断層「フォッサマグナ」の西端、糸魚川―静岡構造線が走る地であり、その地下深くで生まれた美しい鉱物「ヒスイ」の産地としても知られます。市全域がユネスコ世界ジオパークに認定され、フォッサマグナミュージアムには大地の物語が展示されています。古くは塩の道(千国街道)の起点として栄え、日本海に面した交通の要衝でもありました。この、地質と歴史が重なる土地柄が、糸魚川信用組合の数字を読む鍵になります。

この信用組合の数字で目を引くのは、不良債権比率7.94%という高さと、預貸率39.1%という低さの組み合わせです。集めた預金の4割ほどを貸しながら、焦げ付きはかなり高い。この二つを、糸魚川という土地から読みます。

まず、数字を並べる

糸魚川信用組合の預金は697億円、貸出金は273億円、預貸率39.1%。自己資本比率は6.57%、不良債権比率は7.94%。中小企業等向けの貸出先は2,566件です。

糸魚川信用組合(令和7年3月末)
預金697億円
貸出金273億円
預貸率39.1%
自己資本比率6.57%
不良債権比率7.94%
中小企業等向け貸出先2,566件
店舗6店

高い焦げ付きと低い預貸率。小さな信組が抱える数字を、糸魚川の土地から読む。

7.94%と39.1%を、まちと運命をともにする信組として読む

不良債権比率7.94%という高さと、預貸率39.1%という低さ。この組み合わせを、糸魚川という土地と、この信組のあり方から読みます。

糸魚川市は、新潟県の最西端に位置し、人口減少と高齢化が進む地方都市です。糸魚川信用組合が貸す相手は、その地元の中小事業者や住民。人口が減り、産業が細っていく土地で、地元の小さな事業者に貸し続ければ、債権の質には負荷がかかりやすい。不良債権比率7.94%という高さは、こうした地方の現実を映していると読めます。預貸率が39.1%と低いのも、貸出を大きく伸ばせる優良な借り手が地元に限られるという、地方の信組に共通する事情によるものと考えられます。

だが、この信組には、数字だけでは見えない特徴があります。「まちの存亡は、いとしんの存亡」。糸魚川信用組合は、そう自らに言い聞かせるように、まちづくりに深く踏み込んできました。2004年には組合内に「まちづくり推進室」を設置。デジタル地域通貨「翠(みどり)ペイ」の発行、地域のマルシェ、地元の起業家を応援する取り組み、採算を度外視した年金の届けサービス——金融の枠を超えて、まちそのものを元気にしようとする。対面営業で培った顔の見える関係が、この信組の財産です。高い不良債権比率は、人口減少のなかで地元と運命をともにし、小さな借り手から逃げずに向き合ってきたことの裏返しとも読めます。もちろん、この比率には個別の事情も絡むため断定はできませんが、ヒスイとフォッサマグナの地で、まちと一体に生きる信組であることを抜きに、この数字は読めません。

糸魚川信用組合が示すのは、まちと運命をともにする信組の姿です。人口が減る土地で、地域通貨やまちづくりにまで踏み込み、小さな借り手から逃げない。高い不良債権比率は、危うさであると同時に、地元と一体に生きてきた距離の近さの表れとも読めます。

同じ新潟の、地域信組と並べてみる

同じ新潟県には、新潟大栄信用組合という地域信用組合もあります。新潟大栄信用組合も、新潟の地で小さな借り手に向き合う信組でした。糸魚川信用組合(自己資本比率6.57%・不良債権比率7.94%)と並べると、人口減少が進む地方で、薄い自己資本のもと、地元の小さな事業者に寄り添って貸すという、地域信組に共通する厳しさと役割が見えてきます。これは危うさであると同時に、大きな金融機関が引きにくい現場を、誰かが支えているということでもあります。新潟のもうひとつの地域信組の姿は、新潟大栄信用組合の記事もあわせてどうぞ。

なぜ、こうなったのか——制度のかたち

糸魚川信用組合のような信用組合は、中小企業等協同組合法などにもとづく協同組織です。信用組合は、組合員による相互扶助を目的とし、その営業地域(地区)も限られています。糸魚川信用組合の地区は、糸魚川市とその周辺という、限られた範囲。狭い地区のなかで、組合員である地元の中小事業者や住民の相互扶助を担う——この制度のかたちが、まちと一体になって地域を支えるという、この信組のあり方の土台にあります。地域金融機関を読むとき、その組織が地域とどれだけ深く結びついているかを知ることは、数字の意味を正しく受け取るために欠かせません。

借り手にとっての意味

地元と運命をともにする信用組合は、地域の事業者にとって、もっとも近い相談相手のひとつです。とりわけ、人口減少地域で商いを続ける小さな事業者にとって、まちづくりにまで踏み込む信組の存在は心強いものです。高い不良債権比率は、そうした借り手から逃げずに向き合ってきたことの裏返しでもあります。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、まちとの距離を映す

不良債権比率7.94%という高さと、預貸率39.1%という低さは、ヒスイとフォッサマグナの地で、人口減少のなかでも地元と一体に生き、小さな借り手から逃げずに向き合ってきた信組の姿を映しています。効率を重んじて守る金融機関もあれば、まちと運命をともにして踏み込む信組もある。数字は、その金融機関がまちと、どんな距離で向き合ってきたかを語ります。糸魚川信用組合の数字は、大地の物語が眠るまちに生きる「いとしん」の、いまの記録です。

同じ新潟県の県北には、鮭と城下町の文化で知られる村上に根ざす村上信用金庫があります。人口減少の進む土地で、高めの焦げ付きを抱えながらも厚い自己資本や地元への関わりでそれに耐えるという点で、糸魚川信用組合と村上信用金庫は似た傾向を持ちます。これは、人口減少の進む新潟県内の小規模な金融機関が、それぞれ厳しい土地で地域を支えているという共通の事情の表れと読めます。鮭の城下町の信金の姿は、村上信用金庫の記事もあわせてどうぞ。

各地の金融機関には、それぞれの土地と成り立ちの事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。新潟県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、新潟県の地域金融機関のページもどうぞ。

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
糸魚川信用組合の沿革(1951年創業、相互扶助の理念)、2004年のまちづくり推進室の設置、デジタル地域通貨「翠ペイ」やマルシェ等のまちづくりの取組み、「まちの存亡は、いとしんの存亡」の姿勢に関する記述=糸魚川信用組合および各種公開情報にもとづく。
糸魚川市のフォッサマグナ・糸魚川―静岡構造線・ヒスイ・ユネスコ世界ジオパーク・塩の道に関する記述=糸魚川市・各種公開情報。
新潟大栄信用組合に関する記述=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末および各種公開情報。
信用組合の制度(中小企業等協同組合法等にもとづく協同組織であり、組合員資格と地区が定められること)に関する記述=関係法令および金融庁等の公開資料にもとづく一般的な説明。

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