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埼玉信用組合——埼玉北部の信組は、なぜ焦げ付きが高めなのか

預貸率40.3%、不良債権比率7.02%。本庄市に本店を置く埼玉信用組合。児玉信用組合を源流とし、本庄・秩父・深谷など埼玉北部に根ざす小さな信組のやや高い焦げ付きを、土地の事情から読みます。

ニホン銀行紀行 ・ 埼玉県

埼玉県本庄市に本店を置く埼玉信用組合は、地元で「さいしん」とも呼ばれる信用組合です。預金1,204億円、貸出金486億円、店舗9。本庄市の児玉地区に本部を構え、埼玉県北部を中心に店舗を展開しています。マスコットキャラクターは、カワセミの「ピッピくん」です。

本拠地の埼玉県北部は、首都圏の一角でありながら、県南の都市部とはやや異なる性格を持つ土地です。本庄・深谷・熊谷といった都市と、秩父の山あいを抱え、農業や中小の製造業、地域の商業が経済を支えています。同じ埼玉でも、人口が密集し産業が集積する県南とは、経済の体温が異なります。この埼玉北部という土地に、埼玉信用組合は根を張ってきました。その成り立ちは、1950年、児玉町(現在の本庄市児玉町)に発足した「児玉信用組合」にさかのぼります。1972年に「埼玉信用組合」へと改称し、本庄・秩父・深谷・熊谷・児玉郡・秩父郡・寄居町を営業地域としてきました。この埼玉北部の地が、埼玉信用組合の数字を読む鍵になります。

この信用組合の数字で目を引くのは、不良債権比率7.02%という、やや高めの水準です。預貸率は40.3%で、集めた預金の4割ほどを貸出に回しています。この高めの焦げ付きを、埼玉北部という土地から読みます。

まず、数字を並べる

埼玉信用組合の預金は1,204億円、貸出金は486億円、預貸率40.3%。自己資本比率は9.11%、不良債権比率は7.02%。中小企業等向けの貸出先は5,733件です。

埼玉信用組合(令和7年3月末)
預金1,204億円
貸出金486億円
預貸率40.3%
自己資本比率9.11%
不良債権比率7.02%
中小企業等向け貸出先5,733件
店舗9店

不良債権比率7.02%というやや高めの数字。この焦げ付きを、埼玉北部から読む。

7.02%と40.3%を、埼玉北部の土地から読む

不良債権比率7.02%は、やや高めの水準です。預貸率40.3%という控えめさと合わせて読むと、埼玉北部という土地に根ざす小さな信組の現実が見えてきます。

埼玉信用組合が貸す相手は、本庄・深谷・熊谷・秩父といった埼玉北部の中小・小規模の事業者です。そのなかには、地域の小さな製造業や建設業、商店、そして秩父の山あいの事業者が含まれると考えられます。同じ埼玉でも、人口が密集し産業が集積する県南とは違い、県北部は人口減少や事業者の高齢化といった課題を抱えやすい地域です。こうした、構造的な課題を抱える地域の小さな事業者に貸し続けてきたことが、不良債権比率7.02%というやや高めの水準の背景にあると読めます。預貸率が40.3%と控えめなのも、貸出を大きく伸ばせる優良な借り手が地元に限られるという、地方の小さな信組に共通する事情によるものと考えられます。あふれた預金は有価証券などの運用に向かいます。

もっとも、不良債権比率には個別の大口先の事情や引当方針も絡むため、土地の事情だけが原因とは断じられません。ただ、首都圏の縁辺で、人口減少や高齢化の課題を抱える埼玉北部に根ざし、地元の小さな借り手に向き合ってきた信組であることを抜きに、この数字は読めません。自己資本比率9.11%は、こうしたリスクを抱えながら経営を続けるための、ぎりぎりの備えともいえます。高めの焦げ付きは、地域の事業者が抱える厳しさの裏返しであると同時に、そこから逃げずに貸し続けてきたことの表れとも読めます。

埼玉信用組合が示すのは、首都圏の縁辺で、地域の小さな借り手に向き合う信組の姿です。同じ埼玉でも、県南の繁栄とは異なる課題を抱える県北部で、小さな事業者に貸し続ける。やや高い不良債権比率は、その土地の厳しさと、逃げずに向き合ってきたことの両方を映していると読めます。

なぜ、こうなったのか——制度のかたち

埼玉信用組合のような信用組合は、中小企業等協同組合法などにもとづく協同組織です。信用組合は、組合員による相互扶助を目的とし、その営業地域(地区)も限られています。埼玉信用組合の地区は、本庄・秩父・深谷・熊谷・児玉郡・秩父郡・寄居町という、埼玉北部の限られた範囲。狭い地区のなかで、組合員である地元の中小事業者や住民の相互扶助を担う——この制度のかたちが、首都圏の縁辺の小さな借り手に向き合うという、この信組のあり方の土台にあります。地域金融機関を読むとき、その組織がどれだけ狭い地区に根ざしているかを知ることは、数字の意味を正しく受け取るために欠かせません。

同じ県の、信用金庫と並べてみる

同じ埼玉県には、信用金庫で全国屈指の規模を持つ埼玉縣信用金庫があります。埼玉縣信用金庫は、預金3.2兆円・店舗97という巨大さで、首都圏に近い埼玉北部の経済力を背景に、預貸率59%という数字を持っていました。預金1,204億円・店舗9の埼玉信用組合とは、規模がまるで違います。同じ埼玉北部を地盤にしながら、屈指の規模を誇る信用金庫と、小さな信用組合とでは、抱える数字も向き合う相手も異なる。これは優劣ではなく、規模と立場の差です。同じ土地の対照的な二つの金融機関を並べると、埼玉北部の金融の重層性が見えてきます。屈指の規模の信金の姿は、埼玉縣信用金庫の記事もあわせてどうぞ。

借り手にとっての意味

地元に根ざす信用組合は、地域の小さな事業者にとって、もっとも身近な相談相手のひとつです。とりわけ、埼玉北部で商いを営む小さな事業者にとって、地縁で事情を理解してくれる信組の存在は心強いものです。やや高めの不良債権比率は、そうした借り手に寄り添うことの裏返しでもあります。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、土地の体温を映す

不良債権比率7.02%というやや高めの数字と、預貸率40.3%という控えめさは、首都圏の縁辺で、人口減少や高齢化の課題を抱える埼玉北部に根ざし、地元の小さな借り手に向き合ってきた信組の姿を映しています。繁栄する都市の金融機関もあれば、その縁辺で課題を引き受ける信組もある。数字は、その金融機関がどんな土地で、誰に向き合ってきたかを語ります。埼玉信用組合の数字は、カワセミの飛ぶ埼玉北部に生きる信組の、いまの記録です。

各地の金融機関には、それぞれの土地と成り立ちの事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。埼玉県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、埼玉県の地域金融機関のページもどうぞ。

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
埼玉信用組合の沿革(1950年に児玉信用組合として発足、1972年に埼玉信用組合へ改称)、本庄・秩父・深谷・熊谷・児玉郡等を営業地域とすること、マスコット「カワセミピッピくん」に関する記述=埼玉信用組合および各種公開情報にもとづく。
埼玉県北部の地域経済(本庄・深谷・熊谷・秩父の産業、人口動向等)に関する記述=各種公開情報。
埼玉縣信用金庫の数値=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
信用組合の制度(中小企業等協同組合法等にもとづく協同組織であり、組合員資格と地区が定められること)に関する記述=関係法令および金融庁等の公開資料にもとづく一般的な説明。

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