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新庄信用金庫——最上の雪国で、信金は何に貸すか

預貸率56.2%、不良債権比率6.63%、自己資本比率14.7%。新庄市に本店を置く新庄信用金庫。最上地域の雪国に根ざす信金が、やや高い焦げ付きと厚い自己資本を抱える姿を、山形県北部から読みます。

ニホン銀行紀行 ・ 山形県

山形県新庄市に本店を置く新庄信用金庫は、地元で「しんじょうしんきん」と呼ばれる信用金庫です。預金769億円、貸出金432億円、店舗8。山形県北部、最上(もがみ)地域の中心都市・新庄を地盤とする信用金庫です。

本拠地の新庄市は、山形県北部・最上地域の中心都市です。かつて新庄藩・戸沢氏の城下町として栄え、夏の「新庄まつり」の山車(やたい)行事は、ユネスコ無形文化遺産にも登録されています。最上地域は、最上川の上流域に広がる、米作を中心とする農業の地であり、同時に全国でも有数の豪雪地帯です。県都・山形市や庄内地方からは離れ、人口減少と高齢化が進んでいます。この、豪雪の最上という土地柄が、新庄信用金庫の数字を読む鍵になります。

数字の面で目を引くのは、不良債権比率6.63%というやや高めの数字と、自己資本比率14.7%という厚みの組み合わせ、そして預貸率56.2%という水準です。

まず、数字を並べる

新庄信用金庫の預金は769億円、貸出金は432億円、預貸率56.2%。自己資本比率は14.7%と厚め。不良債権比率は6.63%とやや高め。中小企業等向けの貸出先は5千件を超えます。

新庄信用金庫(令和7年3月末)
預金769億円
貸出金432億円
預貸率56.2%
自己資本比率14.7%
不良債権比率6.63%
中小企業等向け貸出先5,179件
店舗8店

不良債権6.63%・自己資本14.7%。やや高い焦げ付きを、厚い守りで受け止める。

6.63%と14.7%を、最上の雪国から読む

不良債権比率6.63%というやや高めの数字と、自己資本比率14.7%という厚み。この組み合わせは、過疎と高齢化の進む雪国で、地域の中小に向き合いながら、厚い守りでリスクを受け止める信金の姿を示しています。預貸率56.2%は、地方の信金としては中程度の水準で、集めた預金の半分強を貸出に回しています。

新庄信用金庫が貸す相手は、新庄を中心とする最上地域の中小事業者と個人です。米作を中心とする農業に連なる事業者、地域の商業・建設・サービス業、そして個人が、その融資先に含まれると考えられます。豪雪地帯で過疎と高齢化が進む最上では、事業の担い手の高齢化、後継者不足、農業の天候リスクといった事情が、借り手の体力に影を落としやすい。不良債権比率6.63%というやや高めの数字は、こうした地域の条件のなかで、それでも地元の中小に貸し続けてきたことの帰結と読めます。

注目したいのは、自己資本比率14.7%という厚さです。これは、やや高めの焦げ付きを抱えながらも、それを十分に吸収できるだけの備えを積んできたことを示します。過疎の地で長く存続するために、利益を内部に積み、守りを固める——その堅実さが、この厚い自己資本に表れていると読めます。預貸率が56.2%にとどまり残りを運用に回しているのも、貸し先の限られた土地で無理をしない、堅実な姿勢の表れと読めます。もちろん、これらの比率には個別の大口先の事情や経営方針も絡むため断定はできませんが、豪雪と過疎の最上という土地を抜きに、この数字は読めません。

新庄信用金庫が示すのは、豪雪と過疎の雪国で、地域に貸しながら厚い守りで支える信金の姿です。やや高い焦げ付きを抱えつつ、自己資本比率14.7%という厚みでそれを受け止める。6.63%と14.7%の組み合わせは、最上の雪国で堅実に生き残ってきたことの表れと読めます。

なぜ、こうなったのか——制度と地域

新庄信用金庫が地元の中小事業者に貸す信金であることの背景には、信用金庫という制度があります。信用金庫が融資できる相手は原則として「会員」に限られ、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の定める「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人、と定められています。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれません。

この枠のもとでは、貸す相手はおのずと地元の中小事業者や住民に絞られます。新庄信用金庫にとって、その「地元」とは、城下町・新庄を芯とする山形県北部・最上地域の地域経済です。会員資格が地区内に絞られるという制度の枠のなかで、過疎の進む雪国で厚い守りを固めるという道を、この信金は選んできたと読めます。

同じ山形で、県域の信組と並べてみる

本紀行には、同じ山形県の山形第一信用組合も登場しています。山形第一信組は、山形県を地盤とする信用組合でした。最上地域の城下町・新庄に根ざす信金・新庄信用金庫(預貸率56.2%・自己資本14.7%)と、信用組合である山形第一信用組合とを並べると、同じ山形県でも、特定の地区に根ざす信金と、より広く県を地盤とする信組とで、その立ち位置が異なることが見えてきます。山形のもう一つの協同組織金融機関の姿は、山形第一信用組合の記事もあわせてどうぞ。

借り手にとっての意味

地元に根ざす信用金庫は、地域の事業者にとって身近な相談相手です。とりわけ、過疎と豪雪の地で事業を営む中小事業者にとって、土地の事情を知る信金の存在は心強いものです。厚い自己資本は、その信金が腰を据えて地域に存続し続けられる備えでもあります。やや高めの不良債権比率は、地域の条件のなかで貸し続けてきたことの裏返しでもあります。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、雪国の堅実を映す

不良債権比率6.63%というやや高めの数字と、自己資本比率14.7%という厚みは、豪雪と過疎の進む最上に根ざし、地域に貸しながら厚い守りでそれを受け止めてきた信金の姿を映しています。都市圏で積極的に貸す信金もあれば、新庄信用金庫のように雪国で堅実に守りを固める信金もある。数字は、その金融機関がどんな土地で、どんな生き方を選んできたかを語ります。新庄信用金庫の数字は、最上の雪国を支える信金の、いまの記録です。

各地の金融機関には、それぞれの土地と歩みの事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。山形県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、山形県の地域金融機関のページもどうぞ。

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
新庄信用金庫の地盤(新庄市本店、山形県北部・最上地域を地盤とする信用金庫であること)に関する記述=新庄信用金庫および各種公開情報にもとづく。
新庄市・最上地域の歴史と地理(新庄藩・戸沢氏の城下町、新庄まつりとユネスコ無形文化遺産、最上川上流域、米作の農業、豪雪地帯、人口減少・高齢化)に関する記述=各種公開情報。
自己資本比率・預貸率の一般的な意味に関する記述=一般的な金融制度の説明にもとづく。
山形第一信用組合の位置づけ=各種公開情報および本紀行既出記事。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=金融庁 金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」資料『協同組織金融機関の「地区」のあり方』(2008年6月20日・神吉正三)。

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