¥Today ニホン銀行紀行

にいかわ信用金庫——蜃気楼の海・魚津で、信金は何に貸すか

預貸率37.9%、自己資本比率10.72%、不良債権比率5.99%。魚津市に本店を置くにいかわ信用金庫。滑川信用金庫と新川水橋信用金庫の合併で生まれ、立山と日本海に挟まれた新川地域に根ざす信金の数字を読みます。

銀行・金融ニュース
ニホン銀行紀行 ・ 富山県

富山県魚津市に本店を置くにいかわ信用金庫は、預金1,730億円、貸出金656億円、店舗10。魚津市を中心に、富山県東部の新川(にいかわ)地域を地盤とする信用金庫です。

本店のある魚津市は、富山県の東部、立山連峰と富山湾に挟まれた新川地域の中心のまちです。富山湾に春先あらわれる「蜃気楼」、海岸の埋没林、そして富山湾の宝石とも呼ばれるホタルイカで知られる、海と山の幸に恵まれた土地です。背後の立山連峰から流れ下る豊かな水は、古くから売薬(配置薬)の伝統を育み、いまは黒部のファスナー産業をはじめとする製造業も根づいています。この、立山の伏流水と日本海の幸が支える土地柄が、にいかわ信用金庫の数字を読む鍵になります。

この信用金庫は、2005年、滑川信用金庫と新川水橋信用金庫が合併して発足しました。源流の一つである滑川信用金庫は、1906年に滑川売薬信用組合として設立された、売薬のまちの古い信金です。富山の地場産業である売薬の組合から育ったその歩みは、土地の経済史をそのまま映しています。二つの信金が一つになり、新川地域を広くひとつで支える体制となりました。数字の面で目を引くのは、預貸率37.9%という低さと、不良債権比率5.99%というやや高めの水準の組み合わせです。

まず、数字を並べる

にいかわ信用金庫の預金は1,730億円、貸出金は656億円、預貸率37.9%。自己資本比率は10.72%、不良債権比率は5.99%。中小企業等向けの貸出先は4,442件です。

にいかわ信用金庫(令和7年3月末)
預金1,730億円
貸出金656億円
預貸率37.9%
自己資本比率10.72%
不良債権比率5.99%
中小企業等向け貸出先4,442件
店舗10店

預貸率37.9%・自己資本10.72%。新川地域に根ざす信金の数字を読む。

37.9%と5.99%を、新川地域から読む

預貸率37.9%という低めの水準は、預金として集めた資金のうち、貸出に回しているのが四割に満たないことを示します。本紀行で見てきた地方の信金のなかでも、控えめな部類です。不良債権比率5.99%というやや高めの水準とあわせて読むと、潤沢な預金を抱えながらも、地元の限られた借り手と向き合ってきた地域金融機関の姿が浮かびます。

にいかわ信用金庫が貸す相手は、魚津・滑川・黒部・入善などの新川地域の中小事業者です。漁業や水産加工、立山の水を生かした製造業、まちの建設業や商業、農業が、その融資先に含まれると考えられます。製造業の集積が一定程度ある一方、人口減少が進む地方では、旺盛に伸びる資金需要が常にあるわけではありません。預貸率37.9%という水準は、そうした土地の事情を映していると読めます。4,442件という中小企業等向けの貸出先は、新川地域の小さな事業者に資金を届けてきたこの信金の地盤を示しています。

やや高めの不良債権比率は、地域経済の変動と向き合ってきた歩みの表れとも読めます。もちろん、これらの比率には個別の事情や経営方針も絡むため断定はできませんが、立山と日本海に挟まれた新川という土地を抜きに、この信金の数字は読めません。

にいかわ信用金庫が示すのは、立山と海に挟まれた新川地域の足元を支える信金の姿です。滑川と水橋、二つの信金が合併し、人口の細る新川をひとつでカバーする。控えめな預貸率は、潤沢な預金を抱えつつ地元の限られた借り手と向き合う、地方の信金の輪郭を映しています。

なぜ、こうなったのか——制度と地域

にいかわ信用金庫が地元に貸す信金であることの背景には、信用金庫という制度があります。信用金庫が融資できる相手は原則として「会員」に限られ、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人、と定められています。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれません。

この制度のもとでは、貸す相手はおのずと地元の中小事業者や住民に絞られます。にいかわ信用金庫にとって、その「地元」とは、漁業・製造業を柱とし、人口減少が進む新川地域の経済です。売薬の組合を源流とし、滑川と水橋の信金が合併して広域をひとつにまとめたのも、個々のまちでは細っていく地盤を、より大きな単位で支えようとする動きと読めます。控えめな預貸率は、その地区のなかでも貸し先が限られる土地の現実を映した、一つの帰結とも読めます。

同じ県の、金融機関と並べてみる

同じ富山県を代表する地銀として、北陸銀行(預貸率75.0%)も本紀行に登場しています。北陸三県を広く相手にする地銀・北陸銀行(預貸率75.0%)と、新川地域に根ざすこのにいかわ信用金庫(預貸率37.9%)とを並べると、同じ富山でも、広域を相手にする地銀と、特定地域に密着する信金とで、貸す範囲も性格も大きく異なることが見えてきます。北陸を支える地銀の姿は、北陸銀行の記事もあわせてどうぞ。

同じ富山県には、県都・富山に根ざす富山信用金庫があります。預貸率47.2%の富山信用金庫と、預貸率37.9%のにいかわ信用金庫は、同じ県内でも貸出の度合いが異なります。県都の信金と、新川の海と山のまちの信金。同じ富山でも、それぞれの土地に根ざす信金の姿は、富山信用金庫の記事もあわせてどうぞ。

借り手にとっての意味

地元に根ざす信用金庫は、地域の中小事業者にとって、身近な相談相手です。とりわけ、漁業や製造業を担う新川の事業者にとって、土地の事情を知る信金の存在は心強いものです。預貸率が低いことは、相対的に貸し先を求めている可能性をうかがう一つの目安にはなりますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、根を張る土地を映す

預貸率37.9%という控えめな水準は、立山と富山湾に挟まれた新川地域に根を張り、人口減少と向き合いながら地元を支えてきた信金の姿を映しています。しっかり貸す信金もあれば、潤沢な預金を抱えつつ地元の限られた借り手と向き合う信金もある。数字は、その金融機関がどんな土地で、誰に向き合ってきたかを語ります。にいかわ信用金庫の数字は、蜃気楼の海と立山の水のまちに根ざす信金の、いまの記録です。

各地の金融機関には、それぞれの土地と産業の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。富山県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、富山県の地域金融機関のページもどうぞ。

にいかわ信用金庫と融資・保証のはなし

にいかわ信用金庫は、地域に根ざした信用金庫です。借りる・備えるのどちらを考えるにしても、土台になるのは日頃の取引と信用。口座づくりから保証制度まで、どんな立場でも知っておきたい融資・銀行取引の基礎をまとめました。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、相対的に融資先を求めている可能性をうかがう一つの目安になる。ただし、有価証券運用を主体とする金融機関は、預貸率が低くても融資に積極的とは限らない。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
にいかわ信用金庫の沿革(2005年に滑川信用金庫と新川水橋信用金庫が合併して発足、源流の滑川信用金庫は1906年に滑川売薬信用組合として設立)、魚津市を中心に新川地域を事業区域とすることに関する記述=にいかわ信用金庫公開情報・各種公開情報にもとづく。
魚津の蜃気楼・埋没林・ホタルイカ、立山連峰の伏流水、売薬の伝統、新川地域の製造業に関する記述=各種公開情報。
北陸銀行・富山信用金庫の数値=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=金融庁 金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」資料『協同組織金融機関の「地区」のあり方』(2008年6月20日・神吉正三)。

本サイトは、資金繰り支援サービス「¥Today」が運営しています。

← ニホン銀行紀行へ | ¥Today トップへ