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大分信用金庫——破綻した信金を引き受けた「だいしん」は、何を守るか

自己資本比率20.29%、預貸率44.5%。大分市に本店を置く大分信用金庫「だいしん」。経営破綻した臼杵・佐伯の信金の事業を引き受け、厚い自己資本で県都に根ざす信金の数字を、守りの経営から読みます。

ニホン銀行紀行 ・ 大分県

大分県大分市に本店を置く大分信用金庫は、地元で「だいしん」と呼ばれる信用金庫です。預金2,458億円、貸出金1,094億円、店舗24。1922年の創業以来、県都・大分市を中心に営業し、シンボルマークには矢車草を採用しています。

この信金の歩みには、地域の金融を支えてきた一面があります。2002年、大分信用金庫は、経営破綻した臼杵信用金庫と佐伯信用金庫の事業を相次いで引き受けました。これにより、営業エリアは大分市から臼杵市・佐伯市へと広がりました。破綻した同業の事業を承継するということは、その地域の預金者と取引先を引き受け、地域金融の空白を埋めるということです。県都の信金が、近隣の破綻信金の受け皿となった——この歩みが、大分信用金庫の数字を読む鍵になります。

この信用金庫の数字で目を引くのは、自己資本比率20.29%という厚さです。預貸率は44.5%で、集めた預金の4割半ばを貸出に回しています。厚い自己資本と控えめな預貸率——この組み合わせは、守りを固めた信金の姿を示しています。

まず、数字を並べる

大分信用金庫の預金は2,458億円、貸出金は1,094億円、預貸率44.5%。自己資本比率は20.29%と厚く、不良債権比率は4.92%。中小企業等向けの貸出先は1万1,206件にのぼります。

大分信用金庫(令和7年3月末)
預金2,458億円
貸出金1,094億円
預貸率44.5%
自己資本比率20.29%
不良債権比率4.92%
中小企業等向け貸出先11,206件
店舗24店

自己資本比率20.29%という厚み。破綻信金を引き受けてきた「だいしん」の守りを読む。

20.29%という、厚い自己資本を読む

自己資本比率20.29%は、信用金庫として厚い水準です。預貸率44.5%という控えめさと合わせて読むと、堅実に守りを固める経営の姿が見えてきます。

大分信用金庫が貸す相手は、県都・大分市を中心とする地元の中小事業者です。大分市は、臨海部に製鉄や石油化学のコンビナートを抱える一方、県都として商業・サービス業も集まるまちです。だいしんが向き合うのは、その足元の中小・零細の事業者や住民です。破綻した臼杵・佐伯の信金の事業を引き受けてきた歴史は、地域金融の担い手としての責任を負ってきたということでもあります。厚い自己資本は、こうした事業承継を含む経営のなかで、不測の事態に備える体力を保ってきた結果と読めます。不良債権比率4.92%というやや高めの水準は、承継した取引先や地方の中小事業者を抱えることと無縁ではないと考えられますが、それを十分に受け止められるだけの資本を積んでいる、ともいえます。

預貸率が44.5%と控えめなのは、人口減少が進む地方の信金に共通する事情です。貸出を大きく伸ばせる優良な借り手は限られ、集めた預金のうち貸出に回しきれない分は有価証券などの運用に向かいます。派手に貸して規模を追うのではなく、自己資本を厚く積み、地域金融の担い手として足元を固める——だいしんの数字からは、そうした守りの姿勢が読み取れます。もちろん、これらの比率には個別の事情や経営方針も絡むため断定はできませんが、破綻信金の受け皿となってきた歩みを抜きに、この数字は読めません。

大分信用金庫が示すのは、地域金融の担い手としての守りです。破綻した近隣の信金を引き受け、その地域の預金者と取引先を支えてきた。自己資本比率20.29%という厚みは、地域金融の空白を埋める責任を負いながら、堅実に足元を固めてきたことの表れと読めます。

守りを固める信金として、並べてみる

本紀行では、厚い自己資本で守りを固める信金をいくつも見てきました。たとえば兵庫の但馬信用金庫は、自己資本比率22.7%・預貸率38.5%という、よく似た守りの数字を持っていました。大分信用金庫(自己資本20.29%・預貸率44.5%)と並べると、地方で人口減少に向き合う信金が、厚い自己資本と控えめな預貸率という「守りのかたち」に行き着く点で共通しています。土地は違っても、地方の信金が選ぶ生存戦略には、似た形が現れる。但馬信用金庫の姿は、但馬信用金庫の記事もあわせてどうぞ。

なぜ、こうなったのか——制度と地域

大分信用金庫が地元に貸す信金であることの背景には、信用金庫という制度があります。信用金庫が融資できる相手は原則として「会員」に限られ、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人、と定められています。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれません。

この制度のもとでは、貸す相手はおのずと地元の中小事業者や住民に絞られます。大分信用金庫にとって、その「地元」とは、県都・大分市を中心に、事業承継によって広がった臼杵・佐伯を含む地域経済です。破綻した同業の事業を引き受けてきた歩みは、信用金庫が地域の金融インフラとして果たす役割を、はっきりと示しています。

借り手にとっての意味

地元に根ざす信用金庫は、地域の事業者にとって身近な相談相手です。とりわけ、県都・大分の中小事業者や、事業承継で受け継がれた地域の取引先にとって、土地の事情を知る信金の存在は心強いものです。厚い自己資本は経営の安定を示しますが、それが個別の融資の可否を決めるわけではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、守りの歩みを映す

自己資本比率20.29%という厚みと、預貸率44.5%という控えめさは、破綻した近隣の信金を引き受け、地域金融の担い手として堅実に足元を固めてきた信金の姿を映しています。積極的に貸す金融機関もあれば、自己資本を厚く積んで守る金融機関もある。数字は、その金融機関がどんな歩みを重ね、何を守ってきたかを語ります。大分信用金庫の数字は、県都に根ざし地域を支えてきた「だいしん」の、いまの記録です。

同じ大分県でも、県西部の山あいの天領・日田には日田信用金庫があります。破綻した信金を引き受けて規模を保ち、県都で厚い自己資本を積む大分信用金庫と、預金440億円と日本一小さな器を守り抜く日田信用金庫とを並べると、同じ県でも規模と成り立ちの違いが見えてきます。日本一小さな信金の姿は、日田信用金庫の記事もあわせてどうぞ。

各地の金融機関には、それぞれの土地と歩みの事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。大分県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、大分県の地域金融機関のページもどうぞ。

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
大分信用金庫の沿革(1922年創業、2002年に臼杵信用金庫・佐伯信用金庫の事業を承継)、シンボルマークの矢車草に関する記述=大分信用金庫および各種公開情報にもとづく。
大分市の県都・臨海工業地帯としての性格に関する記述=各種公開情報。
但馬信用金庫の数値=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=金融庁 金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」資料『協同組織金融機関の「地区」のあり方』(2008年6月20日・神吉正三)。

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