豊和銀行——自己資本2.2%まで落ちた大分の銀行は、公的資金を経た再生のあと何に貸すか
預貸率76.7%、預金5,596億円、店舗42。大分県大分市に本店を置く豊和銀行。2006年の金融庁検査で自己資本比率が2.2%まで落ち込み早期是正措置を受け、2014年に公的資金の注入を経て再生した第二地方銀行。その数字と歴史を読む。
大分市、別府湾に面した県都に、豊和銀行の本店はある。大分県を地盤とする第二地方銀行だ。預金は5,596億円、貸出金は4,293億円、店舗は42。預貸率は76.7%。県のトップバンクである地方銀行・大分銀行があり、豊和銀行はそれに次ぐ県内第二の銀行という性格を持つ。
この銀行の歴史には、ひときわ厳しい時期が刻まれている。2006年、金融庁の検査で、自己資本比率がわずか2.2%まで落ち込んでいることが明らかになった。銀行の体力を示す自己資本比率が一桁の前半まで下がるのは、経営の危機を意味する。豊和銀行は早期是正措置を受け、その後、公的資金の注入を経て再生の道を歩んだ。危機の淵から立ち直った銀行——それが、この銀行の歩みである。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。豊和銀行の預金は5,596億円、貸出金は4,293億円。預貸率は76.7%で、預金の8割弱を貸出に回している。自己資本比率は10.67%。不良債権比率は5.45%と、やや高い。店舗数は42、中小企業等への貸出残高は3,821億円にのぼる。
| 預金 | 5,596億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 4,293億円 |
| 預貸率 | 76.7% |
| 自己資本比率 | 10.67% |
| 不良債権比率 | 5.45% |
| 中小企業等向け貸出残高 | 3,821億円 |
| 店舗 | 42店 |
自己資本比率は10.67%まで回復。不良債権比率5.45%は再生途上の事情を映す。
無尽から始まり、危機の淵に立った
豊和銀行の源流は、1949年(昭和24年)に設立された大豊殖産無尽株式会社にさかのぼる。庶民が小銭を出し合う相互金融・無尽から出発し、豊和相互銀行を経て、第二地方銀行・豊和銀行となった。大分を本拠に、福岡や熊本にも店舗を構え、地元の中小企業に貸してきた。
だが、2000年代に入って、豊和銀行は深刻な経営難に陥る。2006年(平成18年)、約2か月に及ぶ金融庁の検査によって、大幅な赤字となることが明らかになった。自己資本比率は2.2%まで落ち込んでいた。国内の銀行に求められる最低水準(当時、国内基準で4%)を大きく下回る数字である。同年4月、豊和銀行は金融庁から早期是正措置を受けた。これは、自己資本が不足した銀行に対し、経営の立て直しを命じる行政処分だ。バブル崩壊後の不良債権処理が長引き、地方の第二地銀の体力が削られていった、その厳しさを象徴する出来事だった。
公的資金を経て、再生の道へ
危機に陥った豊和銀行は、自力での立て直しに加え、公的な支えを受けることになった。2014年(平成26年)、金融庁は、金融機能強化法に基づく公的資金の注入を決定した。金融機能強化法とは、健全な銀行に国が資本を注入し、地域経済を支える融資余力を保たせるための制度だ。豊和銀行は、この公的資金を受けて自己資本を厚くし、再生の道を歩んだ。
その結果、令和7年3月末の自己資本比率は10.67%まで回復している。危機の時期の2.2%からは、大きく立ち直った。危機の淵から、公的な支えを借りて再生する——豊和銀行の歩みは、平成の金融危機の後始末を地方の銀行がどう乗り越えたかを示す、一つの記録である。一方で、不良債権比率は5.45%と、いまもやや高い。長く処理を続けてきた過去の不良債権と、再生途上にある地域経済の事情が、この数字に映っていると読める。
76.7%を、再生と地域から読む
預貸率76.7%は、第二地方銀行として標準的な水準だ。集めた預金の8割弱を貸出に回している。よく貸す部類でも、運用に偏る部類でもない。この、ある意味で慎重な数字は、再生を経た銀行ならではの堅実さを映していると読める。
一度、自己資本が大きく傷ついた銀行は、無理に貸出を伸ばして再びリスクを抱えることを避け、慎重に貸す。それでも、地元の中小企業を支える役割は手放せない。中小企業等向け貸出残高は3,821億円で、貸出の大半を地元の中小に向けている。やや高い不良債権比率5.45%は、危機を経た銀行が、苦しい取引先を簡単には切り捨てずに抱えてきた面も映しているのだろう。再生を経て慎重に、しかし地元には貸し続ける——その立ち位置が、76.7%という数字の背後にある。
危機を越えた銀行の、いまの記録
豊和銀行の預貸率76.7%は、別府湾に開けた大分という土地と、危機の淵から公的資金を経て再生したという歴史の、両方を映している。無尽から始まり、自己資本2.2%という危機を経て、いまは10%台まで体力を取り戻し、県内第二の銀行として地元の事業者に貸している。数字は、その金融機関がどんな苦境を越え、いまどこに立っているかを語る。豊和銀行の数字は、再生を遂げた地方銀行の、いまの記録である。
各地の金融機関には、それぞれの成り立ちと土地の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。大分県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、大分県の地域金融機関のページもどうぞ。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
沿革(1949年の大豊殖産無尽設立を発祥とすること、豊和相互銀行を経て豊和銀行となったこと、福岡県・熊本県にも店舗を持つこと)に関する記述=各種公開情報。
経営危機と再生(2006年の金融庁検査で自己資本比率が2.2%まで落ち込み早期是正措置を受けたとされること、2014年に金融機能強化法に基づく公的資金の注入が決定されたこと)に関する記述=各種公開情報および報道。
大分県の状況(県都・大分、大分銀行が県内トップ行であること)に関する記述=各種公開情報。