遠州信用金庫——ものづくりの浜松で、二つの信金はどう貸し分けるか
預貸率46.8%、預金4,833億円、自己資本比率13.36%、不良債権比率5.78%。浜松市に本店を置く遠州信用金庫。ものづくりの都市・浜松に根ざし、同じ市内に本店を置く浜松磐田信用金庫と並び立つ信金が、何に貸すのか。その数字と歴史を読む。
- 2026.06.19【保証協会】26年度補正予算成立、セーフティネット保証5号の事前相談を開始。指定業種で、直近月の売上高が前年同月比で5%以上減少等の要件(経産省PDF)を満たす中小事業者が対象。
静岡県の浜松市に本店を置く遠州信用金庫は、預金4,833億円を持つ信用金庫だ。店舗25。「えんしん」の愛称で知られ、浜松市を中心に、静岡県西部の遠州地方を地盤としている。
本拠の浜松市は、ものづくりの都市として全国に知られる。オートバイ・自動車・楽器・繊維といった産業が育ち、世界的なメーカーがいくつもこの地から生まれた。「やらまいか(やってみよう)」の精神で語られる進取の気風が、製造業の集積を支えてきた。天竜川と遠州灘に挟まれた遠州平野には、こうした大企業の周りに無数の中小・零細の町工場が連なる。遠州信用金庫は、こうしたものづくりの浜松に根ざしてきた信金だ。
この浜松市には、もう一つ、市内に本店を置く大型の信用金庫がある。静岡県最大の浜松磐田信用金庫(預金2兆円超・預貸率49.0%)だ。同じ浜松市に本店を構える二つの信金が、並び立っている。遠州信用金庫の数字を、このもう一つの浜松の信金とも比べながら読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。遠州信用金庫の預金は4,833億円、貸出金は2,260億円。預貸率は46.8%で、預金の半分弱を貸出に回している。自己資本比率は13.36%、不良債権比率は5.78%。店舗数は25、中小企業等への貸出残高は2,258億円。
同じ浜松市に本店を置く浜松磐田信用金庫(預金2兆円超・預貸率49.0%・不良債権比率4.34%)と比べると、二つの信金は、似た預貸率で、ともにものづくりの遠州に貸している。規模では浜松磐田信用金庫が県内最大で、遠州信用金庫の4倍を超える。預貸率は46.8%対49.0%とほぼ並ぶ。不良債権比率は遠州信用金庫(5.78%)が浜松磐田信用金庫(4.34%)をやや上回る。自己資本比率13.36%は厚めで、焦げ付きを十分に吸収できる水準だ。規模で勝る浜松磐田と、厚い資本を持つ遠州——同じものづくりの都市で、二つの信金がそれぞれの姿で貸している。
| 遠州信用金庫 | 浜松磐田信金 | |
|---|---|---|
| 本店 | 浜松市 | 浜松市 |
| 預金 | 4,833億円 | 2兆円超 |
| 預貸率 | 46.8% | 49.0% |
| 自己資本比率 | 13.36% | — |
| 不良債権比率 | 5.78% | 4.34% |
同じ浜松市に本店を置く二つの信金。規模は浜松磐田信用金庫が県内最大だが、預貸率は近く、ともにものづくりの遠州に貸す。
ものづくりの浜松とともに——遠州信用金庫の歩み
遠州信用金庫は、遠州地方の中小・零細事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。オートバイ・自動車・楽器の関連部品をつくる町工場、繊維の事業者、地元の商店、そしてものづくりの街に住む人々——こうした人々が会員となり、預金を預け、必要なときに資金を借りる。合併を経て、遠州地方に根ざす信金へと歩んできた。
浜松という土地は、信用金庫にとって、ものづくりの資金需要のある地盤だ。世界的なメーカーの拠点があり、その周りに膨大な数の下請け・孫請けの中小・零細事業者が連なる。地元の中小に密着し、会員との関係のもとで貸す——この信用金庫ならではの貸し方が、預貸率46.8%という水準を支えている。一方、大企業そのものは大手銀行が主に資金を供給するため、信用金庫の貸出は中小に向かい、預金の残りは有価証券などの運用にも回る。自己資本比率13.36%という厚みは、その運用と利益の蓄積を映す。不良債権比率5.78%はやや高めだが、ものづくりの波の影響を受ける中小の浮き沈みを引き受けてきた跡だと読める。厚い資本は、その焦げ付きを十分に吸収できる備えでもある。
46.8%を、浜松から読む
遠州信用金庫の預貸率46.8%という水準は、ものづくりの浜松で、会員の資金需要に応えつつ、運用とのバランスを取っていることの表れだと読める。オートバイ・自動車・楽器・繊維のすそ野に広がる中小・零細事業者は、信用金庫が貸す相手のある土地だ。遠州信用金庫は、その層に密着して貸し、預金の半分弱を貸出に回している。残りは運用に向け、厚い自己資本を保っている。
自己資本比率13.36%という厚めの資本と、不良債権比率5.78%というやや高めの焦げ付きは、ものづくりの街で会員に貸し、地域の浮き沈みを引き受けてきたことを映す。もう一つの信金と並び立ちながら、ものづくりの中小に貸し、厚い資本を保つ——それが、遠州信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。同じ市内に二つの信金が並び立つという構図そのものが、浜松という土地に厚い中小の層があることの証でもある。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
静岡の経済とともに
遠州信用金庫の数字は、ものづくりの浜松という土地と、そこで中小に貸す信金の歩みの、両方を映している。預金の半分弱を地元の会員に貸し、厚い資本を保ちながら、浜松を中心とする遠州地方の中小・零細事業者を支えてきた。オートバイ・自動車・楽器・繊維のものづくり経済が、46.8%という預貸率に表れている。
銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。遠州信用金庫を見れば、ものづくりの浜松の経済と、そこで中小に貸す信金の姿が浮かぶ。静岡県の他の金融機関は、同じ浜松の浜松磐田信用金庫、遠洋漁業と県都のしずおか焼津信用金庫、県のトップバンク静岡銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。静岡県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、静岡県の地域金融機関のページへ。
遠州信用金庫は、地域に根ざした信用金庫です。借りる・備えるのどちらを考えるにしても、土台になるのは日頃の取引と信用。口座づくりから保証制度まで、どんな立場でも知っておきたい融資・銀行取引の基礎をまとめました。
- → 口座を育てる
- → 積立で信用をつくる
- → 与信枠の考え方
- → 創業支援保証とは
- → セーフティネット保証とは
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。浜松磐田信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(浜松市に本店を置き、「えんしん」の愛称で知られ、静岡県西部の遠州地方を地盤とする信用金庫であること、合併を経て遠州地方に根ざす信金になったこと、浜松市がオートバイ・自動車・楽器・繊維のものづくりの都市として知られ世界的なメーカーがこの地から生まれたこと、「やらまいか」の進取の気風が製造業の集積を支えてきたこと、天竜川と遠州灘に挟まれた遠州平野に中小・零細の町工場が連なること、同じ浜松市に浜松磐田信用金庫が本店を置くこと)に関する記述=遠州信用金庫および各種公開情報にもとづく。
浜松・遠州の地理・経済(浜松、遠州、天竜川、遠州灘、オートバイ、自動車、楽器、繊維、やらまいか、ものづくり)に関する記述=各種公開情報。
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