昭和信用金庫——大都市の商店街に貸す、都市型信金の堅実
東京都世田谷区に本店を置く信用金庫の預貸率は46.9%、不良債権比率は2.44%。今回の紀行で最も低い部類の焦げ付き比率は、23区屈指の住宅都市の商店街と小規模事業者に貸してきた、都市型信金の堅実さを映しています。
東京都世田谷区に本店を置く昭和信用金庫は、預金4,700億円、貸出金2,204億円、店舗19。世田谷を中心に、東京23区の西側を地盤とする都市型の信用金庫です。
本店のある世田谷区は、東京23区のなかで人口・世帯数ともに最も多い、屈指の住宅都市です。区内には100を超える商店街が点在し、最も多い業種は卸売・小売業。区はものづくり企業の集積も抱え、住宅地と工場が共存する「住工共生」のまちづくりを進めています。大きな工業地帯や農業地帯ではなく、無数の小さな商いと、住宅に根ざした暮らしの経済——この大都市の住宅都市という土地柄が、昭和信用金庫の数字を読む鍵になります。
この信用金庫の預貸率は46.9%。集めた預金の半分弱を貸出に回しています。注目したいのは、それと並ぶ不良債権比率2.44%という、今回の紀行では低い部類の数字です。地方の信金が4〜6%台の焦げ付きを抱えるなかで、この低さは何を意味するのか。
まず、数字を並べる
昭和信用金庫の預金は4,700億円、貸出金は2,204億円、預貸率46.9%。自己資本比率は11.85%。不良債権比率は2.44%。
| 預金 | 4,700億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 2,204億円 |
| 預貸率 | 46.9% |
| 自己資本比率 | 11.85% |
| 不良債権比率 | 2.44% |
| 中小企業等向け貸出先 | 8,255先 |
| 店舗 | 19店 |
中小企業等への貸出先は約8千先。大都市の小規模事業者に根を張る都市型信金です。
2.44%を、大都市の経済の厚みから読む
不良債権比率2.44%は、地方の信用金庫が4〜6%台を抱えるなかで、はっきり低い数字です。この低さを、大都市という立地から読んでみます。
昭和信用金庫が貸す相手の多くは、世田谷をはじめとする23区西側の小売・サービス事業者や、小規模なものづくり企業です。大都市には、人と消費が厚く集まっています。一つの産業の浮き沈みに地域経済が大きく傾く地方とは違い、無数の小さな商いが多様に存在するため、特定の業種の不振が比率全体を押し上げにくい構造があります。大都市の経済の厚みと多様さが、焦げ付きを分散させ、2.44%という低い比率につながっていると読むのが、実態に近いでしょう。
もっとも、不良債権比率には景気や引当方針も絡むため、低さがそのまま盤石を意味するわけではありません。大都市の商いも、消費の変化や後継者不足、地価・家賃の負担といった課題と無縁ではありません。ただ、産業が一つに偏らず多様に厚い土地で広く貸す都市型信金は、地方の信金に比べて焦げ付きを分散しやすい傾向にある、とは言えると思われます。
大都市の信金という、もう一つの地域金融
信用金庫というと、地方の産業のまちを思い浮かべがちです。だが昭和信用金庫のように、大都市の住宅都市を地盤とする都市型信金もまた、地域金融の一つの姿です。貸す相手は派手な大企業ではなく、商店街の店主や、住宅街の小さな工場、サービス業の事業者。大都市にも、こうした小規模事業者の資金需要は確かに存在し、それを大手銀行ではなく信金が受け止めている。低い不良債権比率は、そうした地に足のついた貸し先と向き合ってきた堅実さの表れとも読めます。
なぜ、こうなったのか——制度と地域
昭和信用金庫が大都市の小規模事業者に貸す信金であることの背景には、信用金庫という制度があります。信用金庫が融資できる相手は原則として「会員」に限られ、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の定める「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人、と定められています。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれません。
この枠のもとでは、貸す相手はおのずと地元の中小事業者や住民に絞られます。昭和信用金庫にとって、その「地元」とは、商店街と小規模ものづくりが息づく東京23区西側の住宅都市です。会員資格が地区内に絞られるという制度の枠が、大都市にあっても「小さな商いに貸す信金」という姿を形づくっています。立地が都心であっても、貸す相手の性格は、地方の信金と同じく地域の中小なのです。
借り手にとっての意味
昭和信用金庫のように、大都市の小規模事業者に貸してきた都市型信用金庫は、商店街の店主や住宅街の小さな事業者にとって、大手銀行とは別の相談先になりえます。地域の小さな商いの事情を知る相手であるぶん、相談しやすい面があります。ただし、それでも審査は審査であり、預貸率の数字だけで「借りやすさ」を測れるわけではありません。預貸率という指標の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。
数字は、土地の経済を映す
振れ幅の大きい産業を抱えて高い焦げ付きと向き合う信金もあれば、運用益で稼ぐ信金もあります。そして昭和信用金庫のように、大都市の多様で厚い経済のなかで、小さな商いに堅実に貸す都市型信金もあります。不良債権比率という一つの数字は、その金融機関がどんな土地で、どんな経済とともにあるかを映す鏡です。大都市の住宅都市の信金が示す2.44%は、立地の恵まれた厚みと、地に足のついた貸し先選びの両方が重なった結果と読めます。
各地の金融機関には、それぞれの土地の経済と事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。東京都の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、東京都の地域金融機関のページもどうぞ。
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
世田谷区の経済(人口・商店街・卸売小売業・ものづくり・住工共生)に関する記述=世田谷区・東京商工会議所世田谷支部の公開情報等。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=信用金庫法10条1項、および金融庁・全国信用金庫協会の公開資料等。