新湊信用金庫——曳山と内川の港町で、しんみなとはなぜ預金の3割しか貸さないか
預貸率32.6%、預金871億円、自己資本比率10.95%、不良債権比率4.75%。富山県射水市に本店を置く新湊信用金庫。曳山と内川の港町に根ざし、預金の3割しか貸さない信金が、なぜそうなるのか。同じ富山の信金と比べながら、その数字と歴史を読む。
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富山県の射水市に本店を置く新湊信用金庫は、預金871億円を持つ信用金庫だ。店舗7。「しんみなと」の呼び名で知られ、射水市の中新湊に本店を構え、射水・高岡・富山の3市に店舗を展開する。富山湾の港町・新湊に根ざす信金だ。
本拠の射水市(旧新湊市)は、富山湾に面した港町だ。新湊漁港はベニズワイガニや白エビの水揚げで知られ、まちなかを流れる内川(うちかわ)は「日本のベニス」とも呼ばれる風情ある運河だ。秋には豪華な曳山(ひきやま)が街を練り歩く新湊曳山まつりが伝統を伝える。富山新港を擁する臨海部には工業も立地するが、街の性格はあくまで漁業と港の暮らしに根ざしている。新湊信用金庫は、こうした曳山と内川の港町に根ざし、地域の中小事業者と住民に貸してきた。2024年(令和6年)7月には創立100周年を迎えた。
この信金の数字で最も目を引くのは、預貸率32.6%という低さだ。預金871億円に対し、貸出金は284億円。預かったお金の3割ほどしか貸していない。一方で自己資本比率は10.95%。なぜ、港町の信金が、これほど貸さないのか。同じ富山の信金とも比べながら、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。新湊信用金庫の預金は871億円、貸出金は284億円。預貸率は32.6%で、預金の3割ほどしか貸出に回していない。自己資本比率は10.95%、不良債権比率は4.75%。店舗数は7。
同じ富山県の信金と比べてみる。県都・富山の富山信用金庫(預貸率47.2%・預金4,380億円)、寒ブリの港町の氷見伏木信用金庫(預貸率25.8%・不良5.64%)と並べると、新湊信用金庫の預貸率32.6%は、富山の信金のなかでも低めの水準にある。富山信金が5割近くを貸すなか、新湊は3割ほどにとどまる。ただし、同じ港町の氷見伏木信金(25.8%)よりは高い。富山の信金は全体に預貸率が低い傾向にあるが、新湊もその一つだ。これは、漁業と港の暮らしに根ざした地方都市で大型の資金需要が乏しいことと、貸出を絞って資本を守る経営の、両方を映していると読める。自己資本比率10.95%は堅実な水準を保っている。
| 新湊信用金庫 | 富山信用金庫 | 氷見伏木信用金庫 | |
|---|---|---|---|
| 本店 | 射水市 | 富山市 | 氷見市 |
| 預貸率 | 32.6% | 47.2% | 25.8% |
| 自己資本比率 | 10.95% | 15.94% | — |
| 不良債権比率 | 4.75% | 3.23% | 5.64% |
いずれも富山県の信金。富山の信金は全体に預貸率が低めで、新湊もその傾向のなかにある。
新湊信用組合から——新湊信用金庫の歩み
新湊信用金庫は、1924年(大正13年)5月、「新湊信用組合」として発足した。1952年(昭和27年)3月、信用金庫法に基づき新湊信用金庫に改組した。港町・新湊の地で、相互扶助の協同組織として地域の暮らしと商いを支えてきた。2024年(令和6年)7月には創立100周年を迎え、射水市内のホテルで記念式典を開催した。本店は射水市中新湊に置かれ、射水・高岡・富山の3市に本店を含む7店舗を構える。近年は創業者支援や若手農家支援にも取り組み、地域の未来づくりにも力を入れている。
曳山と内川の港町という土地は、信用金庫にとって独特の地盤だ。漁業と港の暮らしに根ざしたこの地は、富山新港の工業立地はあるものの、大きな企業集積や旺盛な企業の資金需要があるわけではない。預金は地域から集まっても、それを吸収するだけの大型の貸出先は限られる。だから貸出は預金ほどには伸びず、預貸率は3割台にとどまる。これは、貸す力がないというより、地域の身の丈に合った貸出に徹し、無理に貸さずに資本を守る守りの経営の表れだと読める。創立100周年を機に、創業者支援や若手農家支援といった次世代の担い手を育てる取り組みにも力を入れ、限られた資金需要のなかで地域の未来を支えようとしている。不良債権比率4.75%はやや高めだが、自己資本比率10.95%という堅実さで、地域とともに歩んでいる。
32.6%を、新湊から読む
新湊信用金庫の預貸率32.6%という低さは、漁業と港の暮らしに根ざした地方都市で、地域の身の丈に合った貸出に徹してきたことの表れだと読める。曳山と内川の港町で、信金として貸せる相手に貸してきた。預金は集まっても、貸出は預金ほどには伸びない。富山の信金は全体に預貸率が低い傾向にあり、新湊もその一つだ。
そのうえで、自己資本比率10.95%という堅実さを保っていることが、この信金の性格を物語る。貸出を絞り、資本を守り、慎重に運用する。無理に貸さず、地域とともに健全であろうとする守りの経営——その姿勢が、32.6%という低い預貸率に表れていると読める。預貸率が低いこと自体は、その信金が悪いことを意味しない。土地の経済が大型の資金需要を生まないとき、貸出を絞って資本を守ることは、ひとつの堅実な選択だ。創立100年を超えて、しんみなとは港町とともに歩んでいる。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
富山の経済とともに
新湊信用金庫の数字は、曳山と内川の港町という土地と、創立100年を超えて歩んできた歴史の、両方を映している。地域の身の丈に合った貸出に徹し、資本を守りながら、漁業と港の暮らしを支えてきた。大型の資金需要が乏しい港町の土地柄が、32.6%という低い預貸率に表れている。
銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。新湊信用金庫を見れば、曳山と内川の港町の経済と、そこで守りの経営に徹する信金の姿が浮かぶ。富山県の他の金融機関は、県都の富山信用金庫、寒ブリの港町の氷見伏木信用金庫、県内最大の地銀北陸銀行、富山第一銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。富山県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、富山県の地域金融機関のページへ。
新湊信用金庫は、曳山と内川の港町に根ざし、地域の身の丈に合った貸出に徹する信用金庫です。地元の事業者に貸す信金とどう付き合うか、口座づくりから与信の考え方まで、知っておきたい銀行取引の基礎をまとめました。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。富山信用金庫・氷見伏木信用金庫の数値も同出典。
沿革(1924年5月に「新湊信用組合」として発足したこと、1952年3月に信用金庫法に基づき新湊信用金庫へ改組したこと、本店が射水市中新湊にあること、射水・高岡・富山の3市に7店舗を構えること、2024年7月に創立100周年を迎えたこと、創業者支援や若手農家支援に取り組んでいること)=新湊信用金庫および各種公開情報にもとづく。
新湊・射水の地理・産業(射水市、旧新湊市、富山湾、新湊漁港、内川、新湊曳山まつり、富山新港)に関する記述=各種公開情報。
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