富山信用金庫——薬都・富山の県都で、信金はなぜ厚い自己資本を持つのか
預貸率47.2%、預金4,380億円、自己資本比率15.94%、不良債権比率3.23%。富山市に本店を置く富山信用金庫。薬と水の都・富山に根ざし、厚めの自己資本を積む信金が、何に貸すのか。同じ富山の金融機関と比べながら、その数字と歴史を読む。
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富山県の富山市に本店を置く富山信用金庫は、預金4,380億円を持つ信用金庫だ。店舗29。「とみしん」の愛称で知られ、富山市を中心に、富山県の中央部を地盤としている。
本拠の富山市は、立山連峰を望む県都だ。古くから「越中富山の薬売り」で知られ、配置薬(置き薬)の行商が全国に広がった。その伝統はいまも医薬品産業として根づき、富山は全国有数の医薬品の生産地だ。立山の雪解け水が育む豊かな水資源を生かし、アルミ・機械・化学といった産業も発展した。北陸新幹線の開業で、首都圏との結びつきも強まっている。薬と水の都——富山信用金庫は、こうした薬都・富山に根ざしてきた信金だ。
この信金の数字で目を引くのは、自己資本比率15.94%という厚さだ。信用金庫の国内基準は4%。それを大きく超える15%台は、手厚い。一方で預貸率は47.2%と、預金の半分弱を貸出に回している。なぜ、薬都の信金は、これほど厚い自己資本を積むのか。同じ富山を地盤とする金融機関とも比べながら、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。富山信用金庫の預金は4,380億円、貸出金は2,066億円。預貸率は47.2%で、預金の半分弱を貸出に回している。自己資本比率は15.94%、不良債権比率は3.23%。店舗数は29、中小企業等への貸出残高は1,258億円。
同じ富山県で、寒ブリの港町・氷見の氷見伏木信用金庫(預貸率25.8%)や、高岡の富山第一銀行(預貸率74.3%・自己資本比率11.71%)と比べると、富山信用金庫は、低めの預貸率と厚い自己資本を併せ持つ。地銀の富山第一銀行(預貸74.3%)がよく貸すのに対し、信用金庫の富山信用金庫は預金の半分弱にとどめ、運用とのバランスを取る。これは、県都・富山に北陸銀行や富山第一銀行といった地銀が集まり、大口の資金需要はそちらに向かいやすいためだと読める。大口は地銀が、中小は信金が——その役割分担のなかで、富山信用金庫は厚い資本を積んできた。
| 富山信用金庫 | 氷見伏木信金 | 富山第一銀行 | |
|---|---|---|---|
| 本店 | 富山市 | 氷見市 | 富山市 |
| 預金 | 4,380億円 | — | — |
| 預貸率 | 47.2% | 25.8% | 74.3% |
| 自己資本比率 | 15.94% | — | 11.71% |
| 不良債権比率 | 3.23% | 5.64% | — |
県都・富山には地銀も集まり、大口の資金需要はそちらに向かいやすい。富山信用金庫は中小に密着して貸し、低めの預貸率と厚い自己資本を併せ持つ。
薬都・富山とともに——富山信用金庫の歩み
富山信用金庫は、富山の中小・零細事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。医薬品関連の事業者、アルミ・機械・化学の中小、配置薬を支える商い、地元の商店、そして県都に住む人々——こうした人々が会員となり、預金を預け、必要なときに資金を借りる。合併を経て、富山県中央部に根ざす信金へと歩んできた。
富山という土地は、信用金庫にとって、預金は集まるが大口の貸出は競合の多い地盤だ。県都・富山には北陸銀行をはじめとする地銀が店舗を構え、大企業や大規模な資金需要はそちらに向かいやすい。その中で、信用金庫は中小・零細事業者に密着して貸す——この役割分担が、預貸率47.2%という水準を支えている。会員から集めた預金の残りは、有価証券などの運用に向かい、その蓄積と利益が自己資本比率15.94%という厚みになって表れる。不良債権比率3.23%は、落ち着いた水準だ。立山の伏流水に育まれた堅実な土地柄が、この守りの厚い数字に映っているとも読める。
15.94%を、富山から読む
富山信用金庫の自己資本比率15.94%という厚さは、薬都・富山で、地銀と役割を分けながら、中小に貸しつつ運用で資本を厚く積んできたことの表れだと読める。県都には大口の資金需要もあるが、それは地銀が主に担う。信用金庫の地盤は、その周りにある中小・零細事業者だ。富山信用金庫は、その層に着実に貸し、残りを運用に向け、厚い自己資本を築いてきた。
預貸率47.2%という、預金の半分弱を貸す水準と、不良債権比率3.23%という落ち着いた焦げ付き、そして15.94%という厚い資本——この組み合わせは、薬と水の都で、堅実に貸し、守りを固めてきた信金の姿を映している。攻めるより守る。それが、富山信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
富山の経済とともに
富山信用金庫の数字は、薬都・富山という土地と、そこで中小に貸しつつ厚い資本を積む信金の歩みの、両方を映している。預金の半分弱を地元の会員に貸し、運用と利益の蓄積で資本を厚くしながら、富山を中心とする県中央部の中小・零細事業者を支えてきた。医薬品・アルミ・機械・化学の経済が、15.94%という厚い自己資本と47.2%という預貸率に表れている。
銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。富山信用金庫を見れば、薬都・富山の経済と、そこで守りを固める信金の姿が浮かぶ。富山県の他の金融機関は、寒ブリの港町の氷見伏木信用金庫、高岡の富山第一銀行、北陸三県から北海道まで広がる北陸銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。富山県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、富山県の地域金融機関のページへ。
富山信用金庫は、地域に根ざした信用金庫です。預金を運用にもあてる堅実な経営でも、いざ借りるとなれば日頃の取引と信用が土台になります。口座と信用を育てる、融資・銀行取引の基礎をまとめました。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。氷見伏木信用金庫・富山第一銀行の数値も同出典。
沿革・地域(富山市に本店を置き、「とみしん」の愛称で知られ、富山県中央部を地盤とする信用金庫であること、合併を経て県中央部に根ざす信金になったこと、富山市が立山連峰を望む県都で「越中富山の薬売り」で知られ配置薬の行商が全国に広がりその伝統が医薬品産業として根づくこと、立山の雪解け水が育む水資源を生かしアルミ・機械・化学が発展したこと、北陸新幹線の開業で首都圏との結びつきが強まったこと)に関する記述=富山信用金庫および各種公開情報にもとづく。
富山の地理・経済(富山、立山、薬、配置薬、医薬品、アルミ、機械、化学、北陸新幹線)に関する記述=各種公開情報。
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