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富士信用金庫——紙のまち・富士で、信金は何に貸すか

預貸率43.9%、自己資本比率12.8%、不良債権比率5.84%。富士市に本店を置く富士信用金庫。吉原信用金庫と旧富士信用金庫の合併で生まれ、富士山の麓・製紙のまちに根ざす信金の数字を読みます。

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ニホン銀行紀行 ・ 静岡県

静岡県富士市に本店を置く富士信用金庫は、預金4,458億円、貸出金1,959億円、店舗20。富士市を中心に、富士山南麓の地域を地盤とする信用金庫です。

本店のある富士市は、静岡県の東部、富士山の南麓に開けた工業のまちです。豊富な富士山の伏流水と、駿河湾に注ぐ富士川の水運を背景に発展した、日本有数の製紙・紙加工業の集積地として知られます。トイレットペーパーやティッシュなどの家庭紙では全国でも屈指の生産量を誇り、まちには大小の製紙工場と、それを支える関連事業者が集まっています。東海道の宿場・吉原を母体とする商いの歴史も持つ、ものづくりと商業のまち——この、紙と水に支えられた土地柄が、富士信用金庫の数字を読む鍵になります。

この信用金庫は、1971年、富士信用金庫と吉原信用金庫が合併して発足しました。源流の一つである吉原信用金庫は、東海道の宿場町・吉原の信用組合を母体とし、戦後の信用金庫制度のもとで吉原信用金庫へと改組した信金です。製紙のまちと宿場のまち、二つの信金が一つになった歩みは、富士市の経済の成り立ちをそのまま映しています。数字の面で目を引くのは、預貸率43.9%という水準と、10,002件という中小企業等向け貸出先の多さです。

まず、数字を並べる

富士信用金庫の預金は4,458億円、貸出金は1,959億円、預貸率43.9%。自己資本比率は12.8%、不良債権比率は5.84%。中小企業等向けの貸出先は10,002件です。

富士信用金庫(令和7年3月末)
預金4,458億円
貸出金1,959億円
預貸率43.9%
自己資本比率12.8%
不良債権比率5.84%
中小企業等向け貸出先10,002件
店舗20店

預貸率43.9%・中小貸出先1万件。紙のまちに根ざす信金の数字を読む。

43.9%と1万件を、紙のまちから読む

預貸率43.9%は、信用金庫としては中庸の水準です。本紀行で見てきた、預貸率が3割台にとどまる地方の信金と比べれば、しっかり貸している方に入ります。あわせて目を引くのが、10,002件という中小企業等向け貸出先の多さです。これは、製紙とその関連産業を中心に、無数の小さな事業者へ資金を届けてきたことを示す数字です。

富士信用金庫が貸す相手は、富士市を中心とする富士山南麓の中小事業者です。製紙・紙加工とその関連の事業者、まちの建設業や商業、運送業が、その融資先に含まれると考えられます。製紙という地場産業の裾野は広く、原料や加工、物流まで多くの事業者が連なります。1万件を超える貸出先の数は、その裾野の広さに資金を行き渡らせてきた営みの厚みです。預貸率43.9%という中庸の水準は、地場産業の資金需要にしっかり応えてきた結果と読めます。

不良債権比率5.84%は、地方の信金としてやや高めの水準にあり、製紙という産業が国内外の競争や原燃料価格の変動にさらされてきたことも、その背景にあると考えられます。もちろん、これらの比率には個別の事情や経営方針も絡むため断定はできませんが、紙と水に支えられた富士市という土地を抜きに、この信金の数字は読めません。

富士信用金庫が示すのは、紙のまちの裾野を支える信金の姿です。製紙とその関連産業に連なる無数の事業者へ、1万件を超える貸出先として資金を届ける。中庸の預貸率は、地場産業の資金需要にしっかり応えてきた信金の輪郭を映しています。

なぜ、こうなったのか——制度と地域

富士信用金庫が地元に貸す信金であることの背景には、信用金庫という制度があります。信用金庫が融資できる相手は原則として「会員」に限られ、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人、と定められています。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれません。

この制度のもとでは、貸す相手はおのずと地元の中小事業者や住民に絞られます。富士信用金庫にとって、その「地元」とは、製紙とその関連産業が集積する富士市を中心とした富士山南麓の地域経済です。大手の製紙会社そのものには規模の面で貸せなくても、その産業の裾野に連なる無数の中小事業者を支えることこそが、信金の役割です。1万件を超える貸出先は、その役割を地場産業の土地で果たしてきた証しと読めます。

同じ県の、金融機関と並べてみる

同じ静岡県を代表する地銀として、静岡銀行(預貸率89.6%)も本紀行に登場しています。県土全体を相手にする県地銀・静岡銀行(預貸率89.6%)と、富士山南麓の製紙のまちに根ざすこの富士信用金庫(預貸率43.9%)とを並べると、同じ静岡でも、県全域を相手にする地銀と、特定地域の地場産業に密着する信金とで、貸す範囲も性格も異なることが見えてきます。県全体を支える地銀の姿は、静岡銀行の記事もあわせてどうぞ。

富士山をはさんだ隣のまちには、富士宮信用金庫があります。預貸率41.3%の富士宮信用金庫と、預貸率43.9%の富士信用金庫は、ともに富士山南麓に根ざす信金どうしです。同じ富士の山麓でも、製紙のまち富士と、浅間大社の門前町・富士宮とで、土地の性格は異なります。隣り合うまちの信金の姿は、富士宮信用金庫の記事もあわせてどうぞ。

借り手にとっての意味

地元に根ざす信用金庫は、地域の中小事業者にとって、身近な相談相手です。とりわけ、製紙やその関連の仕事を担う富士の事業者にとって、土地の事情と地場産業を知る信金の存在は心強いものです。中庸の預貸率と多い貸出先は、地場産業にしっかり向き合う姿勢の表れとも読めますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、根を張る土地を映す

預貸率43.9%という中庸の水準と、10,002件という貸出先の多さは、富士山の伏流水に支えられた紙のまちに根を張り、地場産業の裾野に資金を届けてきた信金の姿を映しています。数字は、その金融機関がどんな土地で、誰に向き合ってきたかを語ります。富士信用金庫の数字は、富士山を仰ぐ製紙のまちに根ざす信金の、いまの記録です。

各地の金融機関には、それぞれの土地と産業の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。静岡県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、静岡県の地域金融機関のページもどうぞ。

富士信用金庫と融資・保証のはなし

富士信用金庫は、地域に根ざした信用金庫です。借りる・備えるのどちらを考えるにしても、土台になるのは日頃の取引と信用。口座づくりから保証制度まで、どんな立場でも知っておきたい融資・銀行取引の基礎をまとめました。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、相対的に融資先を求めている可能性をうかがう一つの目安になる。ただし、有価証券運用を主体とする金融機関は、預貸率が低くても融資に積極的とは限らない。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
富士信用金庫の沿革(1971年に富士信用金庫と吉原信用金庫が合併して発足、吉原信用金庫は東海道の宿場町・吉原の信用組合を母体とする)、富士市を中心に富士山南麓を事業区域とすることに関する記述=富士信用金庫公開情報・各種公開情報にもとづく。
富士市の製紙・紙加工業、富士山の伏流水、富士川、東海道吉原宿に関する記述=各種公開情報。
静岡銀行・富士宮信用金庫の数値=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=金融庁 金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」資料『協同組織金融機関の「地区」のあり方』(2008年6月20日・神吉正三)。

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