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津山信用金庫——美作の城下町で、信金は何に貸すか

預貸率44.3%、預金1,497億円。津山市に本店を置く津山信用金庫。美作(みまさか)の城下町・津山に根ざす信金が、預金の4割強を地元に貸す姿を、岡山県北部という土地から読みます。

ニホン銀行紀行 ・ 岡山県

岡山県津山市に本店を置く津山信用金庫は、地元で「つやましんきん」と呼ばれる信用金庫です。預金1,497億円、貸出金662億円、店舗14。岡山県北部、美作(みまさか)地域の中心都市・津山を地盤とする信用金庫です。

本拠地の津山市は、岡山県北部の中心都市です。かつて津山藩・森氏の城下町として栄え、津山城(鶴山公園)を中心に古い町並みが残る土地です。中国山地に抱かれた美作地域は、農業や林業、食品加工、そして地域の商業に支えられてきました。岡山市・倉敷市といった県南の都市部からは離れた、県北の地域経済の中心です。この、県北の城下町という土地柄が、津山信用金庫の数字を読む鍵になります。

数字の面で見ておきたいのは、預貸率44.3%という水準です。集めた預金の4割強を貸出に回しています。

まず、数字を並べる

津山信用金庫の預金は1,497億円、貸出金は662億円、預貸率44.3%。自己資本比率は10.68%、不良債権比率は2.61%。中小企業等向けの貸出先は5千件を超えます。

津山信用金庫(令和7年3月末)
預金1,497億円
貸出金662億円
預貸率44.3%
自己資本比率10.68%
不良債権比率2.61%
中小企業等向け貸出先5,908件
店舗14店

預貸44.3%・自己資本10.68%。美作の城下町に根ざす信金の数字。

44.3%を、県北の城下町から読む

預貸率44.3%は、信用金庫として中庸からやや低めの水準です。集めた預金の4割強を貸出に回し、残りは有価証券などの運用にあてています。本紀行で見てきた、地方の信金に共通する水準です。

津山信用金庫が貸す相手は、津山を中心とする美作地域の中小事業者と個人です。農業・林業に連なる事業者、食品加工、地域の商業・建設・サービス業、そして個人の住宅資金が、その融資先に含まれると考えられます。県南の岡山市・倉敷市のような工業地帯や大都市圏とは異なり、県北の美作は、人口減少が進み、旺盛な資金需要が次々と生まれる土地ではありません。集めた預金を地域だけで貸し切れず、あふれた分が運用に向かう——預貸率44.3%という水準は、こうした県北の地方都市の信金の構造的な姿と読めます。

不良債権比率2.61%は、地方の信金として特別に高くも低くもない水準です。自己資本比率10.68%という相応の厚みとあわせて、堅実な経営がうかがえます。無理に貸して焦げ付きを増やすのではなく、堅実な貸出と相応の自己資本で、県北の地域経済を長く支える——津山信用金庫の数字からは、そうした姿勢が読み取れます。もちろん、これらの比率には個別の事情や経営方針も絡むため断定はできませんが、県北の城下町・津山という土地を抜きに、この数字は読めません。

津山信用金庫が示すのは、県北の城下町に根ざし、地元の農林業と商業を堅実に支える信金の姿です。森氏の城下町として栄えた津山で、美作地域の中小と個人に貸す。預貸率44.3%という水準は、県南の都市部から離れた地方の信金が、地域に堅実に向き合ってきたことの表れと読めます。

なぜ、こうなったのか——制度と地域

津山信用金庫が地元の中小事業者に貸す信金であることの背景には、信用金庫という制度があります。信用金庫が融資できる相手は原則として「会員」に限られ、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の定める「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人、と定められています。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれません。

この枠のもとでは、貸す相手はおのずと地元の中小事業者や住民に絞られます。津山信用金庫にとって、その「地元」とは、城下町・津山を芯とする岡山県北部・美作地域の地域経済そのものです。会員資格が地区内に絞られるという制度の枠が、結果として「美作の農林業と商業に貸す信金」という姿を形づくっています。

同じ岡山の、瀬戸内の信金と並べてみる

本紀行には、同じ岡山県の備前日生信用金庫も登場しています。備前日生信金は、備前焼と牡蠣で知られる瀬戸内海沿いの備前地域に根ざす信金でした。県北の城下町・津山に根ざす津山信用金庫(預貸率44.3%)と、瀬戸内海沿いの備前に根ざす備前日生信用金庫とを並べると、同じ岡山県でも、中国山地の城下町と瀬戸内の海辺とで、それぞれの土地の事情を抱えながら信金が地域を支えていることが見えてきます。瀬戸内の信金の姿は、備前日生信用金庫の記事もあわせてどうぞ。

借り手にとっての意味

地元に根ざす信用金庫は、地域の事業者にとって身近な相談相手です。とりわけ、農林業や地域の商業を営む美作の中小事業者にとって、土地の事情を知る信金の存在は心強いものです。預貸率の水準は地盤の事情によるもので、それが個別の融資の可否を一律に決めるわけではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、県北の歩みを映す

預貸率44.3%という水準と、自己資本比率10.68%という相応の厚みは、森氏の城下町として栄えた津山に根ざし、美作地域の農林業と商業を堅実に支えてきた信金の姿を映しています。県南の都市部の信金もあれば、津山信用金庫のように県北の城下町に根ざす信金もある。数字は、その金融機関がどんな土地で、どんな歩みを重ねてきたかを語ります。津山信用金庫の数字は、美作の城下町を支える信金の、いまの記録です。

各地の金融機関には、それぞれの土地と歩みの事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。岡山県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、岡山県の地域金融機関のページもどうぞ。

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
津山信用金庫の地盤(津山市本店、岡山県北部・美作地域を地盤とする信用金庫であること)に関する記述=津山信用金庫および各種公開情報にもとづく。
津山市・美作地域の歴史と地理(津山藩・森氏の城下町、津山城・鶴山公園、中国山地、農業・林業・食品加工・商業)に関する記述=各種公開情報。
備前日生信用金庫の位置づけ=各種公開情報および本紀行既出記事。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=金融庁 金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」資料『協同組織金融機関の「地区」のあり方』(2008年6月20日・神吉正三)。

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