富士宮信用金庫——富士山本宮浅間大社の門前町で、みやしんはなぜ資本が厚いか
預貸率41.3%、預金4,122億円、自己資本比率21.79%、不良債権比率7.37%。静岡県富士宮市に本店を置く富士宮信用金庫。富士山本宮浅間大社の門前町に根ざし、市内唯一の地域金融機関である「みやしん」が、なぜこれほど厚い資本を持つのか。同じ静岡東部の信金と比べながら、その数字と歴史を読む。
静岡県の富士宮市に本店を置く富士宮信用金庫は、預金4,122億円を持つ信用金庫だ。店舗19。地元で「みやしん」と呼ばれ、富士宮市を中心に展開する。富士宮市に本店を置く唯一の地域金融機関であり、富士山本宮浅間大社の門前町に根ざす信金だ。
本拠の富士宮市は、霊峰・富士山の西麓に広がるまちだ。全国に1,300社あまりある浅間神社の総本宮・富士山本宮浅間大社の門前町として発展し、湧玉池に代表される富士の豊かな湧水に恵まれてきた。この清冽な水を活かして、製紙業や食品工業、近年では「富士宮やきそば」のまちとしても知られる。富士山が世界文化遺産に登録された際には、浅間大社や湧玉池がその構成資産となった。富士宮信用金庫は、こうした富士の湧水と信仰のまちに根ざし、地域の中小事業者と住民に貸してきた。金庫のシンボルマークは、そびえたつ富士をかたどっている。
この信金の数字で最も際立つのは、自己資本比率21.79%という、突出した厚さだ。預金4,122億円という規模に対し、資本を極めて手厚く積んでいる。預貸率は41.3%で、預金の4割ほどを貸出に回している。富士のふもとの信金は、なぜこれほど資本を厚く保つのか。同じ静岡東部の信金とも比べながら、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。富士宮信用金庫の預金は4,122億円、貸出金は1,704億円。預貸率は41.3%で、預金の4割ほどを貸出に回している。自己資本比率は21.79%、不良債権比率は7.37%。店舗数は19。
同じ静岡県東部の信金と比べてみる。三島・伊豆を地盤とする三島信用金庫(預貸率47.1%・自己資本比率20.65%)、駿河湾の沼津を地盤とする静岡焼津信用金庫などと並ぶ静岡東部のなかで、富士宮の沼津信用金庫(預貸率42.1%・自己資本比率16.11%)とも近い地域だ。富士宮信用金庫の自己資本比率21.79%は、資本が厚いことで知られる三島信金(20.65%)をも上回り、静岡東部の信金のなかでも際立って厚い。預貸率41.3%は4割台で、預金の半分以下を貸出に回している。貸出を抑えめにして、資本を極めて厚く積む——富士のふもとの守りの経営がうかがえる。一方で不良債権比率7.37%はやや高めで、地域の事業の浮き沈みを引き受けてきたことをうかがわせる。厚い資本は、その備えでもあると読める。
| 富士宮信用金庫 | 三島信用金庫 | 沼津信用金庫 | |
|---|---|---|---|
| 本店 | 富士宮市 | 三島市 | 沼津市 |
| 預貸率 | 41.3% | 47.1% | 42.1% |
| 自己資本比率 | 21.79% | 20.65% | 16.11% |
| 不良債権比率 | 7.37% | 5.46% | 6.23% |
いずれも静岡県東部の信金。富士のふもとの信金は総じて資本が厚い。そのなかでも富士宮は最も厚く、貸出は抑えめだ。
大宮町信用組合から——富士宮信用金庫の歩み
富士宮信用金庫は、1933年(昭和8年)6月、「有限責任大宮町信用組合」として発足した。当時の地名・大宮町(浅間大社の門前町としての旧称)に由来する。1942年(昭和17年)、富士宮市の市制施行にともない富士宮市信用組合に改称し、1950年(昭和25年)に中小企業等協同組合法に基づく信用組合へ改組、翌1951年(昭和26年)10月、信用金庫法に基づき富士宮信用金庫となった。本店は富士宮市元城町に置かれ、略称は「みやしん」。2023年(令和5年)には創立90周年を迎えた。1993年には公益財団法人みやしん地域振興協力基金を設立するなど、地域への貢献にも取り組んできた。富士宮市に本店を置く唯一の地域金融機関として、地域とともに歩んでいる。
富士の湧水と信仰のまち・富士宮という土地は、信用金庫にとって独特の地盤だ。浅間大社の門前の商い、富士の湧水を活かした製紙・食品工業、富士山観光、そして富士宮やきそばに代表される地場の中小商工業——堅実だが、大型の資金需要が次々と生まれる土地ではない。隣接する富士市には大手製紙工場が集積するが、そうした大企業の資金は地銀やメガバンクが担う。信金が貸すのは、富士宮の中小と住民だ。だから貸出は預金の4割ほどにとどまり、その分、資本を極めて厚く積む。自己資本比率21.79%という突出した厚さは、無理に貸さず、健全性を最優先する富士のふもとの信金らしい堅実さの表れだと読める。市内唯一の金融機関として、地域の最後の砦であろうとする姿勢が、この厚い資本に込められていると読める。不良債権比率7.37%というやや高めの数字は、地域の事業の浮き沈みを地道に引き受けてきたことを映しており、厚い資本はそれに耐えるための備えでもある。
41.3%を、富士のふもとから読む
富士宮信用金庫の預貸率41.3%という4割台の水準と、自己資本比率21.79%という突出した厚さの組み合わせは、富士の湧水と信仰のまちで、地域の中小に身の丈に合った貸出をしながら、資本を極めて厚く積んできたことの表れだと読める。預金は着実に集まっても、貸出は預金の4割ほど。残りを運用と、分厚い資本の備えに回す。
市内唯一の地域金融機関として、富士宮信用金庫は地域の最後の砦であろうとしてきた。だからこそ、貸出を抑えめにしてでも、資本を厚く保つ。無理に貸さず、健全性を最優先し、地域とともに生き残る——その守りの経営が、21.79%という突出した自己資本に表れていると読める。富士山本宮浅間大社のお膝元で、みやしんは富士のふもとの経済とともに歩んでいる。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
静岡の経済とともに
富士宮信用金庫の数字は、富士山本宮浅間大社の門前町という土地と、市内唯一の金融機関として90年を超えて地域を支えてきた歴史の、両方を映している。富士の湧水と信仰のまちに根ざし、地域の中小に身の丈に合った貸出をしながら、資本を極めて厚く積んで健全性を守ってきた。富士のふもとという土地柄と、唯一の金融機関としての責任が、41.3%という抑えめの預貸率と、21.79%という突出した自己資本に表れている。
銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。富士宮信用金庫を見れば、富士の湧水と信仰のまちの経済と、そこで資本を厚く保って地域を守る信金の姿が浮かぶ。静岡県の他の金融機関は、三島・伊豆の三島信用金庫、静岡・焼津の静岡焼津信用金庫、浜松の浜松磐田信用金庫、県内最大の地銀静岡銀行、清水の清水銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。静岡県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、静岡県の地域金融機関のページへ。
富士宮信用金庫は、富士山本宮浅間大社の門前町に根ざし、厚い資本を抱えて堅実に貸す信用金庫です。地元の事業者に貸す信金とどう付き合うか、口座づくりから与信の考え方まで、知っておきたい銀行取引の基礎をまとめました。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。三島信用金庫・沼津信用金庫の数値も同出典。
沿革(1933年6月に「有限責任大宮町信用組合」として発足したこと、1951年10月に信用金庫法に基づき富士宮信用金庫となったこと、本店が富士宮市元城町にあること、富士宮市内に19店舗を展開すること、略称が「みやしん」であること、富士宮市に本店を置く唯一の地域金融機関であること、2023年に創立90周年を迎えたこと、金庫章が富士をかたどること)=富士宮信用金庫および各種公開情報にもとづく。
富士宮の地理・歴史(富士宮市、富士山本宮浅間大社、浅間神社の総本宮、門前町、富士山西麓、湧玉池、富士の湧水、製紙業、富士宮やきそば、富士山世界文化遺産)に関する記述=各種公開情報・歴史的事実。
本サイトは、資金繰り支援サービス「¥Today」が運営しています。