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三島信用金庫——富士のふもとの大型信金は、なぜ厚い自己資本を持つのか

預貸率47.1%、預金1兆229億円、自己資本比率20.65%。三島市に本店を置く三島信用金庫。富士のふもと・東部静岡に根ざす「みしましん」が、なぜ預金の半分弱しか貸さず、厚い自己資本を持つのか。その数字と歴史を読む。

ニホン銀行紀行 ・ 静岡県

静岡県の三島市に本店を置く三島信用金庫は、地元で「みしましん」と呼ばれる信用金庫だ。預金1兆229億円、店舗49。1兆円を超える預金を持つ大型信金である。三島市を中心に、沼津・伊豆をはじめとする静岡県東部を地盤としている。

本拠の三島は、富士山のふもと、伊豆半島の入口に位置する街だ。富士の伏流水が湧き出る「水の都」として知られ、源兵衛川など街なかを清流が流れる。古くは東海道の宿場町として栄え、いまは新幹線の駅を持ち、首都圏への通勤圏でもある。周辺には、沼津の港町、伊豆の観光地が広がり、東部静岡は、工業・観光・農業が混在する地域だ。三島信用金庫は、こうした富士のふもとの、水と観光と暮らしの土地に根ざしてきた信金だ。

この信金の数字でまず目を引くのは、預貸率47.1%という低さと、自己資本比率20.65%という厚さだ。1兆円を超える預金を集めながら、貸出は半分弱。そして、自己資本は2割を超える。なぜ、富士のふもとの大型信金は、これほど貸さず、資本を厚く積むのか。同じ静岡県の大型信金とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。三島信用金庫の預金は1兆229億円、貸出金は4,820億円。預貸率は47.1%で、預金の半分弱を貸出に回している。自己資本比率は20.65%と厚く、不良債権比率は5.46%。店舗数は49、中小企業等への貸出残高は4,362億円。

1兆円を超える預金は、信用金庫として全国でも有数の規模だ。同じ静岡県で、静岡市を地盤とするしずおか焼津信用金庫(預貸率50.1%・自己資本比率13.94%)と比べると、規模では しずおか焼津信用金庫が上回るが、三島信用金庫の自己資本比率20.65%は、しずおか焼津信用金庫(13.94%)を大きく上回る。預貸率は両者とも5割前後で近い。三島信用金庫は、預金の半分弱しか貸さず、その分、極めて厚い自己資本を積んでいる。これは、東部静岡という地盤で、貸出を大きく伸ばす機会が限られるなか、運用などで積み上げた利益を厚い資本として蓄えてきたことの表れだと読める。

静岡県の大型信用金庫(令和7年3月末)
 三島信用金庫しずおか焼津信用金庫
本店三島市静岡市
預金10,229億円18,490億円
預貸率47.1%50.1%
自己資本比率20.65%13.94%
不良債権比率5.46%3.14%

ともに静岡県の大型信金。規模ではしずおか焼津信用金庫が上回るが、三島信用金庫は自己資本がとりわけ厚い。預金の半分弱しか貸さず、厚い資本を積む姿が数字に表れている。

水の都とともに——三島信用金庫の歩み

三島信用金庫は、富士のふもと・三島の商人や事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。宿場町以来の商店や、東部静岡の中小事業者、観光に携わる人々、そして地域の住民——こうした人々が預金を預け、必要なときに資金を借りる。三島信用金庫は、地域の暮らしと商いに寄り添いながら、1兆円を超える規模へと成長してきた。

東部静岡という土地は、信用金庫にとって預金を集めやすい地盤だ。首都圏への通勤圏として人口があり、観光や農業、中小の事業もある。だが、大きな製造業の集積は西部の浜松ほどではなく、貸出を大きく伸ばす機会は限られる。豊かに預金は集まるが、それを地元で貸し切るだけの需要には限りがある——この構図が、47.1%という低い預貸率と、厚い自己資本の背景にあると読める。集めた預金のうち貸出に回りきらない分は運用などに向かい、そこで積み上がった利益が、厚い資本となってきたと読める。

20.65%の資本を、富士のふもとから読む

三島信用金庫の自己資本比率20.65%という厚さは、1兆円を超える預金を集めながら、貸出を半分弱にとどめ、運用などで着実に利益を積んできたことの表れだと読める。貸出が少ない分、リスクを抑えた運用で利益を蓄え、それを資本として厚く積んできた。地域経済が落ち込んでも揺るがず在り続けるための、分厚い備えがここにある。

預貸率47.1%という低さは、その裏返しだ。東部静岡という地盤で、貸出先となる事業者の資金需要には限りがある。不良債権比率5.46%というやや高めの数字は、限られた貸出先の事情を映すが、2割を超える厚い自己資本があれば十分に吸収できる。無理に貸して規模を追うのでなく、堅実に貸し、運用で利益を積み、厚い資本で守りを固める——それが、三島信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

三島の経済とともに

三島信用金庫の数字は、富士の伏流水が湧く水の都・三島と、東部静岡という土地、そして1兆円を超える預金を集めながら厚い自己資本で守りを固める信金の歩みの、両方を映している。預金は豊かに集まるが、貸出先は限られ、預金の半分弱しか貸さない。だからこそ、運用で利益を積み、厚い自己資本で守りを固める。東部静岡の経済が、47.1%という低い預貸率と、20.65%という厚い自己資本に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。三島信用金庫を見れば、富士のふもと・東部静岡の経済と、そこで守りを固める大型信金の姿が浮かぶ。静岡県の他の協同組織金融機関は、県中部のしずおか焼津信用金庫、西部の浜松磐田信用金庫もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。静岡県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、静岡県の地域金融機関のページへ。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、相対的に融資先を求めている可能性をうかがう一つの目安になる。ただし、預金を集める力が強い土地では、貸出が追いつかず預貸率が低めにとどまり、運用で積んだ利益が厚い自己資本となることがある。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。しずおか焼津信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(三島市に本店を置き、沼津・伊豆など静岡県東部を地盤とする信用金庫であること、三島が富士の伏流水が湧く「水の都」で東海道の宿場町を起源とすること、新幹線駅を持ち首都圏通勤圏であること、東部静岡が工業・観光・農業の混在する地域であること)に関する記述=三島信用金庫および各種公開情報にもとづく。
三島・東部静岡の地理・経済(富士山、伏流水、水の都、源兵衛川、東海道、宿場町、沼津、伊豆、観光)に関する記述=各種公開情報。

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